12 / 229
1章 義妹と書いて偽妹と読む
映りたくない人
しおりを挟む
桜庭と合流した俺たちは出撃準備室なるチームメンバーだけで集まることができる部屋へ向かった。そこではどのゲームモードで遊ぶか作戦を考えたりすることができる簡単な作りの部屋だという。中には雑談部屋として押さえる人もいるらしい。
その部屋に着いて皆が適当な椅子に腰かけたのを見計らい「わざわざ今日呼んだ理由はなんだ?」と切り出した。
「エネミーの調査をしたいからってのはあるが、親睦を深めるっつーのが趣旨だな。これから三人で行動することが増えるんだからギスギスして連携取れないのは避けたいしな」
「それでこのゲームか? もっと気楽にできるゲームの方がいいんじゃないか。俺はド素人だぞ」
「俺はそれでも良かったんだが、舞香ちゃんのことを考えるとこのゲームの方が都合良いと思ってさ」
「コイツのこと?」
妹に視線を配るが、妹もよくわかっていないらしく首を傾げていた。
「舞香ちゃん、配信者かネットアイドル志望でしょ? プロゲーマーサクラバとのコラボってことで配信していいよ」
だからお前はその恰好なのか、とツッコミたくなったがそれ以上に妹が配信者もしくはネットアイドル志望ということを聞いてそれどころじゃなくなる。
キャッキャッと配信の準備を始める妹の肩に手を置く。
「お前、配信者なのか?」
妹は準備をする手を止める。
「んー正直今の時代、配信者とネットアイドルとの境曖昧だからなんともだけど、大きなくくりで言えばそんな感じかなー。てか、ロビーであとで話すって言った件覚えてる?」
「あープロゲーマーとしての桜庭を知ってた件か」
「それそれ。サクラバさんってストリーマーとしても活躍してるから、界隈トップの配信者もといネットアイドル目指してる身としては知らなきゃ駄目なやつだし、見たらまたこれがいい勉強なるんだなー。この衣装だってそれ目指して準備したやつだしね」
「この際、お前が妹だろうが妹じゃなかろうがどうでもいい。配信はやめろ。俺は出る気はない」
「えー! にーちゃんも出ようよー! ネットアイドルでもリアル兄ちゃんとか弟くんとかが一緒に動画に出てることもあるから普通だって。恥ずかしがるようなもんでもないし」
「そんな出たがりと一緒にすんな。俺は表舞台に出る気はない」
「うわー陰キャ思考。もっと日の当たる場所歩きなー?」
「俺は日に当たると死んでしまう病にかかってるから無理だな」
その不毛なやり取りに「まあまあ待て待て」とひらりとした口調で桜庭が割り込んでくる。
「この陰キャくんに陽キャ理論じゃ首を縦に振ってくれないぞ」
「お前は喧嘩売ってるのか?」
桜庭は席を立ち、俺の肩に手を回す。
「……実は事務所の伝手で手に入れた汐見柚子のライブチケットがあるんだ。しかもSS席だ」
それは推しのライブチケットであった。
電脳世界ならば誰もがSS席で見ることが可能なのに「現実世界と同じような体験を」という糞みたいな建前の名の下に、ぼったくり価格に加え、ありえない抽選確立を潜り抜けなければ手に入れられないものであった。
「ギブアンドテイクでいこうじゃあないか。オレはエネミーの調査ができる、舞香ちゃんはネームバリューのあるオレとコラボができる、お前は推しのSS席ライブチケットを手に入れられる。三方良しで誰も困らないだろ?」
その悪魔の囁きに抗うことなどできるだろうか。
無論、無理だった。
プライドを投げ打ってシオミンのSS席ライブチケットを手に入れられるのならば安いものだ。
そう自分に言い聞かせなければ、配信に映る自分の姿に恥ずかしさでのたうち回ってしまいそうだった。
その部屋に着いて皆が適当な椅子に腰かけたのを見計らい「わざわざ今日呼んだ理由はなんだ?」と切り出した。
「エネミーの調査をしたいからってのはあるが、親睦を深めるっつーのが趣旨だな。これから三人で行動することが増えるんだからギスギスして連携取れないのは避けたいしな」
「それでこのゲームか? もっと気楽にできるゲームの方がいいんじゃないか。俺はド素人だぞ」
「俺はそれでも良かったんだが、舞香ちゃんのことを考えるとこのゲームの方が都合良いと思ってさ」
「コイツのこと?」
妹に視線を配るが、妹もよくわかっていないらしく首を傾げていた。
「舞香ちゃん、配信者かネットアイドル志望でしょ? プロゲーマーサクラバとのコラボってことで配信していいよ」
だからお前はその恰好なのか、とツッコミたくなったがそれ以上に妹が配信者もしくはネットアイドル志望ということを聞いてそれどころじゃなくなる。
キャッキャッと配信の準備を始める妹の肩に手を置く。
「お前、配信者なのか?」
妹は準備をする手を止める。
「んー正直今の時代、配信者とネットアイドルとの境曖昧だからなんともだけど、大きなくくりで言えばそんな感じかなー。てか、ロビーであとで話すって言った件覚えてる?」
「あープロゲーマーとしての桜庭を知ってた件か」
「それそれ。サクラバさんってストリーマーとしても活躍してるから、界隈トップの配信者もといネットアイドル目指してる身としては知らなきゃ駄目なやつだし、見たらまたこれがいい勉強なるんだなー。この衣装だってそれ目指して準備したやつだしね」
「この際、お前が妹だろうが妹じゃなかろうがどうでもいい。配信はやめろ。俺は出る気はない」
「えー! にーちゃんも出ようよー! ネットアイドルでもリアル兄ちゃんとか弟くんとかが一緒に動画に出てることもあるから普通だって。恥ずかしがるようなもんでもないし」
「そんな出たがりと一緒にすんな。俺は表舞台に出る気はない」
「うわー陰キャ思考。もっと日の当たる場所歩きなー?」
「俺は日に当たると死んでしまう病にかかってるから無理だな」
その不毛なやり取りに「まあまあ待て待て」とひらりとした口調で桜庭が割り込んでくる。
「この陰キャくんに陽キャ理論じゃ首を縦に振ってくれないぞ」
「お前は喧嘩売ってるのか?」
桜庭は席を立ち、俺の肩に手を回す。
「……実は事務所の伝手で手に入れた汐見柚子のライブチケットがあるんだ。しかもSS席だ」
それは推しのライブチケットであった。
電脳世界ならば誰もがSS席で見ることが可能なのに「現実世界と同じような体験を」という糞みたいな建前の名の下に、ぼったくり価格に加え、ありえない抽選確立を潜り抜けなければ手に入れられないものであった。
「ギブアンドテイクでいこうじゃあないか。オレはエネミーの調査ができる、舞香ちゃんはネームバリューのあるオレとコラボができる、お前は推しのSS席ライブチケットを手に入れられる。三方良しで誰も困らないだろ?」
その悪魔の囁きに抗うことなどできるだろうか。
無論、無理だった。
プライドを投げ打ってシオミンのSS席ライブチケットを手に入れられるのならば安いものだ。
そう自分に言い聞かせなければ、配信に映る自分の姿に恥ずかしさでのたうち回ってしまいそうだった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です
天野ハザマ
ファンタジー
その短い生涯を無価値と魔神に断じられた男、中島涼。
そんな男が転生したのは、剣と魔法の世界レムフィリア。
新しい職種は魔王。
業務内容は、勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事?
【アルファポリス様より書籍版1巻~10巻発売中です!】
新連載ウィルザード・サーガもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/375139834/149126713

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる