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スレ民はにはお見通し♡
裏話15 農高でこき使われたブランの話
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それから、何時間経過しただろう。
時間の感覚がなくなるくらい、こき使われた。
もう言葉にすることすら、疲れる、そんな経験だった。
「はい、終了。
お疲れ様でしたー」
リィエンのその言葉に、歓声が上がった。
それから、少しづつ少しづつ、あちこちに配属されていたらしい生徒が戻ってくる。
皆ズタボロだった。
「壊滅したの一年一組と五組だってー、さっき治療班が怒鳴ってた」
「死んだん?」
「どうなんだろ??」
「壊滅してねーよ、他校から応援が来て間一髪助かったってさ。
治療班が怒鳴ってたのは、治ったやつから我先に素材取りに行こうとしたからだよ」
「あ、あのお助けマン、こっちにも来たよ。
ヤバいくらい強かった」
「あー、ちょっとアール先生っぽかったよねぇ。
あの先生、昼行灯で、決める時決めるから、女子人気高かったし」
そんな会話が流れてくる。
聞いていると、そのお助けマンとやらがヤマトだとわかった。
ここが、ヤマトが居た場所だと思い知らされた。
欠片も怪我をすることなく、後輩を助けている。
正反対だった。
聖魔学園に来てからの、あのトラブルの数々から生還してきたヤマトとは、まるで正反対だった。
「どうした、差し入れ魔族君?」
リィエンが、湯気の立つ紙コップと深めの紙皿を手にやってきた。
「あ、いえ」
「疲れただろう。
ほら、帰る前に栄養補給していきな」
そうして、ずいっと差し出されたのは、甘酒とコンニャク煮だった。
少し遅れて、他の生徒がおにぎりが沢山入ったバットを持って回ってきた。
「食え食え、昼食まで保たないぞ?
戻ったら授業だろ?」
ニッとリィエンがおにぎりを寄越してきた。
「あ、あの、ヤマトは??」
「ヤマトは、タケルとドラゴンの巣を見つけたらしくてな。
駆除してから来るそうだ」
タケル、名前は知ってる。
ヤマトの弟だ。
顔は知らないけれど、ヤマトにとてもよく似ていると聞いている。
「……どうした?
あ、もしかしてアレルギーか??」
「いえ、アイツはここに居たんだなぁって思って」
「面白い返しだな、魔族君」
貰ったおにぎりを食べる。
コンニャクも食べる。
甘酒も飲んだ。
そしたら、お代わりとばかりに麦茶をわたされた。
そこから、頼んでもいないのにリィエンはヤマトのやらかしを色々教えてくれた。
一番驚いたのは、
「え、ヤマトと殴りあった??」
「そー、ウケるっしょ??」
女性に手を上げるなんて、絶対しなさそうなのに。
ヤマトは、このリィエンと殴り合いの喧嘩をしたらしい。
「いや、ウケるというか」
反応に困るというのが、正直なところだ。
「喧嘩の原因はなんだったんすか?」
「んー、クッソくだらないよー」
なんてリィエンが返した時、別の三年生が口を挟んできた。
「学食の揚げパンの取り合いでガチ喧嘩したんだよ」
揚げパン。
揚げパンの取り合いで、ガチ喧嘩。
するとまた別の三年生が、
「え、焼きそばパンじゃなかったっけ??」
なんて、言ってきた。
かと思ったら、
「違うよ、海老カツパンだよ」
「俺はコロッケパンだって聞いたなぁ」
また別の三年生が、教えてくれた。
それにリィエンが正解を与える。
「違う違う、全部だよ」
は????
ぜ、全部??
その答えに、三年生たちから、そういやそうだったと声が上がる。
リィエンが、驚く俺を見た。
「君、姉妹はいる??」
唐突の質問に、俺は戸惑った。
「え、一人っ子です、けど」
「そっか、そっかそっかぁ!
羨ましいなぁ、一人っ子!」
なんて、ニコニコと笑っている。
その笑顔の意味がわからない。
「それに長男だから、きっとお腹いっぱいたべられるんだろうなぁ」
心の底から羨ましそうに言って、リィエンはおにぎりをガツガツと食べた。
「ま、今は私も、そしてヤマトもお腹いっぱい食べられるからしあわせだよ」
そしてまた、ニッと笑った。
なんだろう、この人はヤマトにとてもよく似ている気がする。
「えっと、それは、どういう」
「んー?んふふふ。
ベッドも共にしていない男の子には教えられないなぁ」
言われた言葉を理解して、顔が火照った。
???
なんだ、これ??
「おやま、その反応、童貞だったか。
てっきり彼女の十人や二十人囲ってそうな色男かとおもいきや、いてっ!」
揶揄いを続けるリィエンの頭が、その場にいた三年生によって叩かれた。
「セクハラだぞ」
「アハハ、いいじゃん別に。
男の子は猥談が好きなんだしさ」
「人によるかなぁ」
なんて、ワイワイやり始めた。
そこに、ヤマトが帰ってきた。
今度は農業高校のジャージを着ていた。
その肩には、ライフルがあった。
「戻りました!」
ヤマトは、俺に目もくれずリィエンのところに行き、報告を始める。
「え、おい?」
声をかけると、ヤマトが振り返った。
その目がとても冷たいもので、息を飲んだ。
まるで別人だった。
誰だ、これ??
「あぁ、お前が……」
なんて言って、俺を見る。
「……兄ちゃんなら、少し遅れますよ。
キーリ達と話してるから」
冷たい目はそのままに、ヤマトはそんなことを言った。
……ん??
兄ちゃん??
「とりあえず初めまして、ヤマトの弟のタケルです」
うっわ、ガチで似てる。
「あ、ご丁寧にどうも。
マレブランケです」
脳がバグる。
バグって混乱したまま、そんな挨拶を返してしまった。
「……なんか、聞いてたのと雰囲気違う」
タケルが呟いた時だった。
その視線が、俺の背後に向けられる。
そして、その冷たかった色が変わった。
無邪気な色に変わる。
「あ!兄ちゃん!!」
俺も、振り返る。
そこには、少し汚れてはいたけれど、怪我もなにもなくこちらへやってくるヤマトがいた。
時間の感覚がなくなるくらい、こき使われた。
もう言葉にすることすら、疲れる、そんな経験だった。
「はい、終了。
お疲れ様でしたー」
リィエンのその言葉に、歓声が上がった。
それから、少しづつ少しづつ、あちこちに配属されていたらしい生徒が戻ってくる。
皆ズタボロだった。
「壊滅したの一年一組と五組だってー、さっき治療班が怒鳴ってた」
「死んだん?」
「どうなんだろ??」
「壊滅してねーよ、他校から応援が来て間一髪助かったってさ。
治療班が怒鳴ってたのは、治ったやつから我先に素材取りに行こうとしたからだよ」
「あ、あのお助けマン、こっちにも来たよ。
ヤバいくらい強かった」
「あー、ちょっとアール先生っぽかったよねぇ。
あの先生、昼行灯で、決める時決めるから、女子人気高かったし」
そんな会話が流れてくる。
聞いていると、そのお助けマンとやらがヤマトだとわかった。
ここが、ヤマトが居た場所だと思い知らされた。
欠片も怪我をすることなく、後輩を助けている。
正反対だった。
聖魔学園に来てからの、あのトラブルの数々から生還してきたヤマトとは、まるで正反対だった。
「どうした、差し入れ魔族君?」
リィエンが、湯気の立つ紙コップと深めの紙皿を手にやってきた。
「あ、いえ」
「疲れただろう。
ほら、帰る前に栄養補給していきな」
そうして、ずいっと差し出されたのは、甘酒とコンニャク煮だった。
少し遅れて、他の生徒がおにぎりが沢山入ったバットを持って回ってきた。
「食え食え、昼食まで保たないぞ?
戻ったら授業だろ?」
ニッとリィエンがおにぎりを寄越してきた。
「あ、あの、ヤマトは??」
「ヤマトは、タケルとドラゴンの巣を見つけたらしくてな。
駆除してから来るそうだ」
タケル、名前は知ってる。
ヤマトの弟だ。
顔は知らないけれど、ヤマトにとてもよく似ていると聞いている。
「……どうした?
あ、もしかしてアレルギーか??」
「いえ、アイツはここに居たんだなぁって思って」
「面白い返しだな、魔族君」
貰ったおにぎりを食べる。
コンニャクも食べる。
甘酒も飲んだ。
そしたら、お代わりとばかりに麦茶をわたされた。
そこから、頼んでもいないのにリィエンはヤマトのやらかしを色々教えてくれた。
一番驚いたのは、
「え、ヤマトと殴りあった??」
「そー、ウケるっしょ??」
女性に手を上げるなんて、絶対しなさそうなのに。
ヤマトは、このリィエンと殴り合いの喧嘩をしたらしい。
「いや、ウケるというか」
反応に困るというのが、正直なところだ。
「喧嘩の原因はなんだったんすか?」
「んー、クッソくだらないよー」
なんてリィエンが返した時、別の三年生が口を挟んできた。
「学食の揚げパンの取り合いでガチ喧嘩したんだよ」
揚げパン。
揚げパンの取り合いで、ガチ喧嘩。
するとまた別の三年生が、
「え、焼きそばパンじゃなかったっけ??」
なんて、言ってきた。
かと思ったら、
「違うよ、海老カツパンだよ」
「俺はコロッケパンだって聞いたなぁ」
また別の三年生が、教えてくれた。
それにリィエンが正解を与える。
「違う違う、全部だよ」
は????
ぜ、全部??
その答えに、三年生たちから、そういやそうだったと声が上がる。
リィエンが、驚く俺を見た。
「君、姉妹はいる??」
唐突の質問に、俺は戸惑った。
「え、一人っ子です、けど」
「そっか、そっかそっかぁ!
羨ましいなぁ、一人っ子!」
なんて、ニコニコと笑っている。
その笑顔の意味がわからない。
「それに長男だから、きっとお腹いっぱいたべられるんだろうなぁ」
心の底から羨ましそうに言って、リィエンはおにぎりをガツガツと食べた。
「ま、今は私も、そしてヤマトもお腹いっぱい食べられるからしあわせだよ」
そしてまた、ニッと笑った。
なんだろう、この人はヤマトにとてもよく似ている気がする。
「えっと、それは、どういう」
「んー?んふふふ。
ベッドも共にしていない男の子には教えられないなぁ」
言われた言葉を理解して、顔が火照った。
???
なんだ、これ??
「おやま、その反応、童貞だったか。
てっきり彼女の十人や二十人囲ってそうな色男かとおもいきや、いてっ!」
揶揄いを続けるリィエンの頭が、その場にいた三年生によって叩かれた。
「セクハラだぞ」
「アハハ、いいじゃん別に。
男の子は猥談が好きなんだしさ」
「人によるかなぁ」
なんて、ワイワイやり始めた。
そこに、ヤマトが帰ってきた。
今度は農業高校のジャージを着ていた。
その肩には、ライフルがあった。
「戻りました!」
ヤマトは、俺に目もくれずリィエンのところに行き、報告を始める。
「え、おい?」
声をかけると、ヤマトが振り返った。
その目がとても冷たいもので、息を飲んだ。
まるで別人だった。
誰だ、これ??
「あぁ、お前が……」
なんて言って、俺を見る。
「……兄ちゃんなら、少し遅れますよ。
キーリ達と話してるから」
冷たい目はそのままに、ヤマトはそんなことを言った。
……ん??
兄ちゃん??
「とりあえず初めまして、ヤマトの弟のタケルです」
うっわ、ガチで似てる。
「あ、ご丁寧にどうも。
マレブランケです」
脳がバグる。
バグって混乱したまま、そんな挨拶を返してしまった。
「……なんか、聞いてたのと雰囲気違う」
タケルが呟いた時だった。
その視線が、俺の背後に向けられる。
そして、その冷たかった色が変わった。
無邪気な色に変わる。
「あ!兄ちゃん!!」
俺も、振り返る。
そこには、少し汚れてはいたけれど、怪我もなにもなくこちらへやってくるヤマトがいた。
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