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スレ民はにはお見通し♡
裏話6
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魔法でヤマト達を監視していた白衣の教師――ティリオンはその一部始終と結果にほくそ笑んだ。
派遣されてきた、あのイカれた男――ヴィルヘルムが死んだのは予想外だった。
しかし、それを除けばほぼ予定通りだった。
農業ギルドが開発した、無駄に高性能で、さらに伝説の防具もかくやという、あのジャージにも攻撃を加えられることが証明された。
ヤマト・ディケが、事前に集めた情報通りに動いてくれた。
なにもかもが、順調だった。
ヤマト・ディケを呪うこともできた。
そして、呪いとはまた別の、ヴィルヘルムの魔法が効くこともわかった。
なら、あとは奪うだけだ。
なぜなら、あの魔法を使えるのはヴィルヘルムだけではないのだから。
アレは新しく開発された、彼らだけが使える魔法だ。
まあ、奪いに行く前にヤマト・ディケが死ぬことも考えられる。
呪いと魔法の合わせ技は、予想以上の効果をもたらした。
そう、むしろこのままヤマト・ディケが死んだのなら、その方が都合が良かったりする。
なぜなら望みのものを、もっと簡単に手に入れられる。
どちらにせよ、ティリオンの主人であるウスノがそれを手に入れることは、もう確約されたようなものだ。
懸念材料があるとすれば、あの厄介な男だ。
ヤマト・ディケの所属するクラスの担任教師。
あの男をなんとかするくらいだろうか。
魔法により映し出された光景。
その向こうで、ヤマト・ディケの救命を行っている教師を見た。
一番イレギュラーな存在だ。
そう、彼さえ居なければ、いまこの段階で望みのものが手に入ったはずだった。
それこそ、ヤマト・ディケをわざわざ呪わなくたって良かった。
そこでティリオンは頭を振った。
ヤマト・ディケを呪うよう指示したのは、他ならない主人であるウスノだ。
ウスノはヤマトを憎んでいる。
だからこそ、呪わせた。
「……彼が苦しんで死んでいく姿を見たいから、わざわざ呪いをかけた」
ただ殺すだけじゃ気が済まない。
そんな真意が見える。
それだけ、ウスノはヤマト・ディケに心を奪われていた。
「本当に、憎々しい」
そうティリオンが呟いた時。
背後に気配が生まれる。
誰もいなかったハズの背後に、気配が生まれる。
そして、その気配の主が話しかけてきた。
「順調か?」
ティリオンが振り返る。
そこには、屈強な体つきの、ティリオンと同じ魔族の男が立っていた。
その頭にはとても大きな一対の角がある。
しかし、片方は醜く折れていた。
「えぇ、それなりに順調ですよ。
我が主にもそうお伝えください。
そうそう、貴方が考案した魔法も効果を発揮しました」
そう言いつつ、ティリオンが魔法で映し出している映像へと視線を戻す。
つられるように、現れたばかりの男もそちらを見た。
そして、目を見張った。
驚きとともに、男の口から笑いが漏れた。
「こいつは、なかなかどうして!!」
「どうかしましたか?」
男の目には、ヤマトが糞担任と呼んでいる男が映っていた。
男は、糞担任を指さして、本当に楽しそうにティリオンへ返す。
「古い馴染みだ」
「おや、そうなんですか」
「この角を折りやがった相手だ」
続いた言葉に、ティリオンは少しだけ驚く。
「なんとまぁ」
さぞかし憎み、怒っているだろうと思いきや、この男にはそんなものはなく。
むしろ、楽しそうだ。
「挨拶をしたいところだが、無理か?」
「えぇ、それはウスノ様の意思に反します」
男の確認に、ティリオンは頷いた。
男は肩を竦めた。
そして、もう一度、いまだにヤマトの命を救おうと奮闘している糞担任を見たのだった。
魔法でヤマト達を監視していた白衣の教師――ティリオンはその一部始終と結果にほくそ笑んだ。
派遣されてきた、あのイカれた男――ヴィルヘルムが死んだのは予想外だった。
しかし、それを除けばほぼ予定通りだった。
農業ギルドが開発した、無駄に高性能で、さらに伝説の防具もかくやという、あのジャージにも攻撃を加えられることが証明された。
ヤマト・ディケが、事前に集めた情報通りに動いてくれた。
なにもかもが、順調だった。
ヤマト・ディケを呪うこともできた。
そして、呪いとはまた別の、ヴィルヘルムの魔法が効くこともわかった。
なら、あとは奪うだけだ。
なぜなら、あの魔法を使えるのはヴィルヘルムだけではないのだから。
アレは新しく開発された、彼らだけが使える魔法だ。
まあ、奪いに行く前にヤマト・ディケが死ぬことも考えられる。
呪いと魔法の合わせ技は、予想以上の効果をもたらした。
そう、むしろこのままヤマト・ディケが死んだのなら、その方が都合が良かったりする。
なぜなら望みのものを、もっと簡単に手に入れられる。
どちらにせよ、ティリオンの主人であるウスノがそれを手に入れることは、もう確約されたようなものだ。
懸念材料があるとすれば、あの厄介な男だ。
ヤマト・ディケの所属するクラスの担任教師。
あの男をなんとかするくらいだろうか。
魔法により映し出された光景。
その向こうで、ヤマト・ディケの救命を行っている教師を見た。
一番イレギュラーな存在だ。
そう、彼さえ居なければ、いまこの段階で望みのものが手に入ったはずだった。
それこそ、ヤマト・ディケをわざわざ呪わなくたって良かった。
そこでティリオンは頭を振った。
ヤマト・ディケを呪うよう指示したのは、他ならない主人であるウスノだ。
ウスノはヤマトを憎んでいる。
だからこそ、呪わせた。
「……彼が苦しんで死んでいく姿を見たいから、わざわざ呪いをかけた」
ただ殺すだけじゃ気が済まない。
そんな真意が見える。
それだけ、ウスノはヤマト・ディケに心を奪われていた。
「本当に、憎々しい」
そうティリオンが呟いた時。
背後に気配が生まれる。
誰もいなかったハズの背後に、気配が生まれる。
そして、その気配の主が話しかけてきた。
「順調か?」
ティリオンが振り返る。
そこには、屈強な体つきの、ティリオンと同じ魔族の男が立っていた。
その頭にはとても大きな一対の角がある。
しかし、片方は醜く折れていた。
「えぇ、それなりに順調ですよ。
我が主にもそうお伝えください。
そうそう、貴方が考案した魔法も効果を発揮しました」
そう言いつつ、ティリオンが魔法で映し出している映像へと視線を戻す。
つられるように、現れたばかりの男もそちらを見た。
そして、目を見張った。
驚きとともに、男の口から笑いが漏れた。
「こいつは、なかなかどうして!!」
「どうかしましたか?」
男の目には、ヤマトが糞担任と呼んでいる男が映っていた。
男は、糞担任を指さして、本当に楽しそうにティリオンへ返す。
「古い馴染みだ」
「おや、そうなんですか」
「この角を折りやがった相手だ」
続いた言葉に、ティリオンは少しだけ驚く。
「なんとまぁ」
さぞかし憎み、怒っているだろうと思いきや、この男にはそんなものはなく。
むしろ、楽しそうだ。
「挨拶をしたいところだが、無理か?」
「えぇ、それはウスノ様の意思に反します」
男の確認に、ティリオンは頷いた。
男は肩を竦めた。
そして、もう一度、いまだにヤマトの命を救おうと奮闘している糞担任を見たのだった。
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