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16歳の異世界転移
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その日の深夜。
ウィルは、元々空き部屋であり、今日からアキラの部屋となった扉の前に来た。
アキラは寝ているはずだ。
だからこそ、今確認しておかなければならない。
ノックもなにもなく、ウィルは部屋の扉を開けた。
家具も何も無い、殺風景な部屋。
その中心で、布団を敷き眠っているアキラを見る。
そして、話しかけた。
「おい、いるんだろ??
出てきたらどうだ、化け物」
ウィルの言葉に答えるかのように、カッとアキラの瞼が開く。
「ククク。
おい、俺を知ってるのか?
天使風情が、俺を知ってるのか??」
起き上がりながら、アキラの中にいる存在。
実質、アキラを延命させている存在――魔神が彼の口を借りて、そんなことを言ってくる。
「お前、何者だ??」
ニヤニヤと、ウィルを品定めするかのように見てくる。
「記憶を読めるだろう?
勝手に読め、化け物。
それで理解しろ。
その上で、聞きたいことがある」
ウィルの言葉に、ニヤニヤはそのままに魔神は彼の記憶を読んだ。
そして、一瞬でウィルが何者なのかを理解する。
笑みが深くなる。
「は、ははは!!
こいつぁ、おもしろい!!
お前、逆行者か!!
この世界を何度もループしてるな?!」
「言い方なんてどうでもいい。
聞きたいことがある」
「あぁ、いいぜ?
面白いことは好きだ。
なんでも答えてやるよ」
「なんで、今、こちらに来た?」
「はぁ?」
「お前が、いいや、アキラがこっちに来るのは三年後。
19歳の時だ。
それも、役所職員が彼を迎えに行くという流れでこっちに来るはずなんだ。
それは、どの世界でも変わらなかった。
なのに、何故いまここに居る?
誰がお前たちをこっちに来させた?
誰に導かれた?!」
「知るかよ。
気づいたら、こっちにいた。
この甥っ子の記憶を読む限り、わかるのはそれだけだ」
「アキラの父親、お前の弟が関与してるんじゃないのか?!」
「さてね、俺を甥っ子に入れて流れるはずだった命を繋ぎとめたのは、たしかにこいつの父親で俺の弟だ。
ま、代償で狂気に飲まれこいつを殺し続けることになったのは皮肉としか言えないけどな」
「なら上位存在――女神か?」
「だから知らないって言ってるだろ。
でも、甥っ子を殺しに狼が出てきたタイミングは良かったな。
まるで図ったみたいだ」
「狼?」
魔神は、こちらに来た時のことを説明した。
ウィルが顔をしかめる。
魔神は続けた。
「エド達がけしかけたんじゃないのか?」
「エド?
あぁ、あの小生意気な小童のことか。
違うな。
そんなことする理由がない。
自分たちでやればいいからな」
「じゃあ、一体誰が……」
「やけに、甥っ子に執心だな。
あぁ、なるほど、お前ほかの時間軸でコイツと家族だったのか。
それも、あははは、子供まで作ったと。
こりゃ傑作だ!!
その未来の家族を捨ててでも、こいつを人にしておきたいのか!
お前も大概狂ってるな!!」
「うるさい」
「あぁ、いいねぇいいねぇ。
その狂気、嫌いじゃねーよ」
「僕は狂ってなんかいない!!」
「どうだか。
愛は人を狂わせるからな。
狂わせて狂わせて、そして壊すんだ。
壊れた甥っ子と狂人のお前。
中々お似合いじゃねーの。
いいぜ?
お前の狂気は中々美味い。
だから、協力してやってもいいぞ?
この、お前が愛してやまない甥っ子を人として人生を過ごせるように。
それが、お前の考える救いなんだろ?」
魔神の言葉を受けて、ウィルは彼を睨んだ。
「だが、はたして俺がこうして中にいる時点で、こいつは【人間】と言えるのかね?」
「アキラは、人間だ」
「死んでも蘇る。
何度も父母に殺されて、蘇ってきた。
普通の人間じゃない」
「それでも、アキラは人間だ。
人間、なんだ」
「まぁ、たしかに今のままなら老いて衰えることが出来るだろうな。
死んでも蘇ることさえ除けば。
人間だろうな」
「…………」
「話はそれだけか?」
「僕に」
「うん?」
「僕にアキラを殺させないでくれ」
「……それは、別の時間軸、別の世界の話だろ」
魔神は話は終わりだ、と布団に潜り込んだ。
それを、苦々しい顔つきでウィルは見つめるのだった。
聞こえてくるのは、アキラの穏やかな寝息である。
息を吐いて、ウィルは部屋を出た。
自室に戻り、高ぶった感情を落ち着かせるためにゲームを始めた。
ゲームをしていれば、何も考えなくていい。
余計なことを考えなくていいから、楽だ。
ウィルは、元々空き部屋であり、今日からアキラの部屋となった扉の前に来た。
アキラは寝ているはずだ。
だからこそ、今確認しておかなければならない。
ノックもなにもなく、ウィルは部屋の扉を開けた。
家具も何も無い、殺風景な部屋。
その中心で、布団を敷き眠っているアキラを見る。
そして、話しかけた。
「おい、いるんだろ??
出てきたらどうだ、化け物」
ウィルの言葉に答えるかのように、カッとアキラの瞼が開く。
「ククク。
おい、俺を知ってるのか?
天使風情が、俺を知ってるのか??」
起き上がりながら、アキラの中にいる存在。
実質、アキラを延命させている存在――魔神が彼の口を借りて、そんなことを言ってくる。
「お前、何者だ??」
ニヤニヤと、ウィルを品定めするかのように見てくる。
「記憶を読めるだろう?
勝手に読め、化け物。
それで理解しろ。
その上で、聞きたいことがある」
ウィルの言葉に、ニヤニヤはそのままに魔神は彼の記憶を読んだ。
そして、一瞬でウィルが何者なのかを理解する。
笑みが深くなる。
「は、ははは!!
こいつぁ、おもしろい!!
お前、逆行者か!!
この世界を何度もループしてるな?!」
「言い方なんてどうでもいい。
聞きたいことがある」
「あぁ、いいぜ?
面白いことは好きだ。
なんでも答えてやるよ」
「なんで、今、こちらに来た?」
「はぁ?」
「お前が、いいや、アキラがこっちに来るのは三年後。
19歳の時だ。
それも、役所職員が彼を迎えに行くという流れでこっちに来るはずなんだ。
それは、どの世界でも変わらなかった。
なのに、何故いまここに居る?
誰がお前たちをこっちに来させた?
誰に導かれた?!」
「知るかよ。
気づいたら、こっちにいた。
この甥っ子の記憶を読む限り、わかるのはそれだけだ」
「アキラの父親、お前の弟が関与してるんじゃないのか?!」
「さてね、俺を甥っ子に入れて流れるはずだった命を繋ぎとめたのは、たしかにこいつの父親で俺の弟だ。
ま、代償で狂気に飲まれこいつを殺し続けることになったのは皮肉としか言えないけどな」
「なら上位存在――女神か?」
「だから知らないって言ってるだろ。
でも、甥っ子を殺しに狼が出てきたタイミングは良かったな。
まるで図ったみたいだ」
「狼?」
魔神は、こちらに来た時のことを説明した。
ウィルが顔をしかめる。
魔神は続けた。
「エド達がけしかけたんじゃないのか?」
「エド?
あぁ、あの小生意気な小童のことか。
違うな。
そんなことする理由がない。
自分たちでやればいいからな」
「じゃあ、一体誰が……」
「やけに、甥っ子に執心だな。
あぁ、なるほど、お前ほかの時間軸でコイツと家族だったのか。
それも、あははは、子供まで作ったと。
こりゃ傑作だ!!
その未来の家族を捨ててでも、こいつを人にしておきたいのか!
お前も大概狂ってるな!!」
「うるさい」
「あぁ、いいねぇいいねぇ。
その狂気、嫌いじゃねーよ」
「僕は狂ってなんかいない!!」
「どうだか。
愛は人を狂わせるからな。
狂わせて狂わせて、そして壊すんだ。
壊れた甥っ子と狂人のお前。
中々お似合いじゃねーの。
いいぜ?
お前の狂気は中々美味い。
だから、協力してやってもいいぞ?
この、お前が愛してやまない甥っ子を人として人生を過ごせるように。
それが、お前の考える救いなんだろ?」
魔神の言葉を受けて、ウィルは彼を睨んだ。
「だが、はたして俺がこうして中にいる時点で、こいつは【人間】と言えるのかね?」
「アキラは、人間だ」
「死んでも蘇る。
何度も父母に殺されて、蘇ってきた。
普通の人間じゃない」
「それでも、アキラは人間だ。
人間、なんだ」
「まぁ、たしかに今のままなら老いて衰えることが出来るだろうな。
死んでも蘇ることさえ除けば。
人間だろうな」
「…………」
「話はそれだけか?」
「僕に」
「うん?」
「僕にアキラを殺させないでくれ」
「……それは、別の時間軸、別の世界の話だろ」
魔神は話は終わりだ、と布団に潜り込んだ。
それを、苦々しい顔つきでウィルは見つめるのだった。
聞こえてくるのは、アキラの穏やかな寝息である。
息を吐いて、ウィルは部屋を出た。
自室に戻り、高ぶった感情を落ち着かせるためにゲームを始めた。
ゲームをしていれば、何も考えなくていい。
余計なことを考えなくていいから、楽だ。
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