98 / 142
スレ民はにはお見通し♡
裏話4 四番目の記憶
しおりを挟む
それからしばらく、ディアナと2人で森をさまよった。
気配を探りつつ、奇襲をかける作戦で動いていたら思いのほかすんなりとメダルを手に入れることが出来た。
さてさて、次はどっちに行こうか。
右か、左か。
よし……右に行ってみよう。
俺とディアナはずんずんと歩を進める。
「みぃつけたぁ!」
そんな愉快そうな声が降ってきた。
そう、空から降ってきた。
同時に殺気を充てられた。
俺は咄嗟にディアナの首根っこを引っ掴んで、引っ張る。
抱き寄せて、飛び退る。
「せ、せせせ、先輩、あのその、いま授業中!」
なにやら動揺してるディアナを、荷物よろしく肩に担ぐ。
そして、さっきまで俺たちがいた場所に、人が落ちてきた。
それは、魔族だった。
20代後半の魔族の男だ。
落窪んだ目が爛々と輝いて、俺達を見ている。
「……誰だ?」
俺は呟いた。
ただの呟きだ。
教師にはいなかった顔だ。
いや、全員を知ってるわけじゃないけど。
少なくとも、この実技授業に来ている教師の中にはいなかった顔だ。
「アハアハアッハッハー♡
なぁるほど、たしかにそっくりだぁ♡」
気持ち悪い。
なんだろう。
なんか、ヤバい。
変質者だ。
こう、違法薬物でキマってる、変質者の類だ。
どうして、私有地に、それも結界内に変質者がいるんだ。
「あー、でも、」
言葉を続けていた男が消えた。
かと思ったら、すぐ近く、右下に気配が現れる。
はやいっ!!
「あの方よりは、全然だなぁ」
もう一度飛び退ろうとして、背中から木にぶつかる。
ディアナも結果として、顔面をぶつけてしまった。
「へぶっ」
ディアナから、うめき声のようなものが漏れた。
わー、ごめん!!
顔に傷が残るようなことしてホントごめん、ディアナ!
あとで龍神族のじいちゃんにみてもらうから、もうちょい我慢しててくれ!
「よそ見は、よくないぞぉ♡」
なんて言って、男の手が伸ばされ下腹のあたりを掴まれそうになる。
間一髪、俺はそれを避けた。
「あの、ここは私有地ですよ?
不法侵入になっちゃうんで、はやく出ていった方がいいですよ?」
俺は、そう声をかけつつ逃げる機会を窺う。
「思ったより早いなぁ♡
さすが、あの方の片割れだぁ♡」
しかし、男は俺の言葉を欠片も聞いちゃいない。
「で、も♡」
男が消える。
今度は、上?!
俺はディアナを投げた。
殺気を向けられた先が、俺ではなくディアナだったからだ。
「んぎゃっ」
ディアナが明後日の方向に転がる。
そして、ディアナに向かって伸ばされただろう、男の手。
それを、握っていた鉈で受け止める。
「おぉ、凄い凄い!!
そう来るか!」
男の目がさらに怪しく輝き始める。
「なら、コレはどうだ?!」
男の姿が、また消える。
そして、ディアナの方に現れる。
ちっ!
執拗いな、なんなんだよ、コイツ!!
これが実家か農業高校の山か畑だったら一思いに殺せるのに。
ここで、そんなことしたらガチで捕まる。
「こんの、やろう!!」
俺はディアナと男の間に割って入り、また鉈で男の手を防ごうとする。
と、そこで、男の顔がまた楽しそうに歪んだ。
そして、今度はもう少し上の方へ手を伸ばしてきた。
それを、俺は、空いてる方の手でたたき落とす。
持っていた鉈で牽制する。
男はそれをさらりと避ける。
「さっきから意味わからんことばっかほざきやがって、この変質者め」
男を睨みつける。
あの方云々、と言っているところを見るに幻覚でも見てるんだろう。
きっとそうだ。
男は、吐き捨てる俺に向かって、しかし楽しそうに、言ってくる。
「アハハ、そうかそうか。
お前、知らないんだもんなぁ♡
あの方のこと、なにも知らないんだよなぁ。
あの方の片割れで、唯一血肉を分けた半身だって言うのになぁ」
聞くな。
脳の中で声がした。
自分の声だ。
聞くな、聞くな。
そして、考えるな。
男の言葉の意味を、理解しようとするな!!
「とくに言うなって言われてるわけじゃなし、教えてやるよ」
男が笑う。
楽しそうに笑う。
顔を歪めて、笑う。
「俺はさ、お前のお兄様、ウスノ様の命令でここに来たんだよ」
世界から、音が消えた。
意味がわからない。
ウスノは。
もう、ずっと、前に死んだんだ。
頭では分かってる。
分かってるのに。
「……え?」
俺が声を漏らすのと、
「つぅかまぇたぁ♡」
男の言葉が重なる。
男が視界から、消える。
そして、下腹に軽い衝撃。
トン、と男が触れた。
瞬間、念の為に着ていた農業高校のクソダサジャージが溶け、腹が露出する。
そして、そのまま露出した腹を掴まれた。
かと思ったら、そこを引きちぎられた。
「っ!!!???」
肉を持っていかれ、今度は内臓が飛び出て来る。
そして、激痛。
俺は、そこで男を蹴りつけた。
男が吹っ飛び、離れた場所にあった大木に激突する。
俺は激痛とともに、体の力が抜ける。
立っていられなくて、俺は膝をつく。
破かれた腹を抑えつつ、俺は男を見た。
「動きが鈍ったなぁ♡
そうそう、あの方、ウスノ様から言われてんだよ。
お前は、誰にも愛されてないから、俺が愛してやれって。
お前は、寂しがり屋だから、ドロッドロに愛してやれってなぁ」
男がゆっくりと、こちらに歩いて近づいてくる。
「お前が持ってる、とても大事なもの以外、ウスノ様は要らないんだと。
残りは俺にくれるって言ってたからさ。
なんなら、味見もしていいって言ってたしな」
ケラケラと男が笑う。
歪んだ笑みを、顔に浮かべている。
そして、そのまま引きちぎった俺の腹の肉塊をペロリ、と舐めた。
やべぇ、こいつ真性の変態だ。
気配を探りつつ、奇襲をかける作戦で動いていたら思いのほかすんなりとメダルを手に入れることが出来た。
さてさて、次はどっちに行こうか。
右か、左か。
よし……右に行ってみよう。
俺とディアナはずんずんと歩を進める。
「みぃつけたぁ!」
そんな愉快そうな声が降ってきた。
そう、空から降ってきた。
同時に殺気を充てられた。
俺は咄嗟にディアナの首根っこを引っ掴んで、引っ張る。
抱き寄せて、飛び退る。
「せ、せせせ、先輩、あのその、いま授業中!」
なにやら動揺してるディアナを、荷物よろしく肩に担ぐ。
そして、さっきまで俺たちがいた場所に、人が落ちてきた。
それは、魔族だった。
20代後半の魔族の男だ。
落窪んだ目が爛々と輝いて、俺達を見ている。
「……誰だ?」
俺は呟いた。
ただの呟きだ。
教師にはいなかった顔だ。
いや、全員を知ってるわけじゃないけど。
少なくとも、この実技授業に来ている教師の中にはいなかった顔だ。
「アハアハアッハッハー♡
なぁるほど、たしかにそっくりだぁ♡」
気持ち悪い。
なんだろう。
なんか、ヤバい。
変質者だ。
こう、違法薬物でキマってる、変質者の類だ。
どうして、私有地に、それも結界内に変質者がいるんだ。
「あー、でも、」
言葉を続けていた男が消えた。
かと思ったら、すぐ近く、右下に気配が現れる。
はやいっ!!
「あの方よりは、全然だなぁ」
もう一度飛び退ろうとして、背中から木にぶつかる。
ディアナも結果として、顔面をぶつけてしまった。
「へぶっ」
ディアナから、うめき声のようなものが漏れた。
わー、ごめん!!
顔に傷が残るようなことしてホントごめん、ディアナ!
あとで龍神族のじいちゃんにみてもらうから、もうちょい我慢しててくれ!
「よそ見は、よくないぞぉ♡」
なんて言って、男の手が伸ばされ下腹のあたりを掴まれそうになる。
間一髪、俺はそれを避けた。
「あの、ここは私有地ですよ?
不法侵入になっちゃうんで、はやく出ていった方がいいですよ?」
俺は、そう声をかけつつ逃げる機会を窺う。
「思ったより早いなぁ♡
さすが、あの方の片割れだぁ♡」
しかし、男は俺の言葉を欠片も聞いちゃいない。
「で、も♡」
男が消える。
今度は、上?!
俺はディアナを投げた。
殺気を向けられた先が、俺ではなくディアナだったからだ。
「んぎゃっ」
ディアナが明後日の方向に転がる。
そして、ディアナに向かって伸ばされただろう、男の手。
それを、握っていた鉈で受け止める。
「おぉ、凄い凄い!!
そう来るか!」
男の目がさらに怪しく輝き始める。
「なら、コレはどうだ?!」
男の姿が、また消える。
そして、ディアナの方に現れる。
ちっ!
執拗いな、なんなんだよ、コイツ!!
これが実家か農業高校の山か畑だったら一思いに殺せるのに。
ここで、そんなことしたらガチで捕まる。
「こんの、やろう!!」
俺はディアナと男の間に割って入り、また鉈で男の手を防ごうとする。
と、そこで、男の顔がまた楽しそうに歪んだ。
そして、今度はもう少し上の方へ手を伸ばしてきた。
それを、俺は、空いてる方の手でたたき落とす。
持っていた鉈で牽制する。
男はそれをさらりと避ける。
「さっきから意味わからんことばっかほざきやがって、この変質者め」
男を睨みつける。
あの方云々、と言っているところを見るに幻覚でも見てるんだろう。
きっとそうだ。
男は、吐き捨てる俺に向かって、しかし楽しそうに、言ってくる。
「アハハ、そうかそうか。
お前、知らないんだもんなぁ♡
あの方のこと、なにも知らないんだよなぁ。
あの方の片割れで、唯一血肉を分けた半身だって言うのになぁ」
聞くな。
脳の中で声がした。
自分の声だ。
聞くな、聞くな。
そして、考えるな。
男の言葉の意味を、理解しようとするな!!
「とくに言うなって言われてるわけじゃなし、教えてやるよ」
男が笑う。
楽しそうに笑う。
顔を歪めて、笑う。
「俺はさ、お前のお兄様、ウスノ様の命令でここに来たんだよ」
世界から、音が消えた。
意味がわからない。
ウスノは。
もう、ずっと、前に死んだんだ。
頭では分かってる。
分かってるのに。
「……え?」
俺が声を漏らすのと、
「つぅかまぇたぁ♡」
男の言葉が重なる。
男が視界から、消える。
そして、下腹に軽い衝撃。
トン、と男が触れた。
瞬間、念の為に着ていた農業高校のクソダサジャージが溶け、腹が露出する。
そして、そのまま露出した腹を掴まれた。
かと思ったら、そこを引きちぎられた。
「っ!!!???」
肉を持っていかれ、今度は内臓が飛び出て来る。
そして、激痛。
俺は、そこで男を蹴りつけた。
男が吹っ飛び、離れた場所にあった大木に激突する。
俺は激痛とともに、体の力が抜ける。
立っていられなくて、俺は膝をつく。
破かれた腹を抑えつつ、俺は男を見た。
「動きが鈍ったなぁ♡
そうそう、あの方、ウスノ様から言われてんだよ。
お前は、誰にも愛されてないから、俺が愛してやれって。
お前は、寂しがり屋だから、ドロッドロに愛してやれってなぁ」
男がゆっくりと、こちらに歩いて近づいてくる。
「お前が持ってる、とても大事なもの以外、ウスノ様は要らないんだと。
残りは俺にくれるって言ってたからさ。
なんなら、味見もしていいって言ってたしな」
ケラケラと男が笑う。
歪んだ笑みを、顔に浮かべている。
そして、そのまま引きちぎった俺の腹の肉塊をペロリ、と舐めた。
やべぇ、こいつ真性の変態だ。
0
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
島流しなう!(o´・ω-)b
一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる