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とにもかくにも、ウカノ兄ちゃんはしばらく俺の部屋で寝泊まりすることに決まった。
しばらく、というのは適当な住処を見つけるまで、ということになる。
とりあえず、大家さんに話を通して、リアさんにウカノ兄ちゃんの分の夕食と明日の朝食も頼んでおく。
とりあえず動くにしても明日からだ、ということにしたらしい。
んで、翌日、早朝。
出勤やら登校やらでバタつく食堂にて、でもそれなりに新顔である兄が横にいるために視線を集めているので、どうも落ち着かない。
「とりあえず不動産屋に行って部屋探して、それから農業ギルドに行って仕事も探さないとなぁ」
というのが、今日の兄の予定のようだ。
「ふーん、まぁ頑張って」
「うん、適当に頑張るよ」
そんな風に返すウカノ兄ちゃんを見る。
そういえばこの人が家出してきた根本的な理由というか、元々の原因は聞いた。
でも、それは本当に実家ではよくあることだった。
お金のことで喧嘩するのは、あの家ではそれほど日常的なことだ。
それも夕食の席で怒鳴りあいの親子喧嘩をしない日は無いほどだ。
一年、三百六十五日、毎日毎日、一日たりとも欠かさずに怒鳴りあいを続けているのだ。
ほんっと飽きないよな。
しかし、である。
この兄は、まず怒るということをしないし、出来ないタイプだと思っていた。
しかし、現実に兄は家出をしてここにいる。
堪忍袋の緒が切れてここにいる。
しかも、兄ちゃんが長年愛用している草刈り鎌を持ち出すというのは、よほどブチ切れたのだろう。
「兄ちゃん、時間が空くようなら冒険者ギルドの討伐依頼一緒にやる?」
ウカノ兄ちゃんは、傍からみるとなよなよしてるし、いつもヘラヘラと人のよさそうな顔で笑っている。
とても強そうには見えない。
むしろ、なにも知らなければ薬草をずっと採取してそうなお兄さん、という印象を初対面なら十人中十人が抱くことだろう。
それこそ盗賊団を壊滅させるなんてとうていできないように見える。
しかし、兄弟の中、どころか村でも最強クラスの災害級モンスターの狩人だったりする。
部落、村の中でも一番強いと言っても過言ではない。
そんな兄ちゃんが大量のモンスター討伐を手伝ってくれるなら、とても効率がいいのだ。
「そうだなぁ、今日はダメだけど、明日なら」
そんな答えが返ってきた。
と、そこへテトさんが現れる。
「仲がいいねぇ、君たち」
なんて言いながら、朝食を食べ始めた。
さて、動くか。
と、俺と兄ちゃんが席を立った時だ。
来客があったらしく、リアさんが玄関へ慌ただしく向かった。
少しして、お城からの使いだという人を連れて戻ってきた。
話を聞くと、昨日ウカノ兄ちゃん(当時、俺の双子の妹として変装していた)に助けられたお姫様が、お礼をしたいからと言い出したため、迎えに来たらしい。
さて、困った。
俺の双子の妹は本当は、存在しない。
どう説明すべきか。
しかし、当事者の兄は全然困っていなかった。
「妹は昨日、先に旅立ってもうここにはいませんよ」
と、いけしゃあしゃあと言ってのけたのだった。
しばらく、というのは適当な住処を見つけるまで、ということになる。
とりあえず、大家さんに話を通して、リアさんにウカノ兄ちゃんの分の夕食と明日の朝食も頼んでおく。
とりあえず動くにしても明日からだ、ということにしたらしい。
んで、翌日、早朝。
出勤やら登校やらでバタつく食堂にて、でもそれなりに新顔である兄が横にいるために視線を集めているので、どうも落ち着かない。
「とりあえず不動産屋に行って部屋探して、それから農業ギルドに行って仕事も探さないとなぁ」
というのが、今日の兄の予定のようだ。
「ふーん、まぁ頑張って」
「うん、適当に頑張るよ」
そんな風に返すウカノ兄ちゃんを見る。
そういえばこの人が家出してきた根本的な理由というか、元々の原因は聞いた。
でも、それは本当に実家ではよくあることだった。
お金のことで喧嘩するのは、あの家ではそれほど日常的なことだ。
それも夕食の席で怒鳴りあいの親子喧嘩をしない日は無いほどだ。
一年、三百六十五日、毎日毎日、一日たりとも欠かさずに怒鳴りあいを続けているのだ。
ほんっと飽きないよな。
しかし、である。
この兄は、まず怒るということをしないし、出来ないタイプだと思っていた。
しかし、現実に兄は家出をしてここにいる。
堪忍袋の緒が切れてここにいる。
しかも、兄ちゃんが長年愛用している草刈り鎌を持ち出すというのは、よほどブチ切れたのだろう。
「兄ちゃん、時間が空くようなら冒険者ギルドの討伐依頼一緒にやる?」
ウカノ兄ちゃんは、傍からみるとなよなよしてるし、いつもヘラヘラと人のよさそうな顔で笑っている。
とても強そうには見えない。
むしろ、なにも知らなければ薬草をずっと採取してそうなお兄さん、という印象を初対面なら十人中十人が抱くことだろう。
それこそ盗賊団を壊滅させるなんてとうていできないように見える。
しかし、兄弟の中、どころか村でも最強クラスの災害級モンスターの狩人だったりする。
部落、村の中でも一番強いと言っても過言ではない。
そんな兄ちゃんが大量のモンスター討伐を手伝ってくれるなら、とても効率がいいのだ。
「そうだなぁ、今日はダメだけど、明日なら」
そんな答えが返ってきた。
と、そこへテトさんが現れる。
「仲がいいねぇ、君たち」
なんて言いながら、朝食を食べ始めた。
さて、動くか。
と、俺と兄ちゃんが席を立った時だ。
来客があったらしく、リアさんが玄関へ慌ただしく向かった。
少しして、お城からの使いだという人を連れて戻ってきた。
話を聞くと、昨日ウカノ兄ちゃん(当時、俺の双子の妹として変装していた)に助けられたお姫様が、お礼をしたいからと言い出したため、迎えに来たらしい。
さて、困った。
俺の双子の妹は本当は、存在しない。
どう説明すべきか。
しかし、当事者の兄は全然困っていなかった。
「妹は昨日、先に旅立ってもうここにはいませんよ」
と、いけしゃあしゃあと言ってのけたのだった。
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