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1章 義妹と書いて偽妹と読む
時代が変わっても変わらないもの
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死んだはずからの妹からのメッセージを受けた俺がとった行動は決まっていた。
無視だ。
タチの悪いいたずらだと決めつけた。
そりゃあそうだろう。死人が蘇るはずもないし、日付も時間指定もない。そんなものに付き合うほど暇ではない。二年に進級し、色々入り用でバイトも増やした。そして何より、推しているアイドルの配信を見るのに忙しいのだ。
妹のフリをした何者かに割く時間などありなどしない。
メッセージを貰ってから一週間が経った。
メッセージのことなど忘れかけていた頃、偽物の妹からもう一度メッセージが送られてきた。
その内容は、明日の夜十時に大型電化量販店の電脳に来いというものだった。
愛想の欠片もない、強い命令口調であった。
電脳――昔はコンピュータを意味する言葉だったらしいが、その言葉が生まれてから百余年が経過し、その意味合いは変わった。インターネットと言えばメタバースと呼ばれる仮想現実が主流になった現代では、個別の仮想現実がそう呼称されることになった。由来は大昔のSFゲームでそう呼称されていたのが浸透したかららしい。
その催促のメッセージに俺は悩んだ。
警察に届け出るべきではないか。
一度目は面倒臭さが勝り、無視に落ち着いたが、二度目はさすがに腹が立ってきた。
大切な妹というと語弊しかないが、それなりに信用していた人を騙られると青筋の一つぐらいは立ってしまう。本物のウザ絡みしてきた妹には、いつもそれ以上の青筋が立っていたのだが。もしこれが本当に妹だと仮定したら、青筋が追加発注しそうだ。
大学の友人であり同じバイト仲間である桜庭に雑談がてら相談してみた。
「死んだ奴からのメッセージって、いたずらレベル超えてんだろ」
「やっぱりそう思うか? 警察一択かな」
「いや、待て。時間と場所まで指定してんだろ。三刀《みとう》のストーカーってのに会ってみたいだけど」
「わざわざ妹を騙っているのだからストーカーではないだろう」
「いやいや、死んだはずの妹の代わりとして傷ついた心を癒してあげたいとかあんだろ」
「その理屈でいくとマッチポンプで妹を殺してそうだな」
「それな」
桜庭の押しに負け、俺は明日の夜十時に指定された大型電化量販店の電脳へ赴くことが決まった。
無視だ。
タチの悪いいたずらだと決めつけた。
そりゃあそうだろう。死人が蘇るはずもないし、日付も時間指定もない。そんなものに付き合うほど暇ではない。二年に進級し、色々入り用でバイトも増やした。そして何より、推しているアイドルの配信を見るのに忙しいのだ。
妹のフリをした何者かに割く時間などありなどしない。
メッセージを貰ってから一週間が経った。
メッセージのことなど忘れかけていた頃、偽物の妹からもう一度メッセージが送られてきた。
その内容は、明日の夜十時に大型電化量販店の電脳に来いというものだった。
愛想の欠片もない、強い命令口調であった。
電脳――昔はコンピュータを意味する言葉だったらしいが、その言葉が生まれてから百余年が経過し、その意味合いは変わった。インターネットと言えばメタバースと呼ばれる仮想現実が主流になった現代では、個別の仮想現実がそう呼称されることになった。由来は大昔のSFゲームでそう呼称されていたのが浸透したかららしい。
その催促のメッセージに俺は悩んだ。
警察に届け出るべきではないか。
一度目は面倒臭さが勝り、無視に落ち着いたが、二度目はさすがに腹が立ってきた。
大切な妹というと語弊しかないが、それなりに信用していた人を騙られると青筋の一つぐらいは立ってしまう。本物のウザ絡みしてきた妹には、いつもそれ以上の青筋が立っていたのだが。もしこれが本当に妹だと仮定したら、青筋が追加発注しそうだ。
大学の友人であり同じバイト仲間である桜庭に雑談がてら相談してみた。
「死んだ奴からのメッセージって、いたずらレベル超えてんだろ」
「やっぱりそう思うか? 警察一択かな」
「いや、待て。時間と場所まで指定してんだろ。三刀《みとう》のストーカーってのに会ってみたいだけど」
「わざわざ妹を騙っているのだからストーカーではないだろう」
「いやいや、死んだはずの妹の代わりとして傷ついた心を癒してあげたいとかあんだろ」
「その理屈でいくとマッチポンプで妹を殺してそうだな」
「それな」
桜庭の押しに負け、俺は明日の夜十時に指定された大型電化量販店の電脳へ赴くことが決まった。
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