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スレ民はにはお見通し♡
裏話5 最後の記憶
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「んー、へぇ、結構甘いんだなぁ。
もしかして、ウスノ様も同じ味がすんのかね??」
うっとり、恍惚とした表情を男は浮かべる。
「コレもだけど」
男が、俺の胸ぐらを掴む。
そして、俺が内臓を出ないように、腹を抑えてた方の手を掴んでそこから引き剥がす。
「こっちもなぁ」
うわぁ、ガチでヤバい。
なんか、貞操の危機を感じる。
力が入らねぇし。
こんなことならさっさと殺すんだった。
畑泥棒か、野盗と同じようにするんだった。
教師連中と連絡を取りたいけど、手が拘束されてるし。
足には力が入らねぇ。
うわぁ、詰んだ。
こんなことで処女を卒業なんてぜってぇ嫌だ。
いや、俺、男だけど。
自分のことは自分でする。
自分のことは自分で、できる。
だから、これくらいのこと、自分でなんとかしないと。
まぁ、正直、死ぬわけじゃなし。
貞操くらいどうってことない。
むしろ、ディアナじゃなくて良かったと思う。
ちょっと諦めの境地に入った時だ。
農業高校で【最強最悪の怪物】と称されている、先輩の言葉が思い出された。
いつか、教えて貰った、こういった手合いから逃げる手段の一つ。
一か八かだ。
やらないよりはいい。
そう考えて、俺はコノハに襲われかけた日から魔法袋に忍ばせていたゴム製品を取り出すため、そして、その提案をするために口を開こうとした。
瞬間。
男が、吹っ飛ばされた。
「おい!!生きてるか?!」
現れたのは、糞担任だった。
マジか。
糞でも担任で、大人なんだな、この人。
呼んでもいないのに、現れるなんて、すげぇなぁ。
「なんとかー」
俺は糞担任にそう返す。
なるべく、軽く。
雑談のように、返す。
けれど、俺の状態を人目見て、珍しく糞担任の顔がみるみる青ざめていく。
それから、息を大きく吐き出して、あの変質者を振り返った。
そして、刹那。
俺は仰向けになってたからよくわからなかったけれど。
その刹那に、まるで邪竜でも現れたかのようなプレッシャーに襲われた。
続いて、変質者のものらしき声が耳に届いた。
「ひぎゃ」
自分のものではない、血の匂いがした。
さらに、人がひしゃげる音も。
この音は知ってる。
重機による事故で、人が押しつぶされる時の音によく似ていた。
それから、糞担任は指をパチンと鳴らす。
それだけで、血の匂いが消えた。
「せんせ、ディアナ」
それだけなんとか声を絞り出せた。
その声に答えたのは、糞担任ではなく、ディアナ本人だった。
「わ、わわわ、私なら大丈夫ですっ!
それより、先輩、血がっ!
い、いま傷口塞ぎますから!!」
なんて言いつつ、俺の顔を覗き込んできた。
あ、よかった、顔には傷一つ無い。
あの変質者も、糞担任がなんとかしてくれたみたいだし。
「だいじょーぶ、へいき」
とかなんとか返しているうちに、ディアナが傷口を塞ごうと魔法を展開させる。
しかし、糞担任が鋭い声でそれをやめさせた。
「おい、止せ!!」
「え、え、でも」
ディアナの戸惑う声が耳に届く。
なにが起こってるんだろう。
わからない。
「くそっ、おい!!
ヤマト、聞こえてるか??おい?!」
――――こうして、今に至るわけだ。
……なんもヒント無くね?
この窮地を脱するヒントが欠片も見つけられない。
気づけば、ディアナと糞担任の声も聞こえなくなっていた。
そして、それまで白かった視界が真っ黒に塗りつぶされる。
その真っ黒の世界で、俺が最後に思ったのは、変質者が言っていたウスノのことだ。
ウスノが生きている。
そんなことはありえない。
死んだはずだ。
アイツは、俺の目の前で死んだはずだ。
葬式だって家族がだした。
俺は出られなかったけれど。
だから、ずっと後になって、ノームやおばちゃん達に協力してもらって、アイツが好きだった花を、墓に供えに行った。
隠れて、家族の誰にも見つからないようにこっそりと、供えに行った。
覚えてる。
俺は、それを覚えてる。
ウスノとの思い出は、あまりいいものでは無い。
けれど、俺は、そこまでウスノのことを嫌ってもいなかった、と思う。
アイツは俺のことが嫌いだったけれど。
俺は、それでも、もう一人の自分を嫌いになれなかった。
だって、全部、俺が悪いんだから。
俺が、生まれてきたのがわるいんだから。
俺が生まれてさえこなければ、きっとウスノは元気に健康体で生きていたんだ。
ずっと、そう、詰られてきた。
責められてきた。
だから、きっとそれが正しい形だったんだと思う。
けれど、俺は、ウスノから奪うだけ奪って生まれただけじゃない。
結果として、俺はウスノを見殺しにしてしまった。
あの日。
俺は、ウスノに会いに行った。
ウスノが会いたいって、そう言ったから。
悪者扱いされても良かった。
ウスノは、だって、ずっと外の世界に憧れていたから。
俺の事を責めるのも、怒るのも、その憧れから来ていたのを、俺は知っていた。
だから、あの日。
『でっかい熊を狩りにいくんだ』
俺は、そうウスノに言った。
ウスノは、熊を見たことがなかった。
だから、見たい見たいとワガママを言った。
連れて行ってほしい、とそう言ってきた。
でも、それは出来ないと、ノームが言ってくれた。
あの時の、ウスノの目を俺は忘れることが出来ない。
狡い、なんでお前だけ、お前ばっかり狡い。
そんな恨みと憎しみのこもった、目だった。
きっとウスノが元気な体だったなら、俺を殺していたであろう、そんな目をしていた。
そして、ウスノは自分で家を抜け出して、死んだ。
そう、確かに、死んだんだ。
でも、じゃあ、あの変質者は嘘を言ったのか?
それとも、なにか勘違いをしていたのか?
けれど、俺とウスノが双子であること。
なんであの変質者はその事を知っていたんだ??
俺とウスノの関係なんて家族か、村の人しか知らないのに。
わからない。
もう、なにも、わからない……。
思考も黒く染まる。
何も考えられない。
そうして、俺は意識を完全に手放した。
もしかして、ウスノ様も同じ味がすんのかね??」
うっとり、恍惚とした表情を男は浮かべる。
「コレもだけど」
男が、俺の胸ぐらを掴む。
そして、俺が内臓を出ないように、腹を抑えてた方の手を掴んでそこから引き剥がす。
「こっちもなぁ」
うわぁ、ガチでヤバい。
なんか、貞操の危機を感じる。
力が入らねぇし。
こんなことならさっさと殺すんだった。
畑泥棒か、野盗と同じようにするんだった。
教師連中と連絡を取りたいけど、手が拘束されてるし。
足には力が入らねぇ。
うわぁ、詰んだ。
こんなことで処女を卒業なんてぜってぇ嫌だ。
いや、俺、男だけど。
自分のことは自分でする。
自分のことは自分で、できる。
だから、これくらいのこと、自分でなんとかしないと。
まぁ、正直、死ぬわけじゃなし。
貞操くらいどうってことない。
むしろ、ディアナじゃなくて良かったと思う。
ちょっと諦めの境地に入った時だ。
農業高校で【最強最悪の怪物】と称されている、先輩の言葉が思い出された。
いつか、教えて貰った、こういった手合いから逃げる手段の一つ。
一か八かだ。
やらないよりはいい。
そう考えて、俺はコノハに襲われかけた日から魔法袋に忍ばせていたゴム製品を取り出すため、そして、その提案をするために口を開こうとした。
瞬間。
男が、吹っ飛ばされた。
「おい!!生きてるか?!」
現れたのは、糞担任だった。
マジか。
糞でも担任で、大人なんだな、この人。
呼んでもいないのに、現れるなんて、すげぇなぁ。
「なんとかー」
俺は糞担任にそう返す。
なるべく、軽く。
雑談のように、返す。
けれど、俺の状態を人目見て、珍しく糞担任の顔がみるみる青ざめていく。
それから、息を大きく吐き出して、あの変質者を振り返った。
そして、刹那。
俺は仰向けになってたからよくわからなかったけれど。
その刹那に、まるで邪竜でも現れたかのようなプレッシャーに襲われた。
続いて、変質者のものらしき声が耳に届いた。
「ひぎゃ」
自分のものではない、血の匂いがした。
さらに、人がひしゃげる音も。
この音は知ってる。
重機による事故で、人が押しつぶされる時の音によく似ていた。
それから、糞担任は指をパチンと鳴らす。
それだけで、血の匂いが消えた。
「せんせ、ディアナ」
それだけなんとか声を絞り出せた。
その声に答えたのは、糞担任ではなく、ディアナ本人だった。
「わ、わわわ、私なら大丈夫ですっ!
それより、先輩、血がっ!
い、いま傷口塞ぎますから!!」
なんて言いつつ、俺の顔を覗き込んできた。
あ、よかった、顔には傷一つ無い。
あの変質者も、糞担任がなんとかしてくれたみたいだし。
「だいじょーぶ、へいき」
とかなんとか返しているうちに、ディアナが傷口を塞ごうと魔法を展開させる。
しかし、糞担任が鋭い声でそれをやめさせた。
「おい、止せ!!」
「え、え、でも」
ディアナの戸惑う声が耳に届く。
なにが起こってるんだろう。
わからない。
「くそっ、おい!!
ヤマト、聞こえてるか??おい?!」
――――こうして、今に至るわけだ。
……なんもヒント無くね?
この窮地を脱するヒントが欠片も見つけられない。
気づけば、ディアナと糞担任の声も聞こえなくなっていた。
そして、それまで白かった視界が真っ黒に塗りつぶされる。
その真っ黒の世界で、俺が最後に思ったのは、変質者が言っていたウスノのことだ。
ウスノが生きている。
そんなことはありえない。
死んだはずだ。
アイツは、俺の目の前で死んだはずだ。
葬式だって家族がだした。
俺は出られなかったけれど。
だから、ずっと後になって、ノームやおばちゃん達に協力してもらって、アイツが好きだった花を、墓に供えに行った。
隠れて、家族の誰にも見つからないようにこっそりと、供えに行った。
覚えてる。
俺は、それを覚えてる。
ウスノとの思い出は、あまりいいものでは無い。
けれど、俺は、そこまでウスノのことを嫌ってもいなかった、と思う。
アイツは俺のことが嫌いだったけれど。
俺は、それでも、もう一人の自分を嫌いになれなかった。
だって、全部、俺が悪いんだから。
俺が、生まれてきたのがわるいんだから。
俺が生まれてさえこなければ、きっとウスノは元気に健康体で生きていたんだ。
ずっと、そう、詰られてきた。
責められてきた。
だから、きっとそれが正しい形だったんだと思う。
けれど、俺は、ウスノから奪うだけ奪って生まれただけじゃない。
結果として、俺はウスノを見殺しにしてしまった。
あの日。
俺は、ウスノに会いに行った。
ウスノが会いたいって、そう言ったから。
悪者扱いされても良かった。
ウスノは、だって、ずっと外の世界に憧れていたから。
俺の事を責めるのも、怒るのも、その憧れから来ていたのを、俺は知っていた。
だから、あの日。
『でっかい熊を狩りにいくんだ』
俺は、そうウスノに言った。
ウスノは、熊を見たことがなかった。
だから、見たい見たいとワガママを言った。
連れて行ってほしい、とそう言ってきた。
でも、それは出来ないと、ノームが言ってくれた。
あの時の、ウスノの目を俺は忘れることが出来ない。
狡い、なんでお前だけ、お前ばっかり狡い。
そんな恨みと憎しみのこもった、目だった。
きっとウスノが元気な体だったなら、俺を殺していたであろう、そんな目をしていた。
そして、ウスノは自分で家を抜け出して、死んだ。
そう、確かに、死んだんだ。
でも、じゃあ、あの変質者は嘘を言ったのか?
それとも、なにか勘違いをしていたのか?
けれど、俺とウスノが双子であること。
なんであの変質者はその事を知っていたんだ??
俺とウスノの関係なんて家族か、村の人しか知らないのに。
わからない。
もう、なにも、わからない……。
思考も黒く染まる。
何も考えられない。
そうして、俺は意識を完全に手放した。
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