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幕間 情報拡散

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EEO夏季限定イベント【暗黒大陸探索】。
EEOのサービスが開始した10年前から、毎年欠かすこと無く行われてきたイベントである。
イベント内容は、この時期にだけ解放される暗黒大陸と呼ばれるフィールドへ赴き、【幻の都】を見つけること。
その過程で入手できる【白い石】を集めること。 
【白い石】は、【暗黒大陸】内のあちこちに落ちていたり、モンスターが持っている。
つまり、フィールド内を歩き回ってあちこち調べたり、モンスターを倒したらドロップするのでそれを手に入れるのだ。
この【白い石】は、決められた個数を集めるとアイテムに交換出来る。

EEOにしては、珍しく【優しいイベント】内容だと言われている。
しかし、細々とこういった【優しいイベント】は開催されていた。
あまり話題にならないだけである。
こういったイベントで手に入れられるアイテムには、ネタ装備からレア装備、普通に使用頻度の高い回復系アイテムがある。
低レベルでお金のない、なんならこういったゲームに初めて触れるプレイヤー向けのイベントであった。
そのため、参加者は初心者もしくは淡々と脳死周回が好きなプレイヤーが多かったりする。

あちこちで、

「あ、あったー!!」

「よっしゃ、これでポーション百個手に入る!!」

「【セイレーンの笛】狙いなんだー♪
どうしても欲しくてさ」

「あたしは、ドラグーンシリーズの大盾狙い、【龍王鱗の大盾】ね。
めっちゃ硬くて、でもデザインがカッコよくてさ」

「何に交換しようかなぁ」

そんな無邪気な声が上がっていた。
PKもないので、デスペナルティもほぼ気にせず参加できるのも利点だろう。

中にはそんな様子を配信する者もいた。
視聴者は三人。
有名でもなければ、攻略ガチ勢でもなんでもないただの無名配信プレイヤーである。

「結構集まりましたー」

のんびりとそのプレイヤーは、集めた白い石を見せた。

「じゃあ、ここから雑談タイムにしようかなぁ。
そうそう、この動画を見てくれてる人たちはEEOのプレイヤーさんもいるのかな?」

配信者がそんな問を口にすると、一人がコメントを書き込んだ。

《遊んでます( ゜A゜ )/》

書き込まれたコメントは、動画上に現れ流れていく。

「お、そっかそっか!
このイベントには参加してるのかな?」

《してます(*^^*)》

《自分も、参加してます》


《のんびり参加中》

一人がコメントを書き込んだからか、ほかの二人もコメントを書き込み始めた。
配信者は嬉しくなって、声が弾んでくる。

「そっかー、皆遊んでるんだねー。
さすが人気ゲームだ」

《ジウさんは、幻の都はさがさないんですか?》

ジウというのは、この配信プレイヤーの名前である。

「んー、毎年探してはいるんだけどねー。
見つけられないんだー」

《途中で、手がかり消えますしね》

「そうそう、あ、でも、」

とあるコメントに頷く。
それからまたなにか言葉を続けようとしたところで、また別の視聴者からコメントが書き込まれ、流れていく。
言葉は続くことは無かった。

《トッププレイヤー達や考察厨プレイヤー達もみつけられてないですもんね》

「そうそう、そうなんだよね。
自分はまだこのゲーム初めて三年だけど。
そのずっと前、サービス開始の頃から誰もみつけられていないんだよね」

《噂じゃ、公式、つまり運営が盛大な嘘をついてるって言われてるけど》

「んー、それは無いかなぁ。
嘘をつく理由が無いもん。
クエスト内容がほかのクエストに比べて、まぁ、ものすごく地味だし。
参加プレイヤーを増やしたいなら、ほかのクエストと同じようにPKを許可するとか、交換アイテムにガチャ券百枚をつけるとかすればいいのに、それをしてないし」

《企画段階で、このイベントは元々PKがなかったといわれてます》

「え、そうなの?」

《そうなんだ》

《企画段階の時は、変な話、今の形の企画だった??》

初めて聞く話に、ジウもほかの視聴者も驚く。

《EEOの生みの親であり、このイベントの制作総指揮をとっていたdogwood氏が早逝したため、企画内容が変わったと言われています》

《dogwood氏は、サービス開始前のインタビューで》

《自分みたいなゲームの苦手な人や、甥っ子達のような小さな子たち、そしてその子たちの親が一緒に遊んで楽しめるようなゲームを目指しましたって答えてます》

《でも、PKがあるのは……矛盾してない?》

《だから、このゲームには企画段階の時にはPKはなかったと言われてるんです。
でも、一緒にゲームを作った仲間から絶対入れた方がいい、いろんな人が楽しめるゲームなら、PK好きな人も楽しめるようにした方がいいと提案されたらしくて》

《なるほど、それでPKやPvPがあるわけね》

《真相は分かりません。
でも、dogwood氏は子供が楽しめるようにクエスト内容を考えていたのは事実です。
一部のクエストはご存知のようにおとぎ話や昔話がベースになっています。
このような元ネタがあるクエストのストーリーは、全てdogwood氏が担当していたらしいです。
おとぎ話や昔話は小さな子は、どこかしらで見聞きしているものですから。
dogwood氏が亡くなった後は、ゲーム制作仲間の1人がその仕事を引き継いで、今の形になったとか。
でも、このイベントクエストに関しては、開始されてすぐ、クレームが入ってPKやPvPが出来ないように調整したとか。
dogwood氏の考えた形に戻した、といった方がいいのかもしれません》

「へぇ、そうなんだぁ。
でも、その割にはなんて言うか古典ミステリとか、結構マニアックな内容のパロディもあったけど」

《……えと、たぶんdogwood氏の趣味かなと》

「つまり、自分の好きな話をぶちこんだわけですね。
あれ、でもそうなると……」

ジウはとあることに気づいた。

「このクエストにも元ネタがあるってこと?」

《そうですね》

《何年か前に、考察厨連中が【フォーセット探検記】をベースにしてるっぽいって突き止めた》

「へぇ、そうなんだ」

《それってノンフィクションじゃなかったか?》

《映画【インディ・ジョーンズ】の主役のモデルになったとされてるやつだろ。
小説版だったかの方だと、そのフォーセットとインディが出会う話があるらしい》

《でも、ベース、下敷きにしてるのは確実なのに誰も【幻の都】をみつけられていないのが現状だけど》

「え、あれ??
もしかして、視聴者さん達噂知らない??」

《ん?》

《おん??》

《噂??》

「なんか、【幻の都】への行き方、というかフラグの立てた方が見つかったらしくて」

《え?!》

《うそ!!??》

《ホントですか?!》

「フレンドから配信前に連絡があったんですよ。
だから、配信終えたらその噂を調べてクエストを進めて見ようと考えてるんです。
あ、時間も丁度よさそうだし。
今回はこの辺でおわりますね。
それでは視聴ありがとうございました!」

《こちらこそ、情報提供感謝です!!》

《早速、その噂を調べてクエスト遊んでみます!》

《配信お疲れ様でしたー(*´∀`)ノシ》
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