113 / 142
スレ民はにはお見通し♡
裏話19 口喧嘩 後編
しおりを挟む
思い出されるのは、スレ民から教えられたこの1年間の事実。
ヤマトが死にかけ続けた、記録。
俺の言葉に、ヤマトの目が見開かれる。
しかし、すぐに伏せられた。
そして、返ってきたのは、
「……か?」
「あ??」
「言いたいことはそれだけかって、聞いてんだよ!!
このお節介野郎!!」
そんな怒声と拳だった。
え、お前がそれ言っちゃうの??
自分のこと棚上げにして、それ言うかぁ。そうかぁ。
殴り飛ばされる。
こんの野郎、怪我人だとおもって下出に出てりゃつけ上がりやがって。
口の端が切れた。
いや、中もか。
血の味がする。
手の甲で口の端ヲを拭い、立ち上がる。
決めた。
泣かす。
ぜってぇ、こいつの事泣かす。
「お節介野郎?
俺が?
そりゃお前だろ、お節介の上に死に急ぎ野郎じゃねーか!!」
俺はヤマトに飛びかかった。
そして、殴り合い、怒鳴り合う。
「俺はいいんだよ!!」
「良くねーよ、どういう理屈だ!!」
「俺が自由に出来るの、それくらいしかねーんだよ!!
自分の体くらい、好きに使わせろ!!
命令すんじゃねーー!!!!」
寮母さんが間に入ろうと動いたのが見えた。
と、そこで、やけに明るい声が降ってきた。
互いに胸ぐらを掴みあって、同時に拳を叩きつけようとしていた俺たちの動きはピタリ、と止まった。
「やっ君、お久しぶり~。
シルフィのおばちゃんですよ~。
って、ええええ?!?!
どうゆう状況??
二人とも、喧嘩??
ちょ、ノーム!?
お目付け役でしょ、なにやってるの?!」
シルフィードだった。
シルフィードは虚空に向かって叫ぶ。
だけど、反応が無かった。
寮母さんも、前ぶれなくシルフィードが現れたために驚きを隠せないでいた。
それは、ヤマトも同じだった。
来ること、聞いてなかったんか、お前。
「あ、あら??
ノーム???
え、いないの??」
おかしいわねぇ、とシルフィードは呟く。
「おばちゃん、ちょっと後にしてくれない?
ブランとの話し合いが、まだ終わらないから」
ヤマトが俺の胸ぐらを掴んだまま、そして俺を睨みつけたまま言う。
俺も俺で、ヤマトの胸ぐらを掴んで、同じようにヤマトを睨み返しながら、
「すんません、少し時間もらいます。
話し合いの決着がまだなんで」
そう言った。
シルフィードはそれを聞いて、呆れたように聞いてくる。
「あのねぇ、君たちのは話し合いじゃなくて喧嘩でしょう??」
そこで、妙な威圧が向けられた。
威圧の主はシルフィードだった。
彼女は絶対零度の微笑みを浮かべ、ヤマトを見た。
「ヤマト、お友達は叩いちゃいけないっておばちゃん、教えなかったっけ??
どうだったっけ?」
あえてヤマトと呼んでいるところに凄みがあった。
俺は実家の母さんを思い出した。
「ヴっ」
ヤマトが変な声を出して、俺の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
あぁ、逆らえないのね、お前。
「はい、お友達の方も手を離して、ね??」
……うん、逆らえないな。
怖いもん、この笑顔。
声はとても優しいし、なんなら逆らったところでどうって事ないだろうと思う。
でも、ダメだ。
これ、逆らうとめちゃくちゃ怒られるやつだ。
うちの母さんと同じ笑顔だ。
「よしよし、いい子いい子。
二人とも、いい子いい子」
なんて言ってシルフィードは、ヤマトと俺の頭を撫でる。
けれど、バツが悪かったのかヤマトはその手を払い除ける。
そして、
「頭冷やしてくる」
なんて言って、談話室から出ていった。
それを寮母さんが追いかける。
その後姿を、ふよふよ浮かびながら見ていたシルフィードが、
「反抗期かしらねぇ」
なんて呟いた。
俺も段々頭が冷えてきた。
だからか、この【話し合い】でのやらかしに自己嫌悪に陥る。
ただ、事情が聞きたかっただけなのに。
どうして、あんな強硬手段を取ってしまったのか。
不意にポケットに手を突っ込むと、携帯に触れた。
そうだ、報告しないと。
混乱する頭で、俺は助言してくれた人達へ報告を書き込む。
なんとなく、怒られるのが嫌でアイツが勝手にキレた、と書いてしまった。
なに、やってんだろ、俺。
ふと、シルフィードを見た。
ダメ元でシルフィードにも聞いてみるか。
「あの」
俺はシルフィードに声をかけた。
「なぁに??」
「その、ヤマトの怪我ってどのくらい悪いんですか??」
「どのくらい??
んー、そぉねぇ……。
悪化したら、私たちでさえもう二度と会えなくなるくらい悪いわねぇ」
シルフィードは話せるのか??
なんで??
いや、それよりも言い方はマイルドなものの、その意味するところは理解出来た。
やっぱり。
シルフィードは、さらに続ける。
「だから、そうならない為に君とももうすぐバイバイしなきゃいけないのに。
喧嘩するなんて、あの子らしくないわね」
「……え??」
なんの、話だ?
「それって、どういう意味っすか??」
シルフィードがキョトンとしつつ、俺を見た。
その時だ、談話室から出ていったヤマト、アイツを追いかけた寮母さんの悲鳴が上がった。
シルフィードが顔色を変えて、そちらに向かう。
俺も手早くスレ民に現状を報告し、それに続いた。
ヤマトと寮母さんが居たのは、談話室を出てすぐの廊下だった。
そこにヤマトは倒れていた。
血を吐いて、傷が開いたのか腹からも血が服に滲んでいた。
その顔色は青白く、死者を思い出させた。
瞼は薄ら開かれているが、そこにはなにも映っていない。
そんなヤマトに寮母さんが必死に声を掛けている。
しかし、意識は無いようだった。
俺は、アイツの名前を叫んだ。
「ヤマト!!??」
ヤマトが死にかけ続けた、記録。
俺の言葉に、ヤマトの目が見開かれる。
しかし、すぐに伏せられた。
そして、返ってきたのは、
「……か?」
「あ??」
「言いたいことはそれだけかって、聞いてんだよ!!
このお節介野郎!!」
そんな怒声と拳だった。
え、お前がそれ言っちゃうの??
自分のこと棚上げにして、それ言うかぁ。そうかぁ。
殴り飛ばされる。
こんの野郎、怪我人だとおもって下出に出てりゃつけ上がりやがって。
口の端が切れた。
いや、中もか。
血の味がする。
手の甲で口の端ヲを拭い、立ち上がる。
決めた。
泣かす。
ぜってぇ、こいつの事泣かす。
「お節介野郎?
俺が?
そりゃお前だろ、お節介の上に死に急ぎ野郎じゃねーか!!」
俺はヤマトに飛びかかった。
そして、殴り合い、怒鳴り合う。
「俺はいいんだよ!!」
「良くねーよ、どういう理屈だ!!」
「俺が自由に出来るの、それくらいしかねーんだよ!!
自分の体くらい、好きに使わせろ!!
命令すんじゃねーー!!!!」
寮母さんが間に入ろうと動いたのが見えた。
と、そこで、やけに明るい声が降ってきた。
互いに胸ぐらを掴みあって、同時に拳を叩きつけようとしていた俺たちの動きはピタリ、と止まった。
「やっ君、お久しぶり~。
シルフィのおばちゃんですよ~。
って、ええええ?!?!
どうゆう状況??
二人とも、喧嘩??
ちょ、ノーム!?
お目付け役でしょ、なにやってるの?!」
シルフィードだった。
シルフィードは虚空に向かって叫ぶ。
だけど、反応が無かった。
寮母さんも、前ぶれなくシルフィードが現れたために驚きを隠せないでいた。
それは、ヤマトも同じだった。
来ること、聞いてなかったんか、お前。
「あ、あら??
ノーム???
え、いないの??」
おかしいわねぇ、とシルフィードは呟く。
「おばちゃん、ちょっと後にしてくれない?
ブランとの話し合いが、まだ終わらないから」
ヤマトが俺の胸ぐらを掴んだまま、そして俺を睨みつけたまま言う。
俺も俺で、ヤマトの胸ぐらを掴んで、同じようにヤマトを睨み返しながら、
「すんません、少し時間もらいます。
話し合いの決着がまだなんで」
そう言った。
シルフィードはそれを聞いて、呆れたように聞いてくる。
「あのねぇ、君たちのは話し合いじゃなくて喧嘩でしょう??」
そこで、妙な威圧が向けられた。
威圧の主はシルフィードだった。
彼女は絶対零度の微笑みを浮かべ、ヤマトを見た。
「ヤマト、お友達は叩いちゃいけないっておばちゃん、教えなかったっけ??
どうだったっけ?」
あえてヤマトと呼んでいるところに凄みがあった。
俺は実家の母さんを思い出した。
「ヴっ」
ヤマトが変な声を出して、俺の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
あぁ、逆らえないのね、お前。
「はい、お友達の方も手を離して、ね??」
……うん、逆らえないな。
怖いもん、この笑顔。
声はとても優しいし、なんなら逆らったところでどうって事ないだろうと思う。
でも、ダメだ。
これ、逆らうとめちゃくちゃ怒られるやつだ。
うちの母さんと同じ笑顔だ。
「よしよし、いい子いい子。
二人とも、いい子いい子」
なんて言ってシルフィードは、ヤマトと俺の頭を撫でる。
けれど、バツが悪かったのかヤマトはその手を払い除ける。
そして、
「頭冷やしてくる」
なんて言って、談話室から出ていった。
それを寮母さんが追いかける。
その後姿を、ふよふよ浮かびながら見ていたシルフィードが、
「反抗期かしらねぇ」
なんて呟いた。
俺も段々頭が冷えてきた。
だからか、この【話し合い】でのやらかしに自己嫌悪に陥る。
ただ、事情が聞きたかっただけなのに。
どうして、あんな強硬手段を取ってしまったのか。
不意にポケットに手を突っ込むと、携帯に触れた。
そうだ、報告しないと。
混乱する頭で、俺は助言してくれた人達へ報告を書き込む。
なんとなく、怒られるのが嫌でアイツが勝手にキレた、と書いてしまった。
なに、やってんだろ、俺。
ふと、シルフィードを見た。
ダメ元でシルフィードにも聞いてみるか。
「あの」
俺はシルフィードに声をかけた。
「なぁに??」
「その、ヤマトの怪我ってどのくらい悪いんですか??」
「どのくらい??
んー、そぉねぇ……。
悪化したら、私たちでさえもう二度と会えなくなるくらい悪いわねぇ」
シルフィードは話せるのか??
なんで??
いや、それよりも言い方はマイルドなものの、その意味するところは理解出来た。
やっぱり。
シルフィードは、さらに続ける。
「だから、そうならない為に君とももうすぐバイバイしなきゃいけないのに。
喧嘩するなんて、あの子らしくないわね」
「……え??」
なんの、話だ?
「それって、どういう意味っすか??」
シルフィードがキョトンとしつつ、俺を見た。
その時だ、談話室から出ていったヤマト、アイツを追いかけた寮母さんの悲鳴が上がった。
シルフィードが顔色を変えて、そちらに向かう。
俺も手早くスレ民に現状を報告し、それに続いた。
ヤマトと寮母さんが居たのは、談話室を出てすぐの廊下だった。
そこにヤマトは倒れていた。
血を吐いて、傷が開いたのか腹からも血が服に滲んでいた。
その顔色は青白く、死者を思い出させた。
瞼は薄ら開かれているが、そこにはなにも映っていない。
そんなヤマトに寮母さんが必死に声を掛けている。
しかし、意識は無いようだった。
俺は、アイツの名前を叫んだ。
「ヤマト!!??」
0
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
【しかも】襲われたところを、ヤンキーに助けてもらった件【暴走族の総長だった】
一樹
恋愛
暴走族の総長に助けてもらった女の子が、彼とお近付きになる話です。
暴走族総長×お嬢様の恋愛モノです。
※基本掲示板だけの話となります。
古いネタが多いです。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
島流しなう!(o´・ω-)b
一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる