上 下
27 / 78

27

しおりを挟む
 とりあえず、本格的に他人を巻き込んで来たので俺としても容赦は出来ない。

 「はーい、お口アーンしましょうねぇ?」

 ノコノコとやって来て、自白とも取れる行為をおこなった元仲間達。
 と言っても、二人だけだが。
 その二人を食堂の椅子に背中合わせで括りつけ、自白剤入の雑炊を食べさせようとする。
 まぁ、当然拒否される。
 コンナコトシテタダデスムトオモウナー、的な鳴き声が聞こえてくるが、無視する。
 対野菜泥棒用の、特性自白剤だ。
 実家の作業小屋に野菜と一緒に転がっていたのを、わざわざ転移魔法で取りに行ってきたのだ。
 その時、クソ親父とすれ違ったが、とくに何も話すことは無かった。
 口を開けば嫌味しか言ってこないのを知っているからだ。
 向こうは向こうで俺を兄弟の誰かと間違えていて、間違えた名前で呼んでいたが、無視した。
 子供の顔と名前くらい一致させろや。

 そんなこんなで手に入れた自白剤。
 投与目的はもちろんリアさんの居場所を白状させるためだ。

 「てめぇみたいな農民がこんなことして許されると思ってんのか?!」

 怒鳴られ、唾を吐かれる。
 きったねーな、おい。

 「貴族と結託して一般人のリアさん巻き込んで許されるとおもってんの?」

 この前殴ってきたのとは別の少年、少年Bでいっか。
 少年Bの言葉に、俺は淡々と返した。

 「そもそもお前が俺たちを騙さなかったら、アンを襲わなかったらこんなことにはなってないだろ!!」

 今度は少年Cがそう怒鳴ってきた。

 「騙してなんかないだろ。それに俺は何度も言ってるぞ。襲ってもいないってな」

 あー、もうめんどくせぇなぁ。
 口からはやめて、鼻か、いっその事ケツから入れるか?
 中に入って吸収されれば同じだろ。

 俺はぱちん、と指を鳴らす。
 それだけで、二人の体が固まって怒りの形相のまま、戸惑っているのがわかる。

 「あのさー、ここまでは元仲間ってことでサービスしてたんだよ。
 人権的配慮、みたいな?
 でもお前ら自分たちのことばっかり、そして俺を責めてばっかりでさ。
 話にならねーから、もういいや。
 お前らはさ、農民ってことで馬鹿にしてるけど。
 その農民の仕事の中に畑泥棒への対処とかあるの知ってるか?
 知らないだろうな?
 お前らは俺たち農民を見下して、知ろうともしなかった。
 農民が人を痛め付けることに対して、不慣れだと思うか?」

 四つの瞳の中に、初めて俺への恐怖が出始める。

 「お前らみたいなマナーの悪い冒険者、もう一度言うが畑泥棒、あとは害獣にモンスター。
 それらを相手にしてきた農民が、そんなに優しい人間だと思ってんの??
 現にこうしてお前ら、格下のはずの俺の魔法から逃げられないだろ?
 解けるもんなら解いてみろよ。
 狩りも解体も1番下手くそでドベだった俺は、他の誰よりも魔法が上手って褒められてたんだ。
 知らなかっただろ?」

 そして、ぱちん、とまた俺は指を鳴らした。

 「俺は、人間、素直が一番だと思うぞ」

 最後通牒として、早く話せ、と言う意味をこめてそう言う。

 「なんだ、やっぱり嘘つきじゃねーか!!
 これだけの実力があんの隠してたってことだろ!!
 仕事をサボるために!!」

 少年B、いやCだったか?
 まぁどっちでもいいや。
 そいつがそんなことを、吠えた。
 俺は自白剤を使うのすらやめる。
 お前は俺を怒らせた。

 俺は、大きく手を一度だけパンっと叩いた。

 
 「こんな言葉があるの、育ちがいいお前らは知ってるか?」

 俺は手のひらに、小石を出現させる。ついでにもう一つ、この前の合同昇級試験のときに出来た縁で手に入れた、【妖精王の涙】と呼ばれる薬草から生成した薬も魔法袋から取り出す。
 それを弄びながら、俺は続けた。

 「バカは死ななきゃ治らない」

 言って、石を弾いた。
 それは、俺を怒らせた元仲間の額に当たり、額から後頭部にかけて貫通した。
 頭の中身を撒き散らせて、そいつの頭が力なく垂れた。

 「おいっ?! なにをしたんだ?!!」

 余ってたもう一人が、キャンキャンと吠えた。
 なので、

 「うるさい」

 俺はまた石を弾いた。
 それは、余ってた方の太ももを貫通する。
 
 「へ?」

 マヌケな声の後、痛さによる悲鳴が上がった。

 「失血死って、寒くなるって聞いたけどどうなん?
 やっぱ寒い?」

 「イヤだ、死にたくない、死にたくない!!
 なぁ、仲間だろ?!
 俺たち仲間だっただろ!!??
 なんでこんなこと出来んだよ!?」

 「仲間?
 仲間だったっけ??
 そもそも、俺たちは仲間だったのか?
 都合のいい雑用係、の間違いだろ?」

 俺は言いながら、先程取り出した薬を、頭の中身をぶちまけた方へ振りかける。
 粉末状の薬は黄金色に輝いて、死んだばかりの馬鹿を蘇生させた。

 「なあ? お前はどう思う?」

 蘇生させられた馬鹿が、俺の問いに恐怖で顔を引き攣らせる。

 「お前は俺の事、仲間として見てたか?
 あの女が現れる前も、なんだかんだ理屈を捏ねて、何も出来ない農民に仕事を与えてやってたんじゃなかったか?」

 「ひぃっ!
 ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 幻覚の中で、泣きわめき許しを乞う元仲間達を見ながら、俺はため息を吐き出した。  

 「精神が死ぬ前に、さっさと白状してくれないかなぁ」

 もちろん俺はコイツらを手にかけたりなんてしていない。
 すべて幻だ。
 まあ、コイツらにしてみればかなりタチの悪い悪夢を見せられ続けている状態だが。
 と、そこにテトさんからリアさん誘拐の報せを受けたエリィさんが駆けつけてきた。
 そして、俺が行っていた精神的拷問による、地味な光景を見て、

 「何をしてるんだ?」

 そう聞いて来たのだった。
 そして、さらにエリィさんの背後から予想外の人物が現れて、こう言ってきた。

 「ただいまー。ごめんね。朝ごはん作れなくて。
 みんなもう学校と仕事に行っちゃったか」

 現れたのは誘拐されたはずのリアさんだった。
 なんてこったい、人質が自分で帰ってきちゃった。
 拷問やり損だなぁ。

 「おかえりなさい、リアさん。
 迎え行く予定だったんですけど、間に合わなかったみたいですみません」

 「リア! 無事だったか!!」

 口々に言う俺とエリィさん。
 リアさんは苦笑した。

 「ごめんね、心配かけて。
 見ての通り大丈夫だったから!
 気にしないで。
 それよりも、話纏めてきたからさ!」

 「?」

 リアさんが楽しそうに言って来たが、なんのことか分からず俺は首を傾げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ポリゴンスキルは超絶チートでした~発現したスキルをクズと言われて、路地裏に捨てられた俺は、ポリゴンスキルでざまぁする事にした~

喰寝丸太
ファンタジー
ポリゴンスキルに目覚めた貴族庶子6歳のディザは使い方が分からずに、役に立たないと捨てられた。 路地裏で暮らしていて、靴底を食っている時に前世の記憶が蘇る。 俺はパチンコの大当たりアニメーションをプログラムしていたはずだ。 くそう、浮浪児スタートとはナイトメアハードも良い所だ。 だがしかし、俺にはスキルがあった。 ポリゴンスキルか勝手知ったる能力だな。 まずは石の板だ。 こんなの簡単に作れる。 よし、売ってしまえ。 俺のスキルはレベルアップして、アニメーション、ショップ、作成依頼と次々に開放されて行く。 俺はこれを駆使して成り上がってやるぞ。 路地裏から成りあがった俺は冒険者になり、商人になり、貴族になる。 そして王に。 超絶チートになるのは13話辺りからです。

農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。 仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて―― 「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」 「片手で抜けますけど? こんな感じで」 「200キロはありそうな大根を片手で……?」 「小麦の方も収穫しますね。えい」 「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」 「手刀で真空波を起こしただけですけど?」 その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。 日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。 「これは投擲用大根だ」 「「「投擲用大根???」」」

辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!

naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。 うん?力を貸せ?無理だ! ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか? いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。 えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪ ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。 この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である! (けっこうゆるゆる設定です)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

修道院で生まれた娘~光魔法と不死の一族~

拓海のり
ファンタジー
アストリは修道院で生まれた。母親はすぐ死んでしまい、孤児として修道院の孤児院で育てられた。十二歳の魔力検査で魔力が多く、属性魔法も多かったアストリだが、修道院長は辺境の教会に行けという。辺境の廃教会堂で出会った人物とは。 ゆっくり書きます。長くなったので長編にしました。他サイトにも投稿しています。 残酷シーンがありますのでR15にいたしました。カテゴリをファンタジーに変更いたしました。

処理中です...