七番目の魔王の息子

一樹

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要らない子ネグレクト扱いの割に、実家は僕の人生によく口を出してきた。

跡継ぎ云々を除けば、今通っている高校を指定してきたのも実家だった。

やりたいことも、将来の夢も無かった僕は、嫌々ながらもその高校に通うのことに決めた。

恐らくだけれど、予備としての予算が僕には出ていたのだろう。

養育費だったり、学校に通うためのお金だったり。

飼われている、と薄々気づいてはいた。

けれど、ちっぽけなプライドで実家に勝てるわけもなく。

そして、生活が落ちぶれこそすれ、豊かになるわけはないと、何となくわかっていた。

本当は、金なんて受け取りたくなかった。

義父母にも断ってくれ、と言えれば良かった。

でも、そのお金を母さんは少しずつ節約して積み立ててくれた。

「お金は大事だからね」

なんて言って、コツコツと積み立ててくれた。

言えなかった。

父さんも、

「大学行ったら、一人暮らしするだろ?
金は大事だ。その時に使いなさい」

なんて言った。

なにも言えなかった。

僕なんかの将来のためより、二人に使って欲しかった。

今まで育ててくれたのだから。

二人は、なにも言わなかったけれど。

もしかしたら、その分のお金を貰っていたのかもしれない。

でも、あの二人は人がいいから。

あまり手をつけず、積み立ててそうだ。

僕は、隣を歩く少女を見た。

今日、転校してきた美少女、ヴィーだ。

お互い黙ったまま、歩く。

これから帰って、義父母に紹介しなければならない。

話は行っているという事だけれど。

というよりも、明日からの学校が憂鬱だった。

実家から指定され、通っている高校。

【王立魔法学院】という、エリート高。

将来は魔法省とか、そういうお役所の官僚候補たちが通う学校だ。

エスカレーター式で、初等部から始まり、大学まで行ける。

小学校、中学校は特に指定が無かったから適当な所に通っていた。

けれど、何故か高校からここに行けと言われたのだ。

初めから人間関係が出来上がっている場所に放り込まれた。

イジメは無かった。

でも、浮いた。

共通の話題がない。

そもそも、所属している層が違う。

こちら中流家庭、ほかは全て上流家庭の出だ。

話が合うはずがない。

図書室にも、僕が好きな大衆娯楽小説はあまり置いてない。

ハードカバーの、小難しい小説ならあった。

あとは、とても難しい資料や専門書ばかりだ。

クラスメイト達は、皆キラキラしている者達ばかりだ。

ついこの前あった、大型連休の時は外国のどこそこに旅行にいったとか、そういうことを話していた。

うちは中流家庭で、外国になんて行ったことがない。

五歳までの記憶でも、兄や姉達や弟妹達は両親と避暑地に行っていたが、僕は離宮で侍女と一緒に遊んだ記憶しか無かった。

それを辛いと思ったことは1度も無かった。

でも、いま思い返してみると、奇妙だなと感じた。

僕だけがネグレクトを受けていた気がする。

まぁ、どうでもいいけど。

それよりも、明日以降の学校が憂鬱だ。

憂鬱で仕方ない。

成績は下の下。

イジメは無いけれど、落ちこぼれ扱いの僕に許嫁がいたと発覚したわけだ。

今日だって、チラチラとクラスメイト達がバツが悪そうにこちらを見ていた。

その理由は落ちこぼれに許嫁がいたこともそうだけれど。

その相手が、あまりにも不釣り合い過ぎた。

ヴィーは、知らぬ者はいない【ドレッドノート家】の人間だった。
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