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クレイ兄ちゃんはすぐに来てくれた。
元々今日は休みにしていたようだ。
しかし、フィリップ兄ちゃんが少し渋った。
というのも、
「スタンピード、処理してる最中だったのに」
との事だった。
無理を言って抜けてきたらしい。
プラスして、魔力を提供することに交換条件も提示された。
「ウカノ兄ちゃんさー、ちゃんと約束守ってよ」
「分かった分かった。
ここのダンジョンのことが終わったら、スタンピードの依頼手伝ってやるから」
どうやら、フィリップ兄ちゃんに農業ギルドからお達しが来たらしい。
「あ、なら今日の夕食はドラゴンのテールステーキ食いたいから俺も手伝おっかな」
なんてクレイ兄ちゃんも軽口を叩いている。
「突っ込まない。もう私は突っ込まないぞ」
エリィさんが、ブツブツとそんなことをつぶやく。
すると、それが聞こえていたのかフィリップ兄ちゃんがエリィさんを誘う。
「エリィさんも手伝ってくれるんですか?!
いやぁ、嬉しいなぁ。
SSSランクの冒険者なら、特攻かけなくても倒せますしね!
ドラゴン・スレイヤーが手伝ってくれるならウカノ兄ちゃんいらないかな」
エリィさんが条件反射の様に返した。
「そっちの突っ込むじゃない!」
エリィさんとフィリップ兄ちゃん、もう打ち解けてるし。
かと思えば、エリィさんは俺の横に来て、心底疲れたと言いたげに疑問をぶつけてきた。
「そもそも、その規格外な魔力量はなんなんだ?!」
「あー、家庭の事情です」
「嘘をつけ! どんな家庭の事情だ?!」
俺たちのやり取りをみていた兄ちゃんズが、不思議そうに首を傾げて口々に、
「そういや、俺も冒険者ギルドでありえない数値が出て、魔力計測器の故障扱いになったな。
フィリップは?」
「クレイ兄ちゃんもか、俺もだよ」
「お前らも苦労してんだなぁ」
なんて言い合っている。
それはそうと、エリィさんの疑問は尽きない。
「そもそも、どうやってそこまで魔力をあげることが出来るんだ?!」
「だから家庭の事情ですよ」
答えた俺の頬をエリィさんが抓る。
それを兄ちゃんズが微笑ましいとばかりに、ニヨニヨしながら見てくる。
「あー、でもそっか、普通の貴族の家や、町に暮らしてる家庭って耕運機とかないもんな。
臼挽きですら農家だと魔力使うけど、一般家庭にそんな魔力使う機械がほいほいあるわけないしな。
それなら驚いて当たり前か」
クレイ兄ちゃんがそんなことを口にした。
フィリップ兄ちゃんとウカノ兄ちゃんが、
「「あぁ、なるほど」」
声をハモらせて納得している。
それをエリィさんは見逃さなかった。
「どういうことだ?」
ウカノ兄ちゃんが説明する。
説明してる間に、俺とクレイ兄ちゃん、そしてフィリップ兄ちゃんの三人がそれぞれ魔力を扉に流していく。
ただし、ゼロにならないよう気をつける。
「耕運機もそうなんですけど、野良作業に使う1部の道具って魔力を流さないと使えなかったりするんです。
この仕様になってるのは、まぁいろいろ事情があるんですが今回は割愛します。
それで、魔力も使いすぎると消耗激しいじゃないですか」
「そうだな」
「疲れると、作業に支障を来すのでその解消と、まあ、赤ん坊のギャン泣き対策、お昼寝対策として子供の魔力を優先して使ってたんですけどね。
その結果が、今の俺や弟たちの魔力量ってわけです」
「……をい」
「子育ても大変でしてねぇ。
これにプラスして壊れた鎌とかで遊ぶから、常時魔力を道具に吸わせ続けてる幼少期を過ごすんですけどね。
魔力切れを起こした回数が赤ん坊の頃に多ければ多いほど、容量が爆上がりするんですよ」
ウカノ兄ちゃんの説明に、エリィさんはとてもとても冷静に聞き返す。
「さっき、シンが一番下の妹の魔力量が百万超えてるとか言ってた気がするんだが、気のせいか?」
ウカノ兄ちゃんも、とても淡々と返す。
「末っ子って、上の兄弟姉妹のおもちゃみたいなもんですからねぇ。
みんな魔力切れを嫌がって下の子を使ってたんです。
使う頻度が高い子ほど魔力量が多くなってるんです」
「ただの虐待だろ!」
「本人たちは面倒を見るついでに遊んでやってたってところですかねぇ」
「親はどうした、親は?!」
「あはは、畑と田んぼしてました。
とりあえず魔力切れ起こさせておけば、その辺に寝転がして置けるんで楽なんですよ。
特に二、三歳なんてあちこち走り回ってあぶないし。
俺ですら五歳くらいの時に用水路に落ちて流されたことあるし。
悲しいかなそれで亡くなる子もいるんで、事故対策も兼ねてたりするんです。わざと魔力切れにさせるの」
ウカノ兄ちゃんとエリィさんの会話が一区切り着いたようなので、俺は兄ちゃんを呼んで、扉に魔力を流してもらった。
すると、すぐに規定値に達したのか、扉が崩れ去った。
「よっしゃ、開いた!」
俺は兄ちゃん達とハイタッチをした。
元々今日は休みにしていたようだ。
しかし、フィリップ兄ちゃんが少し渋った。
というのも、
「スタンピード、処理してる最中だったのに」
との事だった。
無理を言って抜けてきたらしい。
プラスして、魔力を提供することに交換条件も提示された。
「ウカノ兄ちゃんさー、ちゃんと約束守ってよ」
「分かった分かった。
ここのダンジョンのことが終わったら、スタンピードの依頼手伝ってやるから」
どうやら、フィリップ兄ちゃんに農業ギルドからお達しが来たらしい。
「あ、なら今日の夕食はドラゴンのテールステーキ食いたいから俺も手伝おっかな」
なんてクレイ兄ちゃんも軽口を叩いている。
「突っ込まない。もう私は突っ込まないぞ」
エリィさんが、ブツブツとそんなことをつぶやく。
すると、それが聞こえていたのかフィリップ兄ちゃんがエリィさんを誘う。
「エリィさんも手伝ってくれるんですか?!
いやぁ、嬉しいなぁ。
SSSランクの冒険者なら、特攻かけなくても倒せますしね!
ドラゴン・スレイヤーが手伝ってくれるならウカノ兄ちゃんいらないかな」
エリィさんが条件反射の様に返した。
「そっちの突っ込むじゃない!」
エリィさんとフィリップ兄ちゃん、もう打ち解けてるし。
かと思えば、エリィさんは俺の横に来て、心底疲れたと言いたげに疑問をぶつけてきた。
「そもそも、その規格外な魔力量はなんなんだ?!」
「あー、家庭の事情です」
「嘘をつけ! どんな家庭の事情だ?!」
俺たちのやり取りをみていた兄ちゃんズが、不思議そうに首を傾げて口々に、
「そういや、俺も冒険者ギルドでありえない数値が出て、魔力計測器の故障扱いになったな。
フィリップは?」
「クレイ兄ちゃんもか、俺もだよ」
「お前らも苦労してんだなぁ」
なんて言い合っている。
それはそうと、エリィさんの疑問は尽きない。
「そもそも、どうやってそこまで魔力をあげることが出来るんだ?!」
「だから家庭の事情ですよ」
答えた俺の頬をエリィさんが抓る。
それを兄ちゃんズが微笑ましいとばかりに、ニヨニヨしながら見てくる。
「あー、でもそっか、普通の貴族の家や、町に暮らしてる家庭って耕運機とかないもんな。
臼挽きですら農家だと魔力使うけど、一般家庭にそんな魔力使う機械がほいほいあるわけないしな。
それなら驚いて当たり前か」
クレイ兄ちゃんがそんなことを口にした。
フィリップ兄ちゃんとウカノ兄ちゃんが、
「「あぁ、なるほど」」
声をハモらせて納得している。
それをエリィさんは見逃さなかった。
「どういうことだ?」
ウカノ兄ちゃんが説明する。
説明してる間に、俺とクレイ兄ちゃん、そしてフィリップ兄ちゃんの三人がそれぞれ魔力を扉に流していく。
ただし、ゼロにならないよう気をつける。
「耕運機もそうなんですけど、野良作業に使う1部の道具って魔力を流さないと使えなかったりするんです。
この仕様になってるのは、まぁいろいろ事情があるんですが今回は割愛します。
それで、魔力も使いすぎると消耗激しいじゃないですか」
「そうだな」
「疲れると、作業に支障を来すのでその解消と、まあ、赤ん坊のギャン泣き対策、お昼寝対策として子供の魔力を優先して使ってたんですけどね。
その結果が、今の俺や弟たちの魔力量ってわけです」
「……をい」
「子育ても大変でしてねぇ。
これにプラスして壊れた鎌とかで遊ぶから、常時魔力を道具に吸わせ続けてる幼少期を過ごすんですけどね。
魔力切れを起こした回数が赤ん坊の頃に多ければ多いほど、容量が爆上がりするんですよ」
ウカノ兄ちゃんの説明に、エリィさんはとてもとても冷静に聞き返す。
「さっき、シンが一番下の妹の魔力量が百万超えてるとか言ってた気がするんだが、気のせいか?」
ウカノ兄ちゃんも、とても淡々と返す。
「末っ子って、上の兄弟姉妹のおもちゃみたいなもんですからねぇ。
みんな魔力切れを嫌がって下の子を使ってたんです。
使う頻度が高い子ほど魔力量が多くなってるんです」
「ただの虐待だろ!」
「本人たちは面倒を見るついでに遊んでやってたってところですかねぇ」
「親はどうした、親は?!」
「あはは、畑と田んぼしてました。
とりあえず魔力切れ起こさせておけば、その辺に寝転がして置けるんで楽なんですよ。
特に二、三歳なんてあちこち走り回ってあぶないし。
俺ですら五歳くらいの時に用水路に落ちて流されたことあるし。
悲しいかなそれで亡くなる子もいるんで、事故対策も兼ねてたりするんです。わざと魔力切れにさせるの」
ウカノ兄ちゃんとエリィさんの会話が一区切り着いたようなので、俺は兄ちゃんを呼んで、扉に魔力を流してもらった。
すると、すぐに規定値に達したのか、扉が崩れ去った。
「よっしゃ、開いた!」
俺は兄ちゃん達とハイタッチをした。
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