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【報告】ガチで身バレするかと思ったwww【スレ】
1
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翌日。
前日、学園内でドラゴンに続き魔族まで出たということで、また学園は休みになった。
さすがに授業に遅れが出始めているので、明日から時間割が遅れを取り戻すために一部変更されて行われるとのことだ。
「行かなきゃだよなぁ」
自室のベッドでゴロゴロしながらユートは呟いた。
昨夜のルドルフとのやりとりが蘇る。
***
元々、ユートはその育ちからトラブルに対して割と冷静にそつ無くこなすことができる。
ルドルフの問いかけに、むしろ訓練施設時代に受けた教育を思い出して、気づけばスラスラと受け答えしている自分がいて驚いた。
「なんだ、そんなことか簡単な話だよ。
怪我をしなかったんだ。
怪我をしなかった理由は言えない」
ルドルフはエディの護衛である。
同時にこの王立魔法学園の生徒だ。
けっして馬鹿ではない。
だから、この言い方だけで納得、いや察してくれるはずだ。
ユートが現在、【言えない】ことと言うのは彼らが【黒衣の人】あるいは【ファントム】と呼ぶ人物に関してだ。
つまりこの場合は、【怪我をしなかった理由は黒衣の人に助けられたからだ】と言ってるようなものだ。
「運が、良かったんだ。
俺は、運良く助かって寮に逃げ帰った。
それだけだよ」
ダメ押しでそう言っておく。
普通の人間ならここから、【黒衣の人】が怪我人を魔法で治してくれた、と考えるだろう。
そもそも、だ。
伝説の聖女か、現代なら神殿に仕える大神官か教皇並の実力がなければできないことをやってのけている。
そう、たとえば【蘇生】とか。
何十年と修行と研鑽を続けた者にしか起こせなない奇跡。
それが魔法を使っての、【蘇生】である。
それをやってのける実力が、ユートにあるとは到底考えられない。
ルドルフは敢えて情報を絞っている。
【蘇生】が使用されたことを出していないのが、その証拠だ。
彼はエディの護衛だ。
常に付き従っている。
ならば、生徒の証言で、
『死んだと思ったら助かってました』
等という言葉も聞いているはずである。
「まぁ、そういう捉え方もできるでしょう」
ルドルフは、肯定しつつさらに続ける。
「では何故、こんな時間に携帯を探しに来たのですか?
君は、夕刻に一度戻ってますよね?
ここに」
「さっきも言ったけど。
携帯を落としたことに気づいて、慌ててと戻ったけれど、立ち入り禁止のテープが貼られてて中に入れず諦めたんだ」
しかし、ここでルドルフがニィっと笑った。
まるで、獲物が罠に掛かったのを見て悦ぶ捕食者のようだ。
ユートは背筋が寒くなった。
自分がなにかミスったことに気づいたのだ。
「へぇ?
そういえば、君がここに戻ってきたのは何時何分頃だったか知ってますか?」
「へ?」
「君、確か寮生でしたよね?
学園内の防犯カメラを確認しました。
16時に授業が終わり、君が教室から寮に戻ったのが16時10分過ぎ。
そこから、君は何かしらの理由があり寮を出てここに来た。
そして、今回の事件に巻き込まれた。
ここまではいいですね?
でもね?
変なんですよ、君の証言。
防犯カメラの映像だと、君は寮から出ていないことになっているんです。
防犯カメラは、寮の入口、寮のなかの通路、裏口に設置してあります。
そのどこにも、君が寮を出ていく姿は映っていませんでした」
ここまで言われ、ようやくユートはハットした。
(映ってるわけねーだろ、ド畜生!!)
そう、部屋から転移魔法を使ったのだから防犯カメラに映るわけはないのだ。
しかし、ユートの心は踊っていた。
楽しいのだ。
このやりとりが。
「さて、君はどこから出てここに来たんでしょう??」
「そ、それは」
ダメ押しとばかりに、ルドルフはさらに続ける。
ユートはゾクゾクとした緊張感を覚える。
まだ、魔眼保持者であるということはバレていない。
それは確信できる。
では、黒衣の人であるということがバレたのか?
まだ、わからない。
しかし、
「そうそう、ドラゴン墜落から魔族が突如現れたのが、16時34分。
そして魔族の出現が16時38分。
魔族と黒衣の人物の交戦が始まったのがその直後、記録上は16時40分。
全てが終わるまで約15分。
16時55分には全てが終わっていたということになります。
この付近にいた生徒達からの証言をもとに推測すると、生徒達が怪我を負う、さらに怪我の回復、治癒が行われたわけですが。
この全てが、戦闘が終わる直前に起こったことになります。
さて、君が寮で携帯の紛失に気づいてここに来たのが17時15分頃。
変ですねぇ、ここから寮まで片道20分はかかるんですよ?
つまり、往復40分かかるということになります。
君の言葉が確かなら、君は16時55分前後にここから寮に逃げ帰り、そして携帯端末の紛失に気づき、戻ってきた、ということですが。
どうして片道分の時間しか経過してないんでしょうね?」
ユートは沈黙するしか無かった。
「まぁ、今日はもう遅いですし。
詳しい話は明日、我が主人にしていただこうかな、と」
ルドルフはそう言って、ポケットから何かを取り出した。
それは、
「俺の携帯!!」
思わず手を伸ばして、取り返そうとする。
しかし、理性が働いた。
ここで、落ちこぼれ生徒が公爵家の子息に仕えている護衛から物を奪ったとなるのは、不自然だ。
そんな理性が働いて、取り返そうと伸ばした手は途中で止まった。
向こうも、渡す気は最初から無かったようでヒョイっと躱す形になった。
「あぁ、これ君のでしたか。
イーリス様から、君の持っていた物と同じ機種だとうかがっていたので」
なんて、飄々と言ってのけた。
「まぁ、とりあえず明日の午前九時。
生徒会室に来てください。
我が主人、そして生徒会役員の方々も話を聞きたいそうなので」
***
(携帯があったら、スレ民に報告するんだけどなぁ)
そして実況するのに、とユートは内心号泣していた。
こんな面白いこと、いいネタになる。
しかし、その携帯端末が無いのだ。
その携帯端末は、現在、生徒会の手中にある。
とにかく、取り返したら報告スレを建てようとユートは決意した。
取り返すためには、生徒会室に行かなくてはならない。
身支度をととのえ、ユートは寮を出た。
言われた通りの時間より少し早く、ユートは生徒会室にたどり着いた。
生徒会室前には、何故かイーリスが立っていた。
イーリスは、憔悴しきっていた。
「ユート……」
「おはよ、イーリス様」
ユートはいつも通りの眠そうな顔を、彼女に向ける。
彼女は、ユートを見て今にも泣きそうになった。
あまりにも、ユートはいつも通りだったから。
「イーリス様も呼び出し?」
「……まぁ、ね」
イーリスは歯切れ悪く、でも話をしたいのかぽつりぽつりと語り出した。
「昨日のこと、どれくらい聞いてる?」
「んー、まぁ、普通程度には」
防犯カメラの映像から彼女が親しくしていた女子生徒が魔族へ姿を変える場面がまるっと映っていた。
そして、その変身する場面に居合わせた生徒もいた。
それらの情報はあっという間に学園内に拡散した。
昨日の今日で、学園からはまだ正式な説明は行われていない。
けれど、傍から見ればイーリスも魔族側に与しているのではないか、という疑念を抱かれかねない。
それだけのスキャンダルが起こったのだ。
【親しくしていた女子生徒が魔族に姿をかえた】という事実。
そして、その女子生徒が退治されたという現実。
さらに、イーリスはそんな魔族を取り巻きにしていたという日々。
それらが、彼女にのしかかり、憔悴させていたのだ。
「それでも、ユートはこうして話してくれるんだね」
おそらく、何かしら他の生徒からアクションがあったのだろう。
イーリスは、いつも通りのユートに泣きそうになるのをグッとこらえる。
「それを言うなら、イーリス様だって毎日俺に普通に話しかけてきてくれてるじゃん」
ユートはやっぱり、いつも通りのユートだ。
「……ユートは、優しいね」
イーリスの言葉に、ユート和まそうとおどけてみせた。
「え、今更きづいたの?
俺、めちゃくちゃ好青年でしょ??」
「ふふっ、うん、知ってるよ」
イーリスがユートに微笑んだ。
少しぎこちない笑みではあったけれど。
それでも、彼女は彼に微笑んだ。
「ねぇ、ユート」
「ん?」
イーリスがさらに言葉を続けようとした時。
生徒会室の扉が開いた。
現れたのは、眼鏡を掛けた女子生徒だった。
ユートは初めて見る顔だ。
ポソッと、イーリスが説明してくれた。
「書記の子だよ」
「へぇ」
そんな二人を書記はじろり、と見やる。
イーリスには、冷たい蔑んだ視線を。
ユートには、潰れたカエルでも見るような目を向けてきた。
(まぁ、これが普通の反応だよなぁ)
イーリスへの視線は、おそらく昨日の出来事から来てるのだろう。
しかし、ユートへのそれはこの学園の生徒なら、ごくごく普通の反応だった。
「イーリス様とユートですね?
どうぞ」
冷たい声だ。
書記に促されるまま、二人は生徒会室へ足を踏み入れた。
生徒会室の中では口の形に長椅子が並べられ、椅子も等間隔に置かれていた。
促されるまま、指定された場所へユートとイーリスは腰を下ろした。
生徒会役員の真正面になる。
風紀委員の面々は、左右それぞれの席についている。
そして、生徒会役員と風紀委員による尋問が始まった。
生徒会役員のメンツの中にユートは、エディとルドルフの姿を見つける。
すぐに、
「とりま、来たんで携帯返して」
と、ルドルフに訴えた。
しかし、
「おいおい、活きがいいやつだな?」
ルドルフが何か言う前に、風紀委員の一人がそう言ってくる。
「たしかに」
その言葉を受けて、なにが面白いのか生徒会長がクスクスと笑った。
ユートも生徒会長の顔は知っていた。
金髪碧眼。気の強そうな雰囲気の少女である。
ヴィリストニア侯爵家の令嬢で現在二年生。
アイリ・ウォン・ヴィリストニアという名前だ。
イーリスへの尋問は形式的なものだった。
魔族女子との関係。
彼女が魔族に姿を変えられることを知っていたのか?
それらを問われ、イーリスはそつなく答えた。
しかし、それは形式的なものであり、いわば前座だった。
生徒会役員と風紀委員の関心は、ユートにあった。
ユートは、生徒会役員と風紀委員からの尋問に答えていく。
そして、最終的に生徒会長からこう問われた。
「それじゃなにか?
君は、回復、治癒、蘇生、再生の魔法が使える上、転移魔法まで使えると??」
「そうですよ?」
携帯が返却された時のネタ作りとして、あえてユートはこの尋問に慇懃無礼に答えていた。
見たところ、風紀委員は血の気の多そうな人物が揃っている。
これで、彼らがユートの無礼さに殴りかかって来てくれれば、面白いのだが。
そんなことを考えていると、ユートの横目に風紀委員の一人が動くのが見えた。
(お膳立てしてやるか)
ユートはおもむろに立ち上がり、
「もう話すことは全部話しました。
携帯返してくださ」
そんなことを言いつつ、ルドルフのところへ行こうとして、ぶん殴られた。
床を転がったところを鳩尾に蹴りを入れられる。
「がはっ!」
「ユート!?
やめてください!!」
イーリスが立ち上がって、ユートを蹴りつけている風紀委員を止めようとする。
しかし、止まらない。
さすがに、エディも止めに入ろうとする。
しかし、ルドルフが行かせないよう主人の腕を掴む。
駆け寄ろうとするイーリスを、別の風紀委員が止める。
ある程度のところで、生徒会長が手を挙げ、風紀委員へ静止するよう指示を出した。
そこでようやく、ユートへの暴力が止まる。
「では、証明してみてくれ。
それとも、意識がないか??」
風紀委員がユートから離れ、イーリスが駆け寄る。
「ユート、うそ、いや、ねぇ、ユート?!」
しん、と生徒会室が静まり返る。
なんだ口だけか、と言わんばかりだ。
そんな生徒会長に、ユートは返した
「返事がない、ただの屍のようだ」
「へ?」
その声に、イーリスが間の抜けた声を出す。
そしてユートはムクリと起き上がると、ポンポンと服を叩いて軽く汚れを落とす。
その顔のどこにも殴られた傷はなかった。
さらに、
「出血大サービス」
何て言って、制服を捲し上げて蹴られた腹をみせた。
やはり、どこにも殴られた形跡がない。
そして、ツカツカとルドルフの前に来て、
「もういいだろ? 携帯返せ」
そう宣ったのだった。
■■■
【報告】ガチで身バレするかと思ったwww【スレ】
1:魔眼保持者
聞いてー聞いてー
つーか、褒めてー
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
2:名無しの冒険者
今だ!2ゲットォォォォ!!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∩ ∩
~| ∪ | (´´
ヘノ ノ (´⌒(´
((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
∧∧ (´;;
(゜Д゜ ,)⌒ヽ (´⌒(´
U‐U^(,,⊃'~... (´⌒(´⌒;;
ポ ∧∧ ポ
ン (゜Д゜ ,) . ン
(´;) U,U )~ (;;).
(´)~(⌒;;UU (´ )...~⌒(`)
3:名無しの冒険者
来たか、魔眼保持者
4:名無しの冒険者
丸一日経過してるからなぁ
5:考察厨兼迷探偵
はてさて、どんな報告が聞けるやら
+ +
∧_∧ ∩ +
(0゜´∀`)彡 wktk!wktk!
(0゜∪⊂彡 +
と__)__) +
6:特定班
ふぅ、ようやく書き込めるぜ
Σd(≧∀≦*)
7:名無しの冒険者
とりま、楽しみなのはわかるが
落ち着けよ、おまいら
ガスッ
[二二ミ グシャッ
∥ ヾ ゲシッ
∩∧∧ヾ_
|| ゜∀)| | ゴショッ
/⌒二⊃=| |
( ノ %∴∵⊂⌒ヽ
) )) ) ̄ ̄(0_ )
\)) (___) (_(
8:名無しの冒険者
>>7
( ´∀`)オマエモナー
9:名無しの冒険者
報告
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
前日、学園内でドラゴンに続き魔族まで出たということで、また学園は休みになった。
さすがに授業に遅れが出始めているので、明日から時間割が遅れを取り戻すために一部変更されて行われるとのことだ。
「行かなきゃだよなぁ」
自室のベッドでゴロゴロしながらユートは呟いた。
昨夜のルドルフとのやりとりが蘇る。
***
元々、ユートはその育ちからトラブルに対して割と冷静にそつ無くこなすことができる。
ルドルフの問いかけに、むしろ訓練施設時代に受けた教育を思い出して、気づけばスラスラと受け答えしている自分がいて驚いた。
「なんだ、そんなことか簡単な話だよ。
怪我をしなかったんだ。
怪我をしなかった理由は言えない」
ルドルフはエディの護衛である。
同時にこの王立魔法学園の生徒だ。
けっして馬鹿ではない。
だから、この言い方だけで納得、いや察してくれるはずだ。
ユートが現在、【言えない】ことと言うのは彼らが【黒衣の人】あるいは【ファントム】と呼ぶ人物に関してだ。
つまりこの場合は、【怪我をしなかった理由は黒衣の人に助けられたからだ】と言ってるようなものだ。
「運が、良かったんだ。
俺は、運良く助かって寮に逃げ帰った。
それだけだよ」
ダメ押しでそう言っておく。
普通の人間ならここから、【黒衣の人】が怪我人を魔法で治してくれた、と考えるだろう。
そもそも、だ。
伝説の聖女か、現代なら神殿に仕える大神官か教皇並の実力がなければできないことをやってのけている。
そう、たとえば【蘇生】とか。
何十年と修行と研鑽を続けた者にしか起こせなない奇跡。
それが魔法を使っての、【蘇生】である。
それをやってのける実力が、ユートにあるとは到底考えられない。
ルドルフは敢えて情報を絞っている。
【蘇生】が使用されたことを出していないのが、その証拠だ。
彼はエディの護衛だ。
常に付き従っている。
ならば、生徒の証言で、
『死んだと思ったら助かってました』
等という言葉も聞いているはずである。
「まぁ、そういう捉え方もできるでしょう」
ルドルフは、肯定しつつさらに続ける。
「では何故、こんな時間に携帯を探しに来たのですか?
君は、夕刻に一度戻ってますよね?
ここに」
「さっきも言ったけど。
携帯を落としたことに気づいて、慌ててと戻ったけれど、立ち入り禁止のテープが貼られてて中に入れず諦めたんだ」
しかし、ここでルドルフがニィっと笑った。
まるで、獲物が罠に掛かったのを見て悦ぶ捕食者のようだ。
ユートは背筋が寒くなった。
自分がなにかミスったことに気づいたのだ。
「へぇ?
そういえば、君がここに戻ってきたのは何時何分頃だったか知ってますか?」
「へ?」
「君、確か寮生でしたよね?
学園内の防犯カメラを確認しました。
16時に授業が終わり、君が教室から寮に戻ったのが16時10分過ぎ。
そこから、君は何かしらの理由があり寮を出てここに来た。
そして、今回の事件に巻き込まれた。
ここまではいいですね?
でもね?
変なんですよ、君の証言。
防犯カメラの映像だと、君は寮から出ていないことになっているんです。
防犯カメラは、寮の入口、寮のなかの通路、裏口に設置してあります。
そのどこにも、君が寮を出ていく姿は映っていませんでした」
ここまで言われ、ようやくユートはハットした。
(映ってるわけねーだろ、ド畜生!!)
そう、部屋から転移魔法を使ったのだから防犯カメラに映るわけはないのだ。
しかし、ユートの心は踊っていた。
楽しいのだ。
このやりとりが。
「さて、君はどこから出てここに来たんでしょう??」
「そ、それは」
ダメ押しとばかりに、ルドルフはさらに続ける。
ユートはゾクゾクとした緊張感を覚える。
まだ、魔眼保持者であるということはバレていない。
それは確信できる。
では、黒衣の人であるということがバレたのか?
まだ、わからない。
しかし、
「そうそう、ドラゴン墜落から魔族が突如現れたのが、16時34分。
そして魔族の出現が16時38分。
魔族と黒衣の人物の交戦が始まったのがその直後、記録上は16時40分。
全てが終わるまで約15分。
16時55分には全てが終わっていたということになります。
この付近にいた生徒達からの証言をもとに推測すると、生徒達が怪我を負う、さらに怪我の回復、治癒が行われたわけですが。
この全てが、戦闘が終わる直前に起こったことになります。
さて、君が寮で携帯の紛失に気づいてここに来たのが17時15分頃。
変ですねぇ、ここから寮まで片道20分はかかるんですよ?
つまり、往復40分かかるということになります。
君の言葉が確かなら、君は16時55分前後にここから寮に逃げ帰り、そして携帯端末の紛失に気づき、戻ってきた、ということですが。
どうして片道分の時間しか経過してないんでしょうね?」
ユートは沈黙するしか無かった。
「まぁ、今日はもう遅いですし。
詳しい話は明日、我が主人にしていただこうかな、と」
ルドルフはそう言って、ポケットから何かを取り出した。
それは、
「俺の携帯!!」
思わず手を伸ばして、取り返そうとする。
しかし、理性が働いた。
ここで、落ちこぼれ生徒が公爵家の子息に仕えている護衛から物を奪ったとなるのは、不自然だ。
そんな理性が働いて、取り返そうと伸ばした手は途中で止まった。
向こうも、渡す気は最初から無かったようでヒョイっと躱す形になった。
「あぁ、これ君のでしたか。
イーリス様から、君の持っていた物と同じ機種だとうかがっていたので」
なんて、飄々と言ってのけた。
「まぁ、とりあえず明日の午前九時。
生徒会室に来てください。
我が主人、そして生徒会役員の方々も話を聞きたいそうなので」
***
(携帯があったら、スレ民に報告するんだけどなぁ)
そして実況するのに、とユートは内心号泣していた。
こんな面白いこと、いいネタになる。
しかし、その携帯端末が無いのだ。
その携帯端末は、現在、生徒会の手中にある。
とにかく、取り返したら報告スレを建てようとユートは決意した。
取り返すためには、生徒会室に行かなくてはならない。
身支度をととのえ、ユートは寮を出た。
言われた通りの時間より少し早く、ユートは生徒会室にたどり着いた。
生徒会室前には、何故かイーリスが立っていた。
イーリスは、憔悴しきっていた。
「ユート……」
「おはよ、イーリス様」
ユートはいつも通りの眠そうな顔を、彼女に向ける。
彼女は、ユートを見て今にも泣きそうになった。
あまりにも、ユートはいつも通りだったから。
「イーリス様も呼び出し?」
「……まぁ、ね」
イーリスは歯切れ悪く、でも話をしたいのかぽつりぽつりと語り出した。
「昨日のこと、どれくらい聞いてる?」
「んー、まぁ、普通程度には」
防犯カメラの映像から彼女が親しくしていた女子生徒が魔族へ姿を変える場面がまるっと映っていた。
そして、その変身する場面に居合わせた生徒もいた。
それらの情報はあっという間に学園内に拡散した。
昨日の今日で、学園からはまだ正式な説明は行われていない。
けれど、傍から見ればイーリスも魔族側に与しているのではないか、という疑念を抱かれかねない。
それだけのスキャンダルが起こったのだ。
【親しくしていた女子生徒が魔族に姿をかえた】という事実。
そして、その女子生徒が退治されたという現実。
さらに、イーリスはそんな魔族を取り巻きにしていたという日々。
それらが、彼女にのしかかり、憔悴させていたのだ。
「それでも、ユートはこうして話してくれるんだね」
おそらく、何かしら他の生徒からアクションがあったのだろう。
イーリスは、いつも通りのユートに泣きそうになるのをグッとこらえる。
「それを言うなら、イーリス様だって毎日俺に普通に話しかけてきてくれてるじゃん」
ユートはやっぱり、いつも通りのユートだ。
「……ユートは、優しいね」
イーリスの言葉に、ユート和まそうとおどけてみせた。
「え、今更きづいたの?
俺、めちゃくちゃ好青年でしょ??」
「ふふっ、うん、知ってるよ」
イーリスがユートに微笑んだ。
少しぎこちない笑みではあったけれど。
それでも、彼女は彼に微笑んだ。
「ねぇ、ユート」
「ん?」
イーリスがさらに言葉を続けようとした時。
生徒会室の扉が開いた。
現れたのは、眼鏡を掛けた女子生徒だった。
ユートは初めて見る顔だ。
ポソッと、イーリスが説明してくれた。
「書記の子だよ」
「へぇ」
そんな二人を書記はじろり、と見やる。
イーリスには、冷たい蔑んだ視線を。
ユートには、潰れたカエルでも見るような目を向けてきた。
(まぁ、これが普通の反応だよなぁ)
イーリスへの視線は、おそらく昨日の出来事から来てるのだろう。
しかし、ユートへのそれはこの学園の生徒なら、ごくごく普通の反応だった。
「イーリス様とユートですね?
どうぞ」
冷たい声だ。
書記に促されるまま、二人は生徒会室へ足を踏み入れた。
生徒会室の中では口の形に長椅子が並べられ、椅子も等間隔に置かれていた。
促されるまま、指定された場所へユートとイーリスは腰を下ろした。
生徒会役員の真正面になる。
風紀委員の面々は、左右それぞれの席についている。
そして、生徒会役員と風紀委員による尋問が始まった。
生徒会役員のメンツの中にユートは、エディとルドルフの姿を見つける。
すぐに、
「とりま、来たんで携帯返して」
と、ルドルフに訴えた。
しかし、
「おいおい、活きがいいやつだな?」
ルドルフが何か言う前に、風紀委員の一人がそう言ってくる。
「たしかに」
その言葉を受けて、なにが面白いのか生徒会長がクスクスと笑った。
ユートも生徒会長の顔は知っていた。
金髪碧眼。気の強そうな雰囲気の少女である。
ヴィリストニア侯爵家の令嬢で現在二年生。
アイリ・ウォン・ヴィリストニアという名前だ。
イーリスへの尋問は形式的なものだった。
魔族女子との関係。
彼女が魔族に姿を変えられることを知っていたのか?
それらを問われ、イーリスはそつなく答えた。
しかし、それは形式的なものであり、いわば前座だった。
生徒会役員と風紀委員の関心は、ユートにあった。
ユートは、生徒会役員と風紀委員からの尋問に答えていく。
そして、最終的に生徒会長からこう問われた。
「それじゃなにか?
君は、回復、治癒、蘇生、再生の魔法が使える上、転移魔法まで使えると??」
「そうですよ?」
携帯が返却された時のネタ作りとして、あえてユートはこの尋問に慇懃無礼に答えていた。
見たところ、風紀委員は血の気の多そうな人物が揃っている。
これで、彼らがユートの無礼さに殴りかかって来てくれれば、面白いのだが。
そんなことを考えていると、ユートの横目に風紀委員の一人が動くのが見えた。
(お膳立てしてやるか)
ユートはおもむろに立ち上がり、
「もう話すことは全部話しました。
携帯返してくださ」
そんなことを言いつつ、ルドルフのところへ行こうとして、ぶん殴られた。
床を転がったところを鳩尾に蹴りを入れられる。
「がはっ!」
「ユート!?
やめてください!!」
イーリスが立ち上がって、ユートを蹴りつけている風紀委員を止めようとする。
しかし、止まらない。
さすがに、エディも止めに入ろうとする。
しかし、ルドルフが行かせないよう主人の腕を掴む。
駆け寄ろうとするイーリスを、別の風紀委員が止める。
ある程度のところで、生徒会長が手を挙げ、風紀委員へ静止するよう指示を出した。
そこでようやく、ユートへの暴力が止まる。
「では、証明してみてくれ。
それとも、意識がないか??」
風紀委員がユートから離れ、イーリスが駆け寄る。
「ユート、うそ、いや、ねぇ、ユート?!」
しん、と生徒会室が静まり返る。
なんだ口だけか、と言わんばかりだ。
そんな生徒会長に、ユートは返した
「返事がない、ただの屍のようだ」
「へ?」
その声に、イーリスが間の抜けた声を出す。
そしてユートはムクリと起き上がると、ポンポンと服を叩いて軽く汚れを落とす。
その顔のどこにも殴られた傷はなかった。
さらに、
「出血大サービス」
何て言って、制服を捲し上げて蹴られた腹をみせた。
やはり、どこにも殴られた形跡がない。
そして、ツカツカとルドルフの前に来て、
「もういいだろ? 携帯返せ」
そう宣ったのだった。
■■■
【報告】ガチで身バレするかと思ったwww【スレ】
1:魔眼保持者
聞いてー聞いてー
つーか、褒めてー
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
2:名無しの冒険者
今だ!2ゲットォォォォ!!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∩ ∩
~| ∪ | (´´
ヘノ ノ (´⌒(´
((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
∧∧ (´;;
(゜Д゜ ,)⌒ヽ (´⌒(´
U‐U^(,,⊃'~... (´⌒(´⌒;;
ポ ∧∧ ポ
ン (゜Д゜ ,) . ン
(´;) U,U )~ (;;).
(´)~(⌒;;UU (´ )...~⌒(`)
3:名無しの冒険者
来たか、魔眼保持者
4:名無しの冒険者
丸一日経過してるからなぁ
5:考察厨兼迷探偵
はてさて、どんな報告が聞けるやら
+ +
∧_∧ ∩ +
(0゜´∀`)彡 wktk!wktk!
(0゜∪⊂彡 +
と__)__) +
6:特定班
ふぅ、ようやく書き込めるぜ
Σd(≧∀≦*)
7:名無しの冒険者
とりま、楽しみなのはわかるが
落ち着けよ、おまいら
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[二二ミ グシャッ
∥ ヾ ゲシッ
∩∧∧ヾ_
|| ゜∀)| | ゴショッ
/⌒二⊃=| |
( ノ %∴∵⊂⌒ヽ
) )) ) ̄ ̄(0_ )
\)) (___) (_(
8:名無しの冒険者
>>7
( ´∀`)オマエモナー
9:名無しの冒険者
報告
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
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ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
島流しなう!(o´・ω-)b
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色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
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無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
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初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
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