上 下
88 / 142
二年生になりました(笑)

裏話7

しおりを挟む
 カツ丼弁当とケーキを堪能した後、少し休んでからエルリーと別れ、もう一度教務室へと向かった。
 糞担任がいるかな、すこし身構えたがいなかった。
 その代わり、あの白衣の教師が俺たちのことに気づいて手招きしてきた。

「届いたよ、ほら」

 そう言ってディアナに携帯を渡してきた。
 ディアナはビクビクしつつも、それを受け取る。
 そして、なぜか首を傾げていた。

「それじゃないの?」

 白衣の教師が訊ねる。
 ハッとしてディアナは、じいっと携帯を見つめ、操作してみた。

「いえ、私のです。
 ありがとうございました」

 そう言って、ディアナはぺこりと頭を下げた。
 そんなこんなで、教務室を出る。
 さて、午後はどうしようか。
 授業、に出るのはかったるいんだよなぁ。
 今日は一日サボろうかなとか考えていたら、糞担任に捕まってしまった。

「おい、授業サボって校内デートとはいい度胸してんな悪ガキ」

「げっ」

 逃げようとするが、首根っこ引っ掴まれてしまう。
 そこで、糞担任はディアナを見た。

「……???」

 糞担任は不思議そうにディアナを見る。

「お前……」

 ディアナへ、糞担任はなにかを言おうとする。
 しかし、そこで慌てたように教務室の扉が開いて、あの白衣の教師が出てきた。
 俺たちを、というより、ディアナを見て心底ホッとしたように声を掛けてきた。

「あ!良かった、まだ居た!!
 ディアナさん、話があるからちょっと来てくれるかい?」

 これにディアナは、驚く。
 体を強ばらせて、怖がっているようにも見えた。
 しかし、話があると教師じきじきに言われては断れない。

「取って食いやしないから、そんな怯えないでほしいなぁ」

 白衣の教師が苦笑しながら言った。
 ディアナがちらり、と俺を見た。
 しかし、一度深呼吸してから彼女は教務室に入っていった。
 白衣の教師が扉を閉める。
 しかし、扉を閉める直前、俺と糞担任を見てなんというかとても禍々しく睨みつけられた。
 いや、気のせいかも知れないけど。
 隣で、糞担任が頭をガリガリと掻きつつ聞いてきた。

「お前、あの女生徒とどんな関係だ?」

 少し考えて、俺は冗談めかして答えた。

「……校内デートする程度の関係ですね」

 すぐ小突かれる。

「真面目に聞いてるんだ」

 ガチトーンで言われ、俺は昨日からのことを説明した。
 説明の後、糞担任はあの死んだ魚みたいな目を俺に向けて、

「はあ」

 盛大にため息を吐き出した。
 なんなんだ、いったい。

「とりあえず、授業行くぞー」

 糞担任は、疲れたようにそう言って、俺を引っ張っていこうとする。

「え、いやディアナのこと待ってないと」

「なんで?」

「なんでって、出てきて誰もいなかったら嫌じゃん」

 しかし、その訴えは聞き届けられず、糞担任は俺の事を無理やり授業へと引っ張って行こうとする。
 仕方ない。

「……ノーム」

 小さく、俺はノームを呼んだ。
 大地の精霊王ノームは、その呼び掛けに応えてくれた。

「頼んでいいか?」

 ノームがやれやれと言った表情で頷いてくれる。

「んじゃ、よろしく」

 それを、糞担任がジト目で見てくるが、なにも言っては来なかった。
 そうして、午後の授業に参加させられた。
 ブランにも小突かれ、色々聞かれた。
 しつこかったのと、ブランはディアナのことを知っているので話した。
 そしたら、なんか驚かれた。

「え? おま、誕生日って、え??」

「ケーキのお裾分け貰ったから、寮に帰ったら渡すよ」

「いや、そうじゃなくて!」

「???」

「お前、誕生日だったん??」

「うん、すっかり忘れてたけど」

 ちなみに思い出した切っ掛けは、エルリーだ。
 いきなり誕生日を教えてほしい、と言われたのだ。
 聞かれてもすぐに思い出さない程度には、どうでもいいことだったので免許証や生徒手帳の確認をするまでに、随分時間がかかった。

「エルリーが誕生日ケーキ焼いてくれてさ。
 ホールのやつ、美味かったぞ」

 あと、うん、とても感慨深かった。
 去年のこととか思い出すと、我ながらよく生きてたなぁ、と。
 ほんと、我ながらどっかで死んでても不思議じゃなかったからなぁ。
 ……ウスノのことが頭にチラついた。
 同じ日に生まれたのだから、必然的にアイツの誕生日でもある。
 そんなこと、知ってたはずなのにな。

 とかしみじみやってたら、ブランが汗ダラダラにして、

「な、なんか欲しいものとかあるか?
 食い物でもいいけど、奢るぞ?」

 とか聞いてきた。

「なにそんなに動揺してるんだ、お前。
 生憎、今、欲しいものはないな」

 そう答えたら、見るからにブランがガッカリした。
 しかし、本当に欲しいものなんて……。
 あ、いやあったわ。

「あった、欲しいもの」

ブランが表情を明るくする。
とりあえず、放課後に売店に付き合ってもらおう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】

一樹
ファンタジー
とある少年が、世界が滅んで家族とか全滅して、それをなんとかする話です。 なんとかしようってとこで終わってます。 肥やしにしとくのもアレなんで投下します。 気まぐれに、続きを書くかもしれないので完結設定にはしていません。 よろしくお願いします。

王家から追放された貴族の次男、レアスキルを授かったので成り上がることにした【クラス“陰キャ”】

時沢秋水
ファンタジー
「恥さらしめ、王家の血筋でありながら、クラスを授からないとは」 俺は断崖絶壁の崖っぷちで国王である祖父から暴言を吐かれていた。 「爺様、たとえ後継者になれずとも私には生きる権利がございます」 「黙れ!お前のような無能が我が血筋から出たと世間に知られれば、儂の名誉に傷がつくのだ」 俺は爺さんにより谷底へと突き落とされてしまうが、奇跡の生還を遂げた。すると、谷底で幸運にも討伐できた魔獣からレアクラスである“陰キャ”を受け継いだ。 俺は【クラス“陰キャ”】の力で冒険者として成り上がることを決意した。 主人公:レオ・グリフォン 14歳 金髪イケメン

恋人とパーティリーダーに裏切られたSSSランク冒険者、傷心旅行中に魔族のお姫様を助ける

一樹
ファンタジー
タイトル通りの内容です。 話が進むと、陰謀とか財宝探しとかに首を突っ込んだりします。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました

月城 夕実
ファンタジー
僕はトワ・ウィンザー15歳の異世界転生者だ。貴族に生まれたけど、魔力無しの為家を出ることになった。家を出た僕は呪いを解呪出来ないか探すことにした。解呪出来れば魔法が使えるようになるからだ。町でウェンディを助け、共に行動をしていく。ひょんなことから魔石を手に入れて魔法が使えるようになったのだが・・。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...