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1章 義妹と書いて偽妹と読む
十秒でできること
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戦闘開始まで残り十秒。
そこでシオミンは結局、抽選を通ったのか確認することを忘れていたことに気づく。我が女神ならば当然抽選なんてものは通って当然だと思い込んでいた。それが自然の摂理だと。
そんな狂信者如きメンタルだった俺がそのことに気づけたのは、悔しいことに妹の「有名どころもけっこー抽選参加してたけどほとんど落ちちゃったねー」という発言からだった。
そう今回の抽選は、固定枠として俺ら三人だけが参加できるだけで、招待枠などは一切設けない完全ランダムなものとなっている。ゆえにその参加倍率は十倍以上となっており、運という名の振い落としが発生した。そのため、本当ならば招待枠で呼ぶべき人たちも落とされ、参加枠のほとんどは名も無き野次馬たちによって占拠されていった。不当占拠である。
その中に我が女神ことシオミンがいない可能性は十分にあり得た。
残り十秒切る中、俺は慌ててブラウザでシオミンが参加できているかを調べ始める。試合が始まってからではゲームに関わる機能以外はおおよそ切り離される。例外は配信設定あたりだ。試合が始まってしまったらシオミンがこの戦いに参加しているかどうかを知る術がなくなってしまう。それは避けたい。シオミンが参加しているか、していないかはこの大会に臨むモチベーションであり、参加が決まっていれば戦い方すら変わる。無様に逃げ回ってでもシオミンに会うのだ。
彼女のSNSはブックマークで保存している。そこからすぐに飛んで、最新の発信が何かを確認する。
そして俺は神に感謝した。
シオミンは抽選に通り、この大会に参加することをSNSで表明していた。
やはり、シオミンは持っている側の人間であった。いや、女神であることが証明されたのだ。無論、自明のことであるが、御業を披露してこそ愚鈍な人間どもでも理解できるというもの。また、信者であってもそれを拝見できたというのは、信仰を高めることができる良い機会であった。
いや、待て。
我が女神がこの戦場に降り立つ。ならば私は敬虔な信者として彼女に拝謁するためにどんな手を使ってでも生き残らねばならない。それは当然だ。だが我が女神を拝謁するにあたり持参品の一つもないのはいかがなものだろうか。これがリアルで会う握手会ならば彼女が喜びそうな土産でも持っていくのだが、ここはバーチャル。それができない。ならばやはり多くの首を取り、彼女に殺されることが一番の土産なのではなかろうか。もしシオミンと俺のチームだけ残ることができたのならば、そのまま俺は彼女に殺され、彼女に優勝の栄誉を与えることができる。そして俺はシオミンに殺された名誉を得るのだ。
やるしかあるまい。
戦闘開始まで残り五秒を切り、俺は二人に伝えた。
「シオミンもこの戦いに参加しているらしい」
「ああ、お前がファンだっていうネットアイドルか」と桜庭。
続けて妹が「あー部屋にグッズ沢山あったあの子ねーはいはい」と語気を低くする。
「シオミンに殺されるために生き残って、俺はシオミンに殺される」
そう俺が言い切ったところで、試合が始まった。
そこでシオミンは結局、抽選を通ったのか確認することを忘れていたことに気づく。我が女神ならば当然抽選なんてものは通って当然だと思い込んでいた。それが自然の摂理だと。
そんな狂信者如きメンタルだった俺がそのことに気づけたのは、悔しいことに妹の「有名どころもけっこー抽選参加してたけどほとんど落ちちゃったねー」という発言からだった。
そう今回の抽選は、固定枠として俺ら三人だけが参加できるだけで、招待枠などは一切設けない完全ランダムなものとなっている。ゆえにその参加倍率は十倍以上となっており、運という名の振い落としが発生した。そのため、本当ならば招待枠で呼ぶべき人たちも落とされ、参加枠のほとんどは名も無き野次馬たちによって占拠されていった。不当占拠である。
その中に我が女神ことシオミンがいない可能性は十分にあり得た。
残り十秒切る中、俺は慌ててブラウザでシオミンが参加できているかを調べ始める。試合が始まってからではゲームに関わる機能以外はおおよそ切り離される。例外は配信設定あたりだ。試合が始まってしまったらシオミンがこの戦いに参加しているかどうかを知る術がなくなってしまう。それは避けたい。シオミンが参加しているか、していないかはこの大会に臨むモチベーションであり、参加が決まっていれば戦い方すら変わる。無様に逃げ回ってでもシオミンに会うのだ。
彼女のSNSはブックマークで保存している。そこからすぐに飛んで、最新の発信が何かを確認する。
そして俺は神に感謝した。
シオミンは抽選に通り、この大会に参加することをSNSで表明していた。
やはり、シオミンは持っている側の人間であった。いや、女神であることが証明されたのだ。無論、自明のことであるが、御業を披露してこそ愚鈍な人間どもでも理解できるというもの。また、信者であってもそれを拝見できたというのは、信仰を高めることができる良い機会であった。
いや、待て。
我が女神がこの戦場に降り立つ。ならば私は敬虔な信者として彼女に拝謁するためにどんな手を使ってでも生き残らねばならない。それは当然だ。だが我が女神を拝謁するにあたり持参品の一つもないのはいかがなものだろうか。これがリアルで会う握手会ならば彼女が喜びそうな土産でも持っていくのだが、ここはバーチャル。それができない。ならばやはり多くの首を取り、彼女に殺されることが一番の土産なのではなかろうか。もしシオミンと俺のチームだけ残ることができたのならば、そのまま俺は彼女に殺され、彼女に優勝の栄誉を与えることができる。そして俺はシオミンに殺された名誉を得るのだ。
やるしかあるまい。
戦闘開始まで残り五秒を切り、俺は二人に伝えた。
「シオミンもこの戦いに参加しているらしい」
「ああ、お前がファンだっていうネットアイドルか」と桜庭。
続けて妹が「あー部屋にグッズ沢山あったあの子ねーはいはい」と語気を低くする。
「シオミンに殺されるために生き残って、俺はシオミンに殺される」
そう俺が言い切ったところで、試合が始まった。
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