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1章 義妹と書いて偽妹と読む
人間万事塞翁が馬
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シオミンが妹の手によって殺された。
その事実は俺の心に影を落とすことになる。ようは酷く落ち込んだ。
もうシオミンがいないならば残ってる意味ない、などといった言葉を繰り返し吐き出していた。
その態度に、妹は侮蔑の眼差しを飛ばし、妹のリスナーは「これは酷い」などと嘲笑する。唯一、桜庭だけが俺に寄り添ってくれて「シオミンの攻撃を一度は防いだんだ。だったら最後まで生き残って、シオミンに愛を伝えようぜ」と励ましてくれた。
我ながらちょろいので、その励ましを真に受け、最後まで生き残ってやろうと決心した。
リスナーは「男同士の友情だなぁ」と半分からかいのコメントで溢れていたらしい。
妹は「いや、わけわからないんだけど」と真顔でクエスチョンを浮かべていた。
それからは俺と妹は身を守るのに精一杯で、敵は桜庭が、いやプロゲーマーサクラバが一掃していた。ほとんどが野次馬で埋められていたため、実力的に圧倒していた。強い人も中にはいたらしいが、やはりプロゲーマーには劣るらしく、どうにかなってしまった。
そして、残りが俺らを合わせて三チームの時、事件は起こる。
狭いエリアでそれぞれが異なるビルの中に潜伏していた時のことだった。
ゲーム内の全ての地形表現にノイズが走った。
俺と桜庭、妹はそれぞれ顔を見合わせ、自分の環境だけで起きただけでないことを確認する。
次の瞬間、轟音が響き渡る。
窓から外を見ると黒く細いシルエット、両の手には巨大な鉤爪、人を模しているようだが生物とも無機物ともいえぬ何かがそこにいた。
このゲームのビジュアルからは大きく外れた異様な見た目であった。
「桜庭、アイツ倒すと何かいいことあったりするのか?」
桜庭にそう問いかけるも、返事がない。
目を遣ると、桜庭は目を大きく見開き、震えていた。
「アイツがそうなんだな?」
その問いに、桜庭はアイツから、エネミーから視線を離さないまま答える。
「ああ、そうだ。俺が直接見た奴とは違うが、噂になってるのはアイツだな。……これから先は危険が伴う。大会は中止だ」
桜庭はそのまま妹の横に立ち、リスナーに説明する。
「事情はあとで説明する。本大会は中止だ」
大会の主催者となっている妹は、中止を行おうと空中に浮かぶコンソールを弄り出す。澱みなく動いていた指が止まる。そのまま色んなウィンドウを開いては閉じてを繰り返し、リスナーに何回か質問を重ねるも、「え、でもないよ」「え、ウソでしょ。ありえなくない」などと焦ったような言葉が漏れていた。
妹は青い顔をして、俺と桜庭を見る。
「なんか中止できなくなってた。しかも九十九人設定だったはずなのに、空いた一人分の枠にアイツがねじ込まれてるんだけど」
ゲームに不慣れな俺が「つまりどういうことか簡単に言ってくれないか?」と訊く。
深刻な顔をした桜庭が答える。
「アイツを倒すか、誰かから殺されないと、ここから逃げ出せないってことだよ」
つまり、残った参加者全員が記憶喪失になるリスクを背負ったということだった。
理性では由々しき事態になったことを飲み込めたのだが、本能ではシオミンが先にこの大会から抜けて良かったと安堵する自分がいた。
その事実は俺の心に影を落とすことになる。ようは酷く落ち込んだ。
もうシオミンがいないならば残ってる意味ない、などといった言葉を繰り返し吐き出していた。
その態度に、妹は侮蔑の眼差しを飛ばし、妹のリスナーは「これは酷い」などと嘲笑する。唯一、桜庭だけが俺に寄り添ってくれて「シオミンの攻撃を一度は防いだんだ。だったら最後まで生き残って、シオミンに愛を伝えようぜ」と励ましてくれた。
我ながらちょろいので、その励ましを真に受け、最後まで生き残ってやろうと決心した。
リスナーは「男同士の友情だなぁ」と半分からかいのコメントで溢れていたらしい。
妹は「いや、わけわからないんだけど」と真顔でクエスチョンを浮かべていた。
それからは俺と妹は身を守るのに精一杯で、敵は桜庭が、いやプロゲーマーサクラバが一掃していた。ほとんどが野次馬で埋められていたため、実力的に圧倒していた。強い人も中にはいたらしいが、やはりプロゲーマーには劣るらしく、どうにかなってしまった。
そして、残りが俺らを合わせて三チームの時、事件は起こる。
狭いエリアでそれぞれが異なるビルの中に潜伏していた時のことだった。
ゲーム内の全ての地形表現にノイズが走った。
俺と桜庭、妹はそれぞれ顔を見合わせ、自分の環境だけで起きただけでないことを確認する。
次の瞬間、轟音が響き渡る。
窓から外を見ると黒く細いシルエット、両の手には巨大な鉤爪、人を模しているようだが生物とも無機物ともいえぬ何かがそこにいた。
このゲームのビジュアルからは大きく外れた異様な見た目であった。
「桜庭、アイツ倒すと何かいいことあったりするのか?」
桜庭にそう問いかけるも、返事がない。
目を遣ると、桜庭は目を大きく見開き、震えていた。
「アイツがそうなんだな?」
その問いに、桜庭はアイツから、エネミーから視線を離さないまま答える。
「ああ、そうだ。俺が直接見た奴とは違うが、噂になってるのはアイツだな。……これから先は危険が伴う。大会は中止だ」
桜庭はそのまま妹の横に立ち、リスナーに説明する。
「事情はあとで説明する。本大会は中止だ」
大会の主催者となっている妹は、中止を行おうと空中に浮かぶコンソールを弄り出す。澱みなく動いていた指が止まる。そのまま色んなウィンドウを開いては閉じてを繰り返し、リスナーに何回か質問を重ねるも、「え、でもないよ」「え、ウソでしょ。ありえなくない」などと焦ったような言葉が漏れていた。
妹は青い顔をして、俺と桜庭を見る。
「なんか中止できなくなってた。しかも九十九人設定だったはずなのに、空いた一人分の枠にアイツがねじ込まれてるんだけど」
ゲームに不慣れな俺が「つまりどういうことか簡単に言ってくれないか?」と訊く。
深刻な顔をした桜庭が答える。
「アイツを倒すか、誰かから殺されないと、ここから逃げ出せないってことだよ」
つまり、残った参加者全員が記憶喪失になるリスクを背負ったということだった。
理性では由々しき事態になったことを飲み込めたのだが、本能ではシオミンが先にこの大会から抜けて良かったと安堵する自分がいた。
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