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そもそも、ダンジョンとはなんぞや?
という疑問が、俺の中に昔からあった。
実家がある村、その近くにもダンジョンがあったのだ。
で、そのダンジョン攻略だか、探索だかを目的にして冒険者が村にやってくることがあった。
この仕事を始めてから知ったのだが、うちの村はだいぶ訪れる冒険者の質が良かったようだ。
というのも、他のダンジョンが近くにある村では、訪れる冒険者の質というかマナーが悪いことが度々あったのだという。
食料を買うのにお金を出すのは馬鹿げている、という理由で畑に実っていた野菜が盗まれたり。
壊れたし嵩張るし、処分も面倒いから、という理由で武器や防具をその辺にポイ捨てしたり。
とある村ではブチ切れた村長と村民が、ダンジョン中心に災害級対策として編み出された罠を設置、冒険者を血祭りにあげたと聞いた。
一応、その村はダンジョンに入る場合は村長に申し出ること、そして入場料を払うこと、と注意目的の立て看板を設置していたらしい。
だが、そもそもマナーすら守れない連中が、こんな注意書きを守る訳もなく。
その村では、農民特製の特製罠の餌食となったらしい。
そして、今でも一部の冒険者は餌食になり続けているらしい。
ビニールハウスのビニールを引っ張り出してきてないだけ、まだ優しいと思うのは、たぶん俺だけじゃないはずだ。
あれ、対空戦も考慮してるからビーム出せるし。
ドラゴンとかでかいモンスターが空から降ってきても潰れない程度には頑丈だし。
農家での使用頻度高いから、ガラスのハウスより安価だし。
ちなみに、俺の着てる服もビニールハウスと同じ素材を練り込んで作ってあるから防御力だけは滅茶苦茶高かったりする。
農業ギルドでオーダーメイドすれば好きなデザインで作ってくれるのだ。
デザインさえ気にしなければ、種類だけはある。農作業用の服だけど。
これだけは借金してでも作れ、と農民出身の冒険者先輩に言われていたということもある。
ちなみにその冒険者先輩は、ちょっと前に女の子しかいなかった農家に婿入りして、元気に玉ねぎと白菜を作っている。
農閑期だけ、冒険者をする予定だそうだ。
「ダンジョンが何故あるか? 変なことを気にするんだな」
俺がダンジョン攻略や探索に熱を入れる理由。
勿論、冒険者っぽい仕事の代表例の一つということもある。
加えて、【なぜ、存在しているのか?】という疑問が昔からあったのだ。
そして、もうひとつの疑問。
誰も、それを疑問と思わないのだ。
その事に俺が気づいたのは、まぁ、とある人にそう教えてもらっからだ。
そして、それは、俺が漠然と憧れていた【冒険者】という職業に就きたいと考え始めるキッカケになった。
あの人は言っていた。
場所が違えば、ダンジョンそのものの機能が、役割が違ってくるのだ、と。
「エリィさんは、他の大陸にあるダンジョンがどんなものか知っていますか?」
「いや? でもこの大陸、この国にあるものと同じだろう?」
あの人の言葉が蘇る。
俺に、興味を持たせてくれた、とある冒険者の言葉が蘇る。
「この世界中を冒険している人が言っていました。
ダンジョンには複数種類がある、と。
冒険者に好まれるのは、実力を計ることが出来て、珍しいお宝を手に入れることができるタイプのダンジョンだ、と。
そして、歴史好きに好まれるのは、大昔の人達が遺した建築物としての、ダンジョン。
主にこの二種類が世界には存在しているのだ、と」
俺たちが生きているこの国、この大陸においてダンジョンとされているのは、前者だ。
あの人は言っていた。
前者タイプのダンジョンは、誰かが意図的に作り出している、と。
誰が作っているの?
なんの目的で作っているの?
ワクワクしながら、俺は聞いた。
でも、あの人は笑うだけで答えてはくれなかった。
その笑いが、子供をからかっている笑いじゃなくて、なんと言うのだろう?
知らない何かを知ろうとしている、そんな笑顔だったからかもしれない。
なにがあるかわからない、楽しさ。
その楽しさを仕事に出来ている。
仕事は楽しくしてもいいんだ、と教えてもらった気がした。
あの人だけじゃなかった。
村を訪れる冒険者たちは、皆、楽しそうだった。
不機嫌そうに畑を耕したり、イライラして怒鳴ったりする、いわば田舎の、農家のクソ親父達とは何かが違っていた。
やりたくない仕事をいやいややっているんじゃない人達が多かったのだ。
だから、憧れた。
だから、知りたいと思った。
冒険者になってからの現実に、心が折れたこともあった。
もしかしたら、諦めたことの方が多かったかもしれない。
それでも、冒険者の仕事を楽しくやっていたあの人達に憧れた。
その憧れが消えることは無かった。
だから、嫌なことがあっても諦めずに俺はここに居続けることが出来たんだと思う。
「そんな大ボラ吹きがいたのか?」
「あはは、アニキが聞いたら苦笑するだろうなぁ」
ここでのアニキ、とはあの人のことだ。
実の兄たちのことではない。
「でも、アニキは嘘なんてついてなかったですよ。
今言ったことを、信じていましたから」
そして、楽しく冒険をしていたのだ。
それだけは、自信を持って言える。
という疑問が、俺の中に昔からあった。
実家がある村、その近くにもダンジョンがあったのだ。
で、そのダンジョン攻略だか、探索だかを目的にして冒険者が村にやってくることがあった。
この仕事を始めてから知ったのだが、うちの村はだいぶ訪れる冒険者の質が良かったようだ。
というのも、他のダンジョンが近くにある村では、訪れる冒険者の質というかマナーが悪いことが度々あったのだという。
食料を買うのにお金を出すのは馬鹿げている、という理由で畑に実っていた野菜が盗まれたり。
壊れたし嵩張るし、処分も面倒いから、という理由で武器や防具をその辺にポイ捨てしたり。
とある村ではブチ切れた村長と村民が、ダンジョン中心に災害級対策として編み出された罠を設置、冒険者を血祭りにあげたと聞いた。
一応、その村はダンジョンに入る場合は村長に申し出ること、そして入場料を払うこと、と注意目的の立て看板を設置していたらしい。
だが、そもそもマナーすら守れない連中が、こんな注意書きを守る訳もなく。
その村では、農民特製の特製罠の餌食となったらしい。
そして、今でも一部の冒険者は餌食になり続けているらしい。
ビニールハウスのビニールを引っ張り出してきてないだけ、まだ優しいと思うのは、たぶん俺だけじゃないはずだ。
あれ、対空戦も考慮してるからビーム出せるし。
ドラゴンとかでかいモンスターが空から降ってきても潰れない程度には頑丈だし。
農家での使用頻度高いから、ガラスのハウスより安価だし。
ちなみに、俺の着てる服もビニールハウスと同じ素材を練り込んで作ってあるから防御力だけは滅茶苦茶高かったりする。
農業ギルドでオーダーメイドすれば好きなデザインで作ってくれるのだ。
デザインさえ気にしなければ、種類だけはある。農作業用の服だけど。
これだけは借金してでも作れ、と農民出身の冒険者先輩に言われていたということもある。
ちなみにその冒険者先輩は、ちょっと前に女の子しかいなかった農家に婿入りして、元気に玉ねぎと白菜を作っている。
農閑期だけ、冒険者をする予定だそうだ。
「ダンジョンが何故あるか? 変なことを気にするんだな」
俺がダンジョン攻略や探索に熱を入れる理由。
勿論、冒険者っぽい仕事の代表例の一つということもある。
加えて、【なぜ、存在しているのか?】という疑問が昔からあったのだ。
そして、もうひとつの疑問。
誰も、それを疑問と思わないのだ。
その事に俺が気づいたのは、まぁ、とある人にそう教えてもらっからだ。
そして、それは、俺が漠然と憧れていた【冒険者】という職業に就きたいと考え始めるキッカケになった。
あの人は言っていた。
場所が違えば、ダンジョンそのものの機能が、役割が違ってくるのだ、と。
「エリィさんは、他の大陸にあるダンジョンがどんなものか知っていますか?」
「いや? でもこの大陸、この国にあるものと同じだろう?」
あの人の言葉が蘇る。
俺に、興味を持たせてくれた、とある冒険者の言葉が蘇る。
「この世界中を冒険している人が言っていました。
ダンジョンには複数種類がある、と。
冒険者に好まれるのは、実力を計ることが出来て、珍しいお宝を手に入れることができるタイプのダンジョンだ、と。
そして、歴史好きに好まれるのは、大昔の人達が遺した建築物としての、ダンジョン。
主にこの二種類が世界には存在しているのだ、と」
俺たちが生きているこの国、この大陸においてダンジョンとされているのは、前者だ。
あの人は言っていた。
前者タイプのダンジョンは、誰かが意図的に作り出している、と。
誰が作っているの?
なんの目的で作っているの?
ワクワクしながら、俺は聞いた。
でも、あの人は笑うだけで答えてはくれなかった。
その笑いが、子供をからかっている笑いじゃなくて、なんと言うのだろう?
知らない何かを知ろうとしている、そんな笑顔だったからかもしれない。
なにがあるかわからない、楽しさ。
その楽しさを仕事に出来ている。
仕事は楽しくしてもいいんだ、と教えてもらった気がした。
あの人だけじゃなかった。
村を訪れる冒険者たちは、皆、楽しそうだった。
不機嫌そうに畑を耕したり、イライラして怒鳴ったりする、いわば田舎の、農家のクソ親父達とは何かが違っていた。
やりたくない仕事をいやいややっているんじゃない人達が多かったのだ。
だから、憧れた。
だから、知りたいと思った。
冒険者になってからの現実に、心が折れたこともあった。
もしかしたら、諦めたことの方が多かったかもしれない。
それでも、冒険者の仕事を楽しくやっていたあの人達に憧れた。
その憧れが消えることは無かった。
だから、嫌なことがあっても諦めずに俺はここに居続けることが出来たんだと思う。
「そんな大ボラ吹きがいたのか?」
「あはは、アニキが聞いたら苦笑するだろうなぁ」
ここでのアニキ、とはあの人のことだ。
実の兄たちのことではない。
「でも、アニキは嘘なんてついてなかったですよ。
今言ったことを、信じていましたから」
そして、楽しく冒険をしていたのだ。
それだけは、自信を持って言える。
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