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1章 義妹と書いて偽妹と読む
お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!
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戦闘開始とともに、飛行機のようなものから参加者が飛び立っていく。
昔ながらの様式美らしく、飛行機からジャンプして戦場に降り立つという形式は変わらないらしい。ゲームによっては飛行機ではなく、空飛ぶバスだったり、空飛ぶ円盤だったり、猫だったり、見た目だけはオリジナリティを出している。
そこから戦場となる島に降り立ち、戦闘を開始するわけだが俺らは不人気の場所に降り立った。理由はもちろん俺と妹が初心者だからだ。過激な戦場に降りてしまったら、見せ場も何もないまま、なすがままに蹂躙されてしまう。
初動を安定させ、適当に銃やアイテムを集め、そこから戦闘に参加する運びとなった。
移動中、二人の能力を訊いてみた。
桜庭は目立つ能力はないが、体力最大値や持てるアイテム重量、ダメージを受けたら時間経過で少量ずつ自動回復するという自己完結型の強い人が使えば強い能力を選択していた。言い換えれば俺と妹をアテにしていないともいえる。それは間違いではないので、俺も妹も敢えてツッコムようなことはしなかった。
妹の方はというと、エイムアシストという自動照準を選んでいた。どんな状況でも必ず当たるというわけではないが、当たりやすくなるため初心者に対しておすすめされている能力でもある。ただ、それを使っても強さに頭打ちがすぐに来るため、ゲームの楽しさを学ぶぐらいで、将来的には別能力に切り替えるべきものと言われていた。
「そういや戦闘開始する前にシオミンに殺されたい的なこと言ってたよな。どういうことだ?」
桜庭が訊いてきた。
「どういうことも何もシオミンに殺されることは一生の自慢だろ?」
桜庭は俺のシオミンに対する愛を知っているので聞き流していた。
「でももう死んでるんじゃないの? 残り半分切ったし」
九十九人、三十三チームで始まった試合は、気づけば残り十五チーム。加えて、全チームが一人も欠けることなく無事なんてことはなく、残り人数は三十五人を切っていた。
「シオミンならきっと生き残っているはずだ」
「いやはやどうしてそんな盲目になれるのやら。リスナーのみんなもそー思うよねー」
妹がリスナーに向けた言葉を投げかけると少しして「恋は盲目かー上手いこと言うねー。でも妹の立場からすると兄がアイドルに盲目なのはいただけないかなぁ」とブーたれた。
「って誰がブラコンじゃい!」
俺からは見れないがリスナーにからかわれたらしい。
妹がギャースカ騒いでいるのを見つつ進んでいく。途中、小高い山がいくつかある地形に近づく。この登り降りをリアルでやろうすれば翌日は筋肉痛で動けなくなるだろう。下手すれば数日寝込む。これがゲームで良かった。
そう思った矢先のこと。
桜庭が叫んだ。
「前方敵あり! 各自、身を守れ!」
桜庭が近くの木に身を隠し、妹は狼狽えて棒立ち。
俺は仕方なく妹の前に庇うように飛び出る。
そこで初めて能力を発動した。
選んだ能力はシールドを精製する能力。正六角形の組み合わせで形状変化するバリアを精製するというものだ。今は急ぎということもあり、前方に最大展開を行う。
展開とほぼ同時、重い銃声と展開したシールドに衝突する。鈍い音が響き渡り、シールドのうちの一つにヒビが入る。だが確実に銃弾を受け止めていた。
「前方、スナイパー!」
前方に目を凝らす。山の中腹辺り、一人の女性がスナイパーライフルを構えていた。
シオミンだった。
なんということだろう。
あれほどシオミンに殺されたかったのに、俺という愚物は女神の一撃から身を守ってしまった。しかし、慈悲深い神は、居場所がバレても逃げることなく未だ照準を合わせてくれている。
ならば俺はバリアを解除して、その身に余る栄誉を受けようではないか。
バリアを解除。
銃声が響き渡る。
それは何故か俺の背後から聞こえたものであった。
そして、照準を合わせてくれていたはずのシオミンは倒れた。
恐る恐る背後を振り向くと、シオミンと同じ武器を持った妹が一仕事をやり遂げた顔をしていた。
「シールド解除してくれたおかげで撃ちやすかったよ」
昔ながらの様式美らしく、飛行機からジャンプして戦場に降り立つという形式は変わらないらしい。ゲームによっては飛行機ではなく、空飛ぶバスだったり、空飛ぶ円盤だったり、猫だったり、見た目だけはオリジナリティを出している。
そこから戦場となる島に降り立ち、戦闘を開始するわけだが俺らは不人気の場所に降り立った。理由はもちろん俺と妹が初心者だからだ。過激な戦場に降りてしまったら、見せ場も何もないまま、なすがままに蹂躙されてしまう。
初動を安定させ、適当に銃やアイテムを集め、そこから戦闘に参加する運びとなった。
移動中、二人の能力を訊いてみた。
桜庭は目立つ能力はないが、体力最大値や持てるアイテム重量、ダメージを受けたら時間経過で少量ずつ自動回復するという自己完結型の強い人が使えば強い能力を選択していた。言い換えれば俺と妹をアテにしていないともいえる。それは間違いではないので、俺も妹も敢えてツッコムようなことはしなかった。
妹の方はというと、エイムアシストという自動照準を選んでいた。どんな状況でも必ず当たるというわけではないが、当たりやすくなるため初心者に対しておすすめされている能力でもある。ただ、それを使っても強さに頭打ちがすぐに来るため、ゲームの楽しさを学ぶぐらいで、将来的には別能力に切り替えるべきものと言われていた。
「そういや戦闘開始する前にシオミンに殺されたい的なこと言ってたよな。どういうことだ?」
桜庭が訊いてきた。
「どういうことも何もシオミンに殺されることは一生の自慢だろ?」
桜庭は俺のシオミンに対する愛を知っているので聞き流していた。
「でももう死んでるんじゃないの? 残り半分切ったし」
九十九人、三十三チームで始まった試合は、気づけば残り十五チーム。加えて、全チームが一人も欠けることなく無事なんてことはなく、残り人数は三十五人を切っていた。
「シオミンならきっと生き残っているはずだ」
「いやはやどうしてそんな盲目になれるのやら。リスナーのみんなもそー思うよねー」
妹がリスナーに向けた言葉を投げかけると少しして「恋は盲目かー上手いこと言うねー。でも妹の立場からすると兄がアイドルに盲目なのはいただけないかなぁ」とブーたれた。
「って誰がブラコンじゃい!」
俺からは見れないがリスナーにからかわれたらしい。
妹がギャースカ騒いでいるのを見つつ進んでいく。途中、小高い山がいくつかある地形に近づく。この登り降りをリアルでやろうすれば翌日は筋肉痛で動けなくなるだろう。下手すれば数日寝込む。これがゲームで良かった。
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桜庭が叫んだ。
「前方敵あり! 各自、身を守れ!」
桜庭が近くの木に身を隠し、妹は狼狽えて棒立ち。
俺は仕方なく妹の前に庇うように飛び出る。
そこで初めて能力を発動した。
選んだ能力はシールドを精製する能力。正六角形の組み合わせで形状変化するバリアを精製するというものだ。今は急ぎということもあり、前方に最大展開を行う。
展開とほぼ同時、重い銃声と展開したシールドに衝突する。鈍い音が響き渡り、シールドのうちの一つにヒビが入る。だが確実に銃弾を受け止めていた。
「前方、スナイパー!」
前方に目を凝らす。山の中腹辺り、一人の女性がスナイパーライフルを構えていた。
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なんということだろう。
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ならば俺はバリアを解除して、その身に余る栄誉を受けようではないか。
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銃声が響き渡る。
それは何故か俺の背後から聞こえたものであった。
そして、照準を合わせてくれていたはずのシオミンは倒れた。
恐る恐る背後を振り向くと、シオミンと同じ武器を持った妹が一仕事をやり遂げた顔をしていた。
「シールド解除してくれたおかげで撃ちやすかったよ」
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