3 / 45
【死の谷】探索開始なう!【着いた(*・ω・*)wkwk】
1
しおりを挟む ローズは冨岡と時間を過ごしたいと願いながらも、冨岡が目標に向かって行動していることを悟り、最大限の遠慮を見せたのだ。
それがお茶をしている数分間だけ、時間をもらうというもの。まさか彼女が我儘な令嬢などと言われていたなんて思えない。いや、元々他人に気を配ることの出来る子だったのだろう。
それでも両親に構ってもらいたい、という想いがローズを我儘な令嬢へと変貌させていた。
素直だが素直ではなく、思慮深さゆえに直情的な子なのである。
冨岡はそんなローズに対し、まるで姪っ子でもできたかのように思い、微笑んだ。
「ははっ、それじゃあ俺が持ってきたお茶を淹れますので、一杯だけお付き合いください。いいですか、ローズ」
冨岡が言うとローズは、嬉しそうに表情を緩ませてから、それを察されないように唇を尖らせる。
「し、仕方ないわね、トミーは。この国の未来を担う公爵令嬢の時間は安くないのよ。せっかくなら楽しませてもらえるかしら」
どこか演技がかったローズの口調に合わせて、冨岡はわざとらしく胸に手を当てて頭を下げた。
「仰せのままに」
そのまま冨岡は自分の持ってきた紅茶を淹れようと、ダルクに目線を向ける。しかしいつの間にか、ダルクは湯を用意し、紅茶を淹れていた。その手際は、紅茶好きと自称する富岡ですら舌を巻くほどであり、口を出す余地などなかった。
用意された紅茶に口を付けながら、ローズはスキップをするような声で冨岡に話しかける。
「ところでトミー。聞きたいことがあるのだけれど」
「何ですか?」
「その、庶民の方々は恋愛の末に婚姻の契りを結ぶのよね?」
「お見合いとかもありますけど、恋愛結婚も多いでしょうね。少なくとも俺の国ではほとんどそうでした」
そう答えてから冨岡は、ローズの言葉を深く読み解いた。わざわざ『庶民は』と言うくらいなのだから、貴族は違うのだろう。おおよそ想像はしていたが、やはり貴族は家のために結婚するものらしい。
そしてそれはローズも同じだ。公爵家令嬢ともなれば、それなりに位の高い貴族と婚姻を結ぶことになる。
だとしたら、今の答えは考えが足りなさすぎた。一瞬で反省し、ダルクに目を向ける冨岡だが、令嬢に対して過保護である執事は穏やかな表情で立っている。
問題なかったのだろうか、と考えながら冨岡はローズに視線を戻した。すると彼女は、少し考えてから幾つか段階を飛ばした言葉を放つ。
「トミーは男妾になるつもりはない?」
「ブフッ」
まさか幼いローズの口からそんな言葉を聞くとは思っておらず、冨岡は紅茶を吐き出してしまった。
自分の口を拭いながら、恐る恐る問いかける。
「な、何を言ってるんですか、ローズ。お、男め・・・・・・いやいや、そんな言葉どこで学ぶんですか」
「あら、知らないの? 私の趣味は読書なのよ? 最近、暇を持て余したご婦人の中で流行っている小説があるの。熱烈な恋の物語よ。家のための婚姻を定められた令嬢と、立場を持たない庶民の男。二人は秘密の恋をするの」
それがお茶をしている数分間だけ、時間をもらうというもの。まさか彼女が我儘な令嬢などと言われていたなんて思えない。いや、元々他人に気を配ることの出来る子だったのだろう。
それでも両親に構ってもらいたい、という想いがローズを我儘な令嬢へと変貌させていた。
素直だが素直ではなく、思慮深さゆえに直情的な子なのである。
冨岡はそんなローズに対し、まるで姪っ子でもできたかのように思い、微笑んだ。
「ははっ、それじゃあ俺が持ってきたお茶を淹れますので、一杯だけお付き合いください。いいですか、ローズ」
冨岡が言うとローズは、嬉しそうに表情を緩ませてから、それを察されないように唇を尖らせる。
「し、仕方ないわね、トミーは。この国の未来を担う公爵令嬢の時間は安くないのよ。せっかくなら楽しませてもらえるかしら」
どこか演技がかったローズの口調に合わせて、冨岡はわざとらしく胸に手を当てて頭を下げた。
「仰せのままに」
そのまま冨岡は自分の持ってきた紅茶を淹れようと、ダルクに目線を向ける。しかしいつの間にか、ダルクは湯を用意し、紅茶を淹れていた。その手際は、紅茶好きと自称する富岡ですら舌を巻くほどであり、口を出す余地などなかった。
用意された紅茶に口を付けながら、ローズはスキップをするような声で冨岡に話しかける。
「ところでトミー。聞きたいことがあるのだけれど」
「何ですか?」
「その、庶民の方々は恋愛の末に婚姻の契りを結ぶのよね?」
「お見合いとかもありますけど、恋愛結婚も多いでしょうね。少なくとも俺の国ではほとんどそうでした」
そう答えてから冨岡は、ローズの言葉を深く読み解いた。わざわざ『庶民は』と言うくらいなのだから、貴族は違うのだろう。おおよそ想像はしていたが、やはり貴族は家のために結婚するものらしい。
そしてそれはローズも同じだ。公爵家令嬢ともなれば、それなりに位の高い貴族と婚姻を結ぶことになる。
だとしたら、今の答えは考えが足りなさすぎた。一瞬で反省し、ダルクに目を向ける冨岡だが、令嬢に対して過保護である執事は穏やかな表情で立っている。
問題なかったのだろうか、と考えながら冨岡はローズに視線を戻した。すると彼女は、少し考えてから幾つか段階を飛ばした言葉を放つ。
「トミーは男妾になるつもりはない?」
「ブフッ」
まさか幼いローズの口からそんな言葉を聞くとは思っておらず、冨岡は紅茶を吐き出してしまった。
自分の口を拭いながら、恐る恐る問いかける。
「な、何を言ってるんですか、ローズ。お、男め・・・・・・いやいや、そんな言葉どこで学ぶんですか」
「あら、知らないの? 私の趣味は読書なのよ? 最近、暇を持て余したご婦人の中で流行っている小説があるの。熱烈な恋の物語よ。家のための婚姻を定められた令嬢と、立場を持たない庶民の男。二人は秘密の恋をするの」
10
お気に入りに追加
318
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

島流しなう!(o´・ω-)b
一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。

異種族ちゃんねる
kurobusi
ファンタジー
ありとあらゆる種族が混在する異世界 そんな世界にやっとのことで定められた法律
【異種族交流法】
この法に守られたり振り回されたりする異種族さん達が
少し変わった形で仲間と愚痴を言い合ったり駄弁ったり自慢話を押し付け合ったり
そんな場面を切り取った作品です

【なんか】裏山で年代物の宇宙船めっけた件【マスターにされた】
一樹
SF
諸事情でとある惑星にある実家にて一人暮らしをしている少年。
ある日、彼は実家近くの裏山で伝説級の宇宙船をみつけてしまい、勝手にその宇宙船のマスターにされてしまう。
それが、地獄のハジマリとも知らずに……。
2023/1/15
話の順番等ミスをしていたので、1度削除して投稿し直しました。
よろしくお願いします。

【しかも】襲われたところを、ヤンキーに助けてもらった件【暴走族の総長だった】
一樹
恋愛
暴走族の総長に助けてもらった女の子が、彼とお近付きになる話です。
暴走族総長×お嬢様の恋愛モノです。
※基本掲示板だけの話となります。
古いネタが多いです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる