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1章 義妹と書いて偽妹と読む
作戦は崩れるもの
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このゲームの特色について、もう一度語ろうと思う。
多くのゲームは持ち運べるアイテム数には限度がある。このゲームも例外ではなく、重量という制限があり、持ち運べるアイテム数に限度はある。だが、能力の工夫次第ではいくらでも持ち運べるような仕組みとなっている。
俺が選択した能力も工夫できる能力の一つであった。正六角形を繋ぎ合わせ、シールドを精製する能力。生成時に角度をつけてやることで、ちょっとした籠として使える。正六角形ゆえ不格好ゆえ、穴だらけではあるがそれでも重量に左右されずアイテムを持ち運べることができる。
これを駆使してアイテムを集め始めた。
集めるアイテムはグレネードだ。
一つ一つは軽量。それでいて火力も高い。加えて、このゲームのグレネードは誘爆設定がある。一つでも爆発したら、連鎖して爆発を引き起こす。これをエネミーを巻き込むというのが、本作戦となる。
ただし、あのエネミーは素早い。爆発に巻き込むには投擲では遅く、罠には気付かれる可能性がある。
ならばどうするか。
自爆しかあるまい。
このゲームは最後の一人になるまで戦うことを強要される。エネミーの攻撃方法も見る限り接近戦が主体だ。ならば爆発に巻き込むチャンスは必ずある。
アイテムを集め終わり、元いた建物に戻る。
集めたグレネードの量は、三十ほど。床に置かれたそれは小さな山を作っていた。俺からすると大量であったが桜庭からすれば心許ないらしい。
「動画で見たときはこの倍はあったから、それぐらい欲しかったな」
「もう時間はない。これでいくしかないだろう」
戦闘音は既にやんでいた。
残るチームは俺ら三人だけだった。
「んじゃこれはサクラバさんが持つでいいんだよね?」
「ああ。俺の能力なら、これぐらいなら最大値ギリギリだけどデフォルトで持てる」
そう口にした直後のことだった。
床にヒビが入る。
「逃げろ!」
桜庭は指示と同時に床から離れる。
俺と妹もあとに続こうとするが、遅かった。
次の瞬間には床が崩れ落ち、そこにはエネミーがいて、落ちてくる俺と妹からに狙いを定めていた。
空中で妹の手を取り、引き寄せる。
抱きしめ、落下方向に幾重に重ねたシールドを形成する。だが、それは鉤爪の突き上げで一枚を残して全て儚く割れていった。
高くから落ちた俺は衝撃でダメージが入る。決して少なくない量。掠っただけで死にそうな体力しか残らなかった。
頼みの綱のグレネードもビルの床が抜けたせいで、辺りに散らばり、その殆どは瓦礫に埋もれてしまう。
作戦失敗。
それを理解した次の瞬間には妹を担いだまま、走り出していた。
作戦失敗した時、いくつかの対応は考えていた。
その中でも一番の悪手を打つしかなくなった。
それは桜庭にこの場を任せ、妹を担いで逃げ出すことだ。
配信を見ている奴らは俺のことをクソ野郎と思うことだろう。だからどうだっていうのだ。もとより俺は桜庭をクソ野郎と思い、桜庭も俺をクソ野郎と思っている。互いにひと目見た時から、同類だとわかっていた。
自分が興味のあること以外どうでもいい輩だと。
その二人が出会ってしまったら、潰し合うか利用し合うか、もしくはその両方か。何もしないのはありえない。
だから、俺がここから妹を連れて逃げ出すことなどお見通しなのだ。
後ろから楽しげな雄叫びが追いつく。
「ソウジぃ! お前のことは忘れねえぞ!」
走りながら後方に目を遣る。
「思い切りが良くて助かる! それでこそオレの親友だ!」
一発の銃声のあと、続け様に無数の爆発音が追い抜いていく。爆発音が止むと、今度はビル倒壊の響きがあった。その場にはまだエネミーが残っており、初めて聞くエネミーの叫びが混じっていた。
そこに桜庭の声はなかった。
メンバーリストも死亡扱いに切り替わった。
戦闘終了のメッセージは表示されない。
戦闘はまだ終わらない。
多くのゲームは持ち運べるアイテム数には限度がある。このゲームも例外ではなく、重量という制限があり、持ち運べるアイテム数に限度はある。だが、能力の工夫次第ではいくらでも持ち運べるような仕組みとなっている。
俺が選択した能力も工夫できる能力の一つであった。正六角形を繋ぎ合わせ、シールドを精製する能力。生成時に角度をつけてやることで、ちょっとした籠として使える。正六角形ゆえ不格好ゆえ、穴だらけではあるがそれでも重量に左右されずアイテムを持ち運べることができる。
これを駆使してアイテムを集め始めた。
集めるアイテムはグレネードだ。
一つ一つは軽量。それでいて火力も高い。加えて、このゲームのグレネードは誘爆設定がある。一つでも爆発したら、連鎖して爆発を引き起こす。これをエネミーを巻き込むというのが、本作戦となる。
ただし、あのエネミーは素早い。爆発に巻き込むには投擲では遅く、罠には気付かれる可能性がある。
ならばどうするか。
自爆しかあるまい。
このゲームは最後の一人になるまで戦うことを強要される。エネミーの攻撃方法も見る限り接近戦が主体だ。ならば爆発に巻き込むチャンスは必ずある。
アイテムを集め終わり、元いた建物に戻る。
集めたグレネードの量は、三十ほど。床に置かれたそれは小さな山を作っていた。俺からすると大量であったが桜庭からすれば心許ないらしい。
「動画で見たときはこの倍はあったから、それぐらい欲しかったな」
「もう時間はない。これでいくしかないだろう」
戦闘音は既にやんでいた。
残るチームは俺ら三人だけだった。
「んじゃこれはサクラバさんが持つでいいんだよね?」
「ああ。俺の能力なら、これぐらいなら最大値ギリギリだけどデフォルトで持てる」
そう口にした直後のことだった。
床にヒビが入る。
「逃げろ!」
桜庭は指示と同時に床から離れる。
俺と妹もあとに続こうとするが、遅かった。
次の瞬間には床が崩れ落ち、そこにはエネミーがいて、落ちてくる俺と妹からに狙いを定めていた。
空中で妹の手を取り、引き寄せる。
抱きしめ、落下方向に幾重に重ねたシールドを形成する。だが、それは鉤爪の突き上げで一枚を残して全て儚く割れていった。
高くから落ちた俺は衝撃でダメージが入る。決して少なくない量。掠っただけで死にそうな体力しか残らなかった。
頼みの綱のグレネードもビルの床が抜けたせいで、辺りに散らばり、その殆どは瓦礫に埋もれてしまう。
作戦失敗。
それを理解した次の瞬間には妹を担いだまま、走り出していた。
作戦失敗した時、いくつかの対応は考えていた。
その中でも一番の悪手を打つしかなくなった。
それは桜庭にこの場を任せ、妹を担いで逃げ出すことだ。
配信を見ている奴らは俺のことをクソ野郎と思うことだろう。だからどうだっていうのだ。もとより俺は桜庭をクソ野郎と思い、桜庭も俺をクソ野郎と思っている。互いにひと目見た時から、同類だとわかっていた。
自分が興味のあること以外どうでもいい輩だと。
その二人が出会ってしまったら、潰し合うか利用し合うか、もしくはその両方か。何もしないのはありえない。
だから、俺がここから妹を連れて逃げ出すことなどお見通しなのだ。
後ろから楽しげな雄叫びが追いつく。
「ソウジぃ! お前のことは忘れねえぞ!」
走りながら後方に目を遣る。
「思い切りが良くて助かる! それでこそオレの親友だ!」
一発の銃声のあと、続け様に無数の爆発音が追い抜いていく。爆発音が止むと、今度はビル倒壊の響きがあった。その場にはまだエネミーが残っており、初めて聞くエネミーの叫びが混じっていた。
そこに桜庭の声はなかった。
メンバーリストも死亡扱いに切り替わった。
戦闘終了のメッセージは表示されない。
戦闘はまだ終わらない。
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