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「違うの?」
ほぼ断言したヒュウガに、ミナクが返す。
「たぶん、違う。
たとえば、身につけてるアクセサリー。
男物ではあるが、一番わかりやすいのはピアスだな。
ミナクは、この国であの色、紫色のピアスを見たことあるか?」
「言われてみれば、無い、かも?」
「魔石もそうだし、宝石もたしかに探せば紫色はある。
でも極端に紫色の装飾具の種類は少ない。色にこだわらなければあるが」
「……それが?」
「この国じゃ、紫色の装身具、装飾品は王族しか身につけられないと決まっているんだ」
「そうなんだ」
「学校で習わなかったのか?」
ヒュウガの問いに、ミナクはポツリと呟くように言った。
「色々あって途中から村じゃなくて街の学校に行かされたから。
私は勉強したかったけど、一部の授業はクラスメイトが馬鹿とは一緒に受けたくないって駄々こねて、私、その授業だけ教室から追い出されてたから」
「それは、イジメだろ」
「そう言っても誰も動いてくれなかった。声を上げても、上げるなって言われた。
そういうもんなんだって、お父さんもお母さんも、学校の先生たちも口を揃えて言ってた。
やっと学校を卒業できて冒険者になったら、学校外のイジメの方が、学校の頃よりまだマシだったのには驚いた」
「……まだマシ、か」
「最低限のお金は貰えるから。
まだマシ。学校は何を言っても悪いのは私。お金ももらえない。
学校の外は、悪者扱いこそされるけど必要最低限のお金はもらえるし。
同じ農民出身の人や農業ギルドはまだ優しいし。
だから、ただ悪者扱いされて言葉を封じ込まれてた学校よりはいい」
そこでミナクは言葉を切って、いまだエリィと、そのエリィと話し続けるエルを見た。
「でも、こんなの普通以上の世界に生きてる人には、きっと見えてないんだろうな」
「いや、やっと見え始めたんだろ。
だからこそ、ミナクのとこにもそして俺のところにも、今まで無縁だった場所から仕事をしようって声がかかり始めた」
「そうだといいな。
でも、それなら、なんでシンさんにはそういう話が来てないんだろ?」
「さぁな。
でも、今回の勝負が終われば確実にあいつの所にも話が行くだろう。
現にこうして王族らしき人間がわざわざ足を運んでるんだ」
「シンさんが、勝つ前提?」
「当たり前だろ。
むしろ今回の勝負は農民向けのヤラセみたいなもんだ。
これで負けたらそっちの方が奇跡だ」
「たしかに」
ミナクは同意しか出来なかった。
***
「ふぅ、頑張った頑張った」
俺は額の汗を拭って、リストをチェックする。
とりあえず、大物である災害級モンスターはそれぞれ十頭ずつ討伐完了。
低ポイントの、他のモンスターや素材もノルマ達成っと。
よしよし。
それぞれの巣を見つけられたから、一網打尽の袋叩きにできた。
まさか一日で終わるとはなぁ。
今、夕方か。
このまま、もう山を降りるかね。
出店とかは、たしか明後日まではやってるって聞いてるし。
さすがに早すぎ!って突っ込まれるかもなぁ。
でも、もう終わっちゃったし。
そう結論づけて、俺は山を降り始めた。
と言っても、飛行魔法で山肌に沿って滑降するだけだ。
数分もせずに、俺は山を降りた。
ただ、そのまま会場には直行しない。
途中でのんびりと、なんなら散歩しつつ向かうことにした。
残りの元仲間二人がどこでどうしているのかは知らないが、まぁ、これは確実に勝ったな。
なんて考えて、戻っていた途中で俺は一番会いたくない連中と鉢合わせしてしまった。
それは、
「やっと会えたね。シン君?」
俺をくそくだらない理由でパーティから追い出した元凶である、あの女、アンと、
「こんなことで俺たちの、いいやアンの手を煩わせやがって」
少年Aこと、クラウであった。
この二人が俺の前に立ちはだかったのだ。
「煩わしいと思うならそもそも参加しなければいいだろ。
こっちとしてもいい迷惑だ。
そういえば、そっちは四人じゃなかったか?
なんで二人なんだ?」
何も知らないふうを装って、俺は聞いてみた。
「お前には関係ないだろ!!」
クラウが怒鳴った。
「ま、そりゃそうだ。
なんであの二人がそれぞれ別行動してたのか、とか。
その上、俺にわざわざ攻撃を仕掛けてきたのか、とか。
今となっちゃ関係ないもんな。
それじゃお二人さん、残り二日頑張れよ~」
俺は言うだけ言って、手をヒラヒラさせてその場を離れようとする。
しかし、
「おい、今なんて言った?
あの二人とあったのか?!」
クラウが食いついてきた。
「それこそ、お前には関係ないだろ。クラウ。
お前自身がいまさっき関係無いって言ったんだから」
「シン君! あの二人は無事なの?!」
「さぁ? 無事だとは思うけど。
なんなら本部に連絡取って確認すれば?」
「本部?」
アンが不思議そうに聞き返してくる。
しかし、俺はそれには答えない。
くるりと背を向けて立ち去ろうとした。
だが、クラウがそれを許さなかった。
俺の口を割ろうと思ったのか、それともここで俺を今度こそ殺すかしてこの勝負を終わらせようと思ったのか。
どっちでもいいが、クラウは俺に飛び蹴りを放った。
身体強化しているので、蹴りの威力も速さも普段のそれとは違う。
あと、若干だが殺気も感じた。
いい機会だ。
俺はこいつらに対してそれなりに思うところがある、というのを知ってもおう。
そう考えて、俺は、俺に向かって放たれた蹴りをひらりと避けて、その足首を掴む。
クラウの顔が驚きに変わる。
つい、一瞬前前までは俺をボコボコにしてやるという笑みだったと言うのに。
「前から言いたかったことがあるんだよ」
俺は言いながら、足首を掴んだまま手近にあった木へクラウを叩きつけた。
「ぎゃっ!!?」
クラウの顔面が気に激突して、目を潰す。
「お前、調子に乗りすぎ。
こっちが何もしないからって、何も出来ないって決めつけてたろ?」
ベシン、バシン、とムチを振るう要領で俺はあちこちの木にクラウを叩きつける。
「残念。やろうと思えば、いくらでも俺はこうやってお前を力で捩じ伏せることができたんだ、って、ありゃ、もう聞こえてないか。
呆気ないなぁ」
ほんの数回、痛めつけただけで呆気なく彼は事切れてしまった。
よし、【妖精王の涙】で作った、薬の出番だ!
俺は、クラウを生き返らせ、今度は腹パンをして気絶させた。
そして、そのまま農業ギルドの方へ転送する。
「さて、お姫様? 一人になってしまいましたよ?」
俺は、パンパンっと手を二回叩いた。
そして、にっこりと笑って彼女を見た。
「ひっ!」
彼女は怯えていた。
その証拠に、俺への恐怖のためか腰を抜かし、その股の間から液体が地面を濡らしている。
「ありゃ、失禁?
はずかしいなぁ、おい?」
「ご、ごめんなさい! 許して!! 殺さないで!!」
「悪いことをしてたって頭はあったのか。
謝るってのはつまりそういうことだ。
でも、俺は許さない。まぁ、殺しもしないけどさ」
俺はそこで指を鳴らす。
それを合図に、どこからともなくゴブリンやらオーク、オーガが現れてアンを取り囲んだ。
「な、なになに?!」
アンが取り乱す。
「俺は逃げ延びたけど、まぁ一度殺されかけたわけで。
目には目を歯には歯を。
まったく同じ目にあったところで俺の気が収まらないからさ。
このモンスター達に輪姦される光景でも見たら、考えてやってもいいかなって思ってさ。
俺はさ、お前らによってたかって暴行されたわけだし。
せめて俺以上の暴行と、辱めを受けて貰わなきゃ釣り合わないだろ?」
「え?」
「はい、それじゃ体力が続く限りガンバー」
俺は、きっととてもいい笑顔をしていたに違いない。
アンの顔が絶望に染まる。
「い、いやぁぁあああ!!!!」
そして、俺の観せる悪夢の中、彼女は幻覚のモンスター達によって暴行されていく。
見たくもない光景なので、たったそれだけで発狂してしまった彼女のこともさっさと農業ギルドの方の運営へと転送した。
「よし、これで堂々と帰れるぞ!」
俺は意気揚々と歩き始めた。
うん、我ながら性格悪いな。
でも、こんな簡単に決着着くならこっちから奇襲でもなんでも仕掛ければ良かったかな。
ま、それこそ今更か。
ほぼ断言したヒュウガに、ミナクが返す。
「たぶん、違う。
たとえば、身につけてるアクセサリー。
男物ではあるが、一番わかりやすいのはピアスだな。
ミナクは、この国であの色、紫色のピアスを見たことあるか?」
「言われてみれば、無い、かも?」
「魔石もそうだし、宝石もたしかに探せば紫色はある。
でも極端に紫色の装飾具の種類は少ない。色にこだわらなければあるが」
「……それが?」
「この国じゃ、紫色の装身具、装飾品は王族しか身につけられないと決まっているんだ」
「そうなんだ」
「学校で習わなかったのか?」
ヒュウガの問いに、ミナクはポツリと呟くように言った。
「色々あって途中から村じゃなくて街の学校に行かされたから。
私は勉強したかったけど、一部の授業はクラスメイトが馬鹿とは一緒に受けたくないって駄々こねて、私、その授業だけ教室から追い出されてたから」
「それは、イジメだろ」
「そう言っても誰も動いてくれなかった。声を上げても、上げるなって言われた。
そういうもんなんだって、お父さんもお母さんも、学校の先生たちも口を揃えて言ってた。
やっと学校を卒業できて冒険者になったら、学校外のイジメの方が、学校の頃よりまだマシだったのには驚いた」
「……まだマシ、か」
「最低限のお金は貰えるから。
まだマシ。学校は何を言っても悪いのは私。お金ももらえない。
学校の外は、悪者扱いこそされるけど必要最低限のお金はもらえるし。
同じ農民出身の人や農業ギルドはまだ優しいし。
だから、ただ悪者扱いされて言葉を封じ込まれてた学校よりはいい」
そこでミナクは言葉を切って、いまだエリィと、そのエリィと話し続けるエルを見た。
「でも、こんなの普通以上の世界に生きてる人には、きっと見えてないんだろうな」
「いや、やっと見え始めたんだろ。
だからこそ、ミナクのとこにもそして俺のところにも、今まで無縁だった場所から仕事をしようって声がかかり始めた」
「そうだといいな。
でも、それなら、なんでシンさんにはそういう話が来てないんだろ?」
「さぁな。
でも、今回の勝負が終われば確実にあいつの所にも話が行くだろう。
現にこうして王族らしき人間がわざわざ足を運んでるんだ」
「シンさんが、勝つ前提?」
「当たり前だろ。
むしろ今回の勝負は農民向けのヤラセみたいなもんだ。
これで負けたらそっちの方が奇跡だ」
「たしかに」
ミナクは同意しか出来なかった。
***
「ふぅ、頑張った頑張った」
俺は額の汗を拭って、リストをチェックする。
とりあえず、大物である災害級モンスターはそれぞれ十頭ずつ討伐完了。
低ポイントの、他のモンスターや素材もノルマ達成っと。
よしよし。
それぞれの巣を見つけられたから、一網打尽の袋叩きにできた。
まさか一日で終わるとはなぁ。
今、夕方か。
このまま、もう山を降りるかね。
出店とかは、たしか明後日まではやってるって聞いてるし。
さすがに早すぎ!って突っ込まれるかもなぁ。
でも、もう終わっちゃったし。
そう結論づけて、俺は山を降り始めた。
と言っても、飛行魔法で山肌に沿って滑降するだけだ。
数分もせずに、俺は山を降りた。
ただ、そのまま会場には直行しない。
途中でのんびりと、なんなら散歩しつつ向かうことにした。
残りの元仲間二人がどこでどうしているのかは知らないが、まぁ、これは確実に勝ったな。
なんて考えて、戻っていた途中で俺は一番会いたくない連中と鉢合わせしてしまった。
それは、
「やっと会えたね。シン君?」
俺をくそくだらない理由でパーティから追い出した元凶である、あの女、アンと、
「こんなことで俺たちの、いいやアンの手を煩わせやがって」
少年Aこと、クラウであった。
この二人が俺の前に立ちはだかったのだ。
「煩わしいと思うならそもそも参加しなければいいだろ。
こっちとしてもいい迷惑だ。
そういえば、そっちは四人じゃなかったか?
なんで二人なんだ?」
何も知らないふうを装って、俺は聞いてみた。
「お前には関係ないだろ!!」
クラウが怒鳴った。
「ま、そりゃそうだ。
なんであの二人がそれぞれ別行動してたのか、とか。
その上、俺にわざわざ攻撃を仕掛けてきたのか、とか。
今となっちゃ関係ないもんな。
それじゃお二人さん、残り二日頑張れよ~」
俺は言うだけ言って、手をヒラヒラさせてその場を離れようとする。
しかし、
「おい、今なんて言った?
あの二人とあったのか?!」
クラウが食いついてきた。
「それこそ、お前には関係ないだろ。クラウ。
お前自身がいまさっき関係無いって言ったんだから」
「シン君! あの二人は無事なの?!」
「さぁ? 無事だとは思うけど。
なんなら本部に連絡取って確認すれば?」
「本部?」
アンが不思議そうに聞き返してくる。
しかし、俺はそれには答えない。
くるりと背を向けて立ち去ろうとした。
だが、クラウがそれを許さなかった。
俺の口を割ろうと思ったのか、それともここで俺を今度こそ殺すかしてこの勝負を終わらせようと思ったのか。
どっちでもいいが、クラウは俺に飛び蹴りを放った。
身体強化しているので、蹴りの威力も速さも普段のそれとは違う。
あと、若干だが殺気も感じた。
いい機会だ。
俺はこいつらに対してそれなりに思うところがある、というのを知ってもおう。
そう考えて、俺は、俺に向かって放たれた蹴りをひらりと避けて、その足首を掴む。
クラウの顔が驚きに変わる。
つい、一瞬前前までは俺をボコボコにしてやるという笑みだったと言うのに。
「前から言いたかったことがあるんだよ」
俺は言いながら、足首を掴んだまま手近にあった木へクラウを叩きつけた。
「ぎゃっ!!?」
クラウの顔面が気に激突して、目を潰す。
「お前、調子に乗りすぎ。
こっちが何もしないからって、何も出来ないって決めつけてたろ?」
ベシン、バシン、とムチを振るう要領で俺はあちこちの木にクラウを叩きつける。
「残念。やろうと思えば、いくらでも俺はこうやってお前を力で捩じ伏せることができたんだ、って、ありゃ、もう聞こえてないか。
呆気ないなぁ」
ほんの数回、痛めつけただけで呆気なく彼は事切れてしまった。
よし、【妖精王の涙】で作った、薬の出番だ!
俺は、クラウを生き返らせ、今度は腹パンをして気絶させた。
そして、そのまま農業ギルドの方へ転送する。
「さて、お姫様? 一人になってしまいましたよ?」
俺は、パンパンっと手を二回叩いた。
そして、にっこりと笑って彼女を見た。
「ひっ!」
彼女は怯えていた。
その証拠に、俺への恐怖のためか腰を抜かし、その股の間から液体が地面を濡らしている。
「ありゃ、失禁?
はずかしいなぁ、おい?」
「ご、ごめんなさい! 許して!! 殺さないで!!」
「悪いことをしてたって頭はあったのか。
謝るってのはつまりそういうことだ。
でも、俺は許さない。まぁ、殺しもしないけどさ」
俺はそこで指を鳴らす。
それを合図に、どこからともなくゴブリンやらオーク、オーガが現れてアンを取り囲んだ。
「な、なになに?!」
アンが取り乱す。
「俺は逃げ延びたけど、まぁ一度殺されかけたわけで。
目には目を歯には歯を。
まったく同じ目にあったところで俺の気が収まらないからさ。
このモンスター達に輪姦される光景でも見たら、考えてやってもいいかなって思ってさ。
俺はさ、お前らによってたかって暴行されたわけだし。
せめて俺以上の暴行と、辱めを受けて貰わなきゃ釣り合わないだろ?」
「え?」
「はい、それじゃ体力が続く限りガンバー」
俺は、きっととてもいい笑顔をしていたに違いない。
アンの顔が絶望に染まる。
「い、いやぁぁあああ!!!!」
そして、俺の観せる悪夢の中、彼女は幻覚のモンスター達によって暴行されていく。
見たくもない光景なので、たったそれだけで発狂してしまった彼女のこともさっさと農業ギルドの方の運営へと転送した。
「よし、これで堂々と帰れるぞ!」
俺は意気揚々と歩き始めた。
うん、我ながら性格悪いな。
でも、こんな簡単に決着着くならこっちから奇襲でもなんでも仕掛ければ良かったかな。
ま、それこそ今更か。
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