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2章 アンチもいれば信者もいる男
忘れたい過去ほど記憶に刻まれている
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色々あった二人と違い、俺の日常は大きく変わらなかった。自主休校という誘惑を断ち切り、眠い目を擦って大学へ向かい、講義を受け、学食で安い飯で昼を済ませ、講義後はその足でバイト先に向かってしなくていい苦労をする羽目になり、帰路の途中で牛丼をたいらげ、帰宅してシャワーを浴び、シオミン関連のニュースに目を通して、シオミンと夢で会えることを期待して眠りにつく。その繰り返しだった。
人の目を浴びる活動をしている二人と違い、シオミンを愛するだけの大学生である。顔出ししてなければ、アバターも量産型。そいつの日常がガラッと変わる出来事なんて、リアルで事故に遭うか宝くじでも当たるかのどちらかだ。
無論、何も変わらなかった訳ではない。
日常の外で変化はあった。
俺のなりすましが大量に出現したのである。わざわざ量産型アバターを購入し、自分が英雄の一人であるとうそぶいている。人によっては桜庭や妹に凸して、怒られていた。最初は楽しんでいたファンたちも、それが続くと飽きてきて一度ウケたネタをいつまでも引っ張るなと言いたげであった。
一つ問題があるとするならば、なりすましみたいな輩が増殖したせいで元から量産型ユーザーだった人が使い辛くなってしまったことだろう。祭りとは言っても広い世界の極一部でしかない中の出来事だ。それを知らずに使い続け、見に覚えがないのに「真似してるんだ」と後ろ指を指されるのは辛かろう。
使い辛くした輩に呪詛を送りたくなる。
そして、量産型ユーザーに対して申し訳無さが込み上げる。
俺自身がない金絞り出してワンオフアバターに乗り換え、ヘイトコントロールすることも考えた。考えたが、無い袖は振れないどころか、持っている袖と袖にしまい込んだ財布を質屋に突っ込んだとしても足りない程度には、手の届かない代物であった。
したがって罪悪感に蓋をして、素知らぬ顔で日々を過ごそうと心に決めたのだ。
前向きに、過去の自分がやったことは全力で目を背けて生きていこうと決意したのだ。
過去といえば、大会のアーカイブが見れるということは、シオミンのプレイを、いや人生の一部を追体験できるということではなかろうか。
それに気付いてしまった俺は、すぐさまアーカイブを確認する。見所はシオミンが俺に狙いをつけていた箇所であるが、それだけをいきなり見ては情緒に欠けるというものだ。試合開始から追っていって「早く! 早く見たい!」と期待を煽るのが正しい作法といえよう。
正しいアーカイブの見方で視聴を始め、期待と興奮が最高潮に達した時、そのシーンは再生された。
愕然とした。
シオミンが最初に放った銃弾は妹を狙ったもの。
その後も妹にだけ狙いをつけていた。
つまり、シオミンは俺という存在を気に掛けていなかったのだ。
過去に目を向けても良いことなんてなかった。
人の目を浴びる活動をしている二人と違い、シオミンを愛するだけの大学生である。顔出ししてなければ、アバターも量産型。そいつの日常がガラッと変わる出来事なんて、リアルで事故に遭うか宝くじでも当たるかのどちらかだ。
無論、何も変わらなかった訳ではない。
日常の外で変化はあった。
俺のなりすましが大量に出現したのである。わざわざ量産型アバターを購入し、自分が英雄の一人であるとうそぶいている。人によっては桜庭や妹に凸して、怒られていた。最初は楽しんでいたファンたちも、それが続くと飽きてきて一度ウケたネタをいつまでも引っ張るなと言いたげであった。
一つ問題があるとするならば、なりすましみたいな輩が増殖したせいで元から量産型ユーザーだった人が使い辛くなってしまったことだろう。祭りとは言っても広い世界の極一部でしかない中の出来事だ。それを知らずに使い続け、見に覚えがないのに「真似してるんだ」と後ろ指を指されるのは辛かろう。
使い辛くした輩に呪詛を送りたくなる。
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俺自身がない金絞り出してワンオフアバターに乗り換え、ヘイトコントロールすることも考えた。考えたが、無い袖は振れないどころか、持っている袖と袖にしまい込んだ財布を質屋に突っ込んだとしても足りない程度には、手の届かない代物であった。
したがって罪悪感に蓋をして、素知らぬ顔で日々を過ごそうと心に決めたのだ。
前向きに、過去の自分がやったことは全力で目を背けて生きていこうと決意したのだ。
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それに気付いてしまった俺は、すぐさまアーカイブを確認する。見所はシオミンが俺に狙いをつけていた箇所であるが、それだけをいきなり見ては情緒に欠けるというものだ。試合開始から追っていって「早く! 早く見たい!」と期待を煽るのが正しい作法といえよう。
正しいアーカイブの見方で視聴を始め、期待と興奮が最高潮に達した時、そのシーンは再生された。
愕然とした。
シオミンが最初に放った銃弾は妹を狙ったもの。
その後も妹にだけ狙いをつけていた。
つまり、シオミンは俺という存在を気に掛けていなかったのだ。
過去に目を向けても良いことなんてなかった。
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