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魔界観光編
裏話1
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昔、魔界、と聞いて幼い俺が思い浮かべたのは、悪の本拠地とかそういうのだ。
子供の頃の話だ。
さすがに、この歳になって針山があるとか、血の池があるとかは信じていない。
おどろおどろしい火山があるとかも信じていない。
でも、期待していなかったと言えば嘘になる。
毒々しい川が流れてるとかさ。
来てみれば、人間界とそう変わらない光景が広がっていた。
国があって、街があって、バスや電車が通ってて、城下町だった場所には高層ビルが立ち並び、どデカいテレビがCMを流している。
コンビニがあって、スーパーマーケットがあって、ファミレス含めた飲食店もある。
ブランの家に厄介になるので、まずはターミナルまで迎えに来てくれていたご両親に挨拶をする。
「お世話になります」
ペコっと頭を下げ、挨拶をする。
すると、何故かやたら感動的な眼差しを向けられた。
ブランのお母さんが、
「貴方!! うちの子にもやっと舎弟じゃないちゃんとした、普通の友達が出来たわ!!」
なんて言うもんだから、ついつい俺はブランを見た。
今日はあの地味な格好である。
つーか、お前舎弟いるんかい。
ブランのお父さんもそれに答える。
「本当だ! 顔が腫れてない、歯も指も足も折ってない子を連れてくるなんて奇跡だ!!
今日はお祝いだ!」
奇跡なんかい。
え、マジでヤンキーだったのか。こいつ?
というか、いい人たちだな、ブランの両親。
家庭内不和というか、不全家庭の我が家と比べるととても羨ましい。
なんで、ヤンキーなんかやってるんだろコイツ?
俺が内心不思議がっていると、
「とても礼儀正しい子で良かった!」
なんか物凄く、ブランのお母さんに安心された。
そこからは、ブランのご両親が車を出してくれるそうで、一緒にあちこち連れていってもらえることになった。
行きたい場所を聞かれてもよくわからないので、悩んでいたところ、
「魔王城も見学できるぞ」
とブランのお父さんに言われ、
「そこ行きたいです!是非お願いします!!」
俺は即答した。
とはいえ、昼食がまだだったので近くのファミレスに入る。
ブランのご両親が奢ってくれるらしい。
「ほら、男の子なんだから遠慮なく大盛り食べなさい」
そうは言われても、遠慮してしまうのは仕方ないだろう。
でも、断るのも失礼かなと思って言葉に甘えることにした。
「ドラゴンを倒した子って聞いて、てっきりもう少し肉付きのいい子かと思ってたけれど、ちゃんと食べなきゃダメよ?」
「あ、はい」
ブランのお母さんに言われ、曖昧に返す。
ちゃんと食べてはいるんだ。
野菜中心で、なんだかんだ動いているのと、あとはアレだストレスのせいで胃がやられてて食べる量が少ないってのを除けば、ちゃんと三食きっちりたべている。
……言葉に甘えたのはいいけど、ちゃんと残さず食えるかな?
それが心配だった。
ま、そんな心配は杞憂に終わったけれど。
意外とその場の勢いで食べれてしまった。
でも、こんなに食べたの久しぶりだ。
ファミレスを出て、駐車場へ向かう。
少し離れた場所の駐車場しか空いて無かったからだ。
これはまぁ仕方ないだろう。
なにせ、年末だ。
あちこちの駐車場に、観光目的らしい車が停まっている。
その途中、俺たちはその現場に遭遇した。
人が多い場所にはトラブルが付き物だ。
なんかやたら五月蝿いエンジン音が聞こえるな、と思っていたらすぐ近くの道路を、暴走族らしき集団が通り抜けて行った。
と、その中のニケツしていた一人がこちらを見た、ように感じた。
フルフェイスのヘルメット越しなので顔をこちらに向けただけかも知れないが。
ヘルメットをしていない者もいる。
それこそブランが学園でしている髪型、モヒカンなどの特徴的なそれと服装をした集団だ。アレで暴走族じゃないならただのコスプレライダー集団である。
「うそだろ」
すぐ隣から、そんな声が聞こえた。
声の主は、ブランだった。
ブランは、驚きと絶望の入り交じったような複雑そうな表情を浮かべていた。
もしかして、知り合いでもいたのだろうか?
今見たものが信じられない、とでも言いたげにブランは暴走族が去っていった方向を見つめ続けていた。
それとなく、ブランのご両親もみてみる。
こちらは普通に驚いている表情だった。
ふむ、ということは、やっぱりブランの知り合いがいたんだな。
で、滅茶苦茶にイメチェンしていた、といったところだろうか。
さて、目的の魔王城へ着いた。
ご両親は近くのカフェで待っているらしい、俺とブランで見学することになった。
ブランがガイドである。
なんでも、学校行事などで年一回遠足やらで来てたらしい。
さすが地元住民と言うべきか。
受付で学生証を見せる。
かなりの格安料金で見学できるようだ。
城、という言葉のイメージを崩さない建物の中に入る。
実際ここでは魔王や魔王軍関係者が働いているらしい。
見学用に解放されている場所には、さすがに観光客と見学ルート専門の従業員しないなかったけど。
あちこちに歴代の魔王の肖像画が飾られている。
展示物は色々あったが一番人気は、過去の魔王と勇者が身につけていた武器や防具のレプリカのコーナーだった。
かく言う俺も夢中になってしまい、ブランに呆れられてしまった。
それはそうと魔王肖像画と説明を見て意外だったのは、どうやら魔王は血筋ではなれないらしいということだった。
てっきり血筋かな、と思っていたがどうやら魔王はそれだけではなれないらしい。
肖像画の面差しはみんな違っていた。
名前、姓もみんな違っていた。
疑問に思って、ブランに訊ねると説明してくれた。
「魔王は魔族の中から見込みのあるやつを見繕って戦わせて決める。
魔王の任期は、だいたい十年から二十年。この任期の間に次の魔王候補が選ばれる。
今代の魔王様は八歳の時に魔王になった。
以来、十余年、この魔界に君臨して統治を続けている」
ちなみに、ブランが魔王候補になったのは中学時代のヤンチャが原因らしい。
何をしたんだか知らないが、ヤンキーは元からか。
先程の暴走族の話は、たとえ雑談でも出てこなかった。
気にはなるけど、無理に聞くほどの話ではないか。
それこそ冬休みが明けて、学校が始まって覚えてたら聞けばいいか。
子供の頃の話だ。
さすがに、この歳になって針山があるとか、血の池があるとかは信じていない。
おどろおどろしい火山があるとかも信じていない。
でも、期待していなかったと言えば嘘になる。
毒々しい川が流れてるとかさ。
来てみれば、人間界とそう変わらない光景が広がっていた。
国があって、街があって、バスや電車が通ってて、城下町だった場所には高層ビルが立ち並び、どデカいテレビがCMを流している。
コンビニがあって、スーパーマーケットがあって、ファミレス含めた飲食店もある。
ブランの家に厄介になるので、まずはターミナルまで迎えに来てくれていたご両親に挨拶をする。
「お世話になります」
ペコっと頭を下げ、挨拶をする。
すると、何故かやたら感動的な眼差しを向けられた。
ブランのお母さんが、
「貴方!! うちの子にもやっと舎弟じゃないちゃんとした、普通の友達が出来たわ!!」
なんて言うもんだから、ついつい俺はブランを見た。
今日はあの地味な格好である。
つーか、お前舎弟いるんかい。
ブランのお父さんもそれに答える。
「本当だ! 顔が腫れてない、歯も指も足も折ってない子を連れてくるなんて奇跡だ!!
今日はお祝いだ!」
奇跡なんかい。
え、マジでヤンキーだったのか。こいつ?
というか、いい人たちだな、ブランの両親。
家庭内不和というか、不全家庭の我が家と比べるととても羨ましい。
なんで、ヤンキーなんかやってるんだろコイツ?
俺が内心不思議がっていると、
「とても礼儀正しい子で良かった!」
なんか物凄く、ブランのお母さんに安心された。
そこからは、ブランのご両親が車を出してくれるそうで、一緒にあちこち連れていってもらえることになった。
行きたい場所を聞かれてもよくわからないので、悩んでいたところ、
「魔王城も見学できるぞ」
とブランのお父さんに言われ、
「そこ行きたいです!是非お願いします!!」
俺は即答した。
とはいえ、昼食がまだだったので近くのファミレスに入る。
ブランのご両親が奢ってくれるらしい。
「ほら、男の子なんだから遠慮なく大盛り食べなさい」
そうは言われても、遠慮してしまうのは仕方ないだろう。
でも、断るのも失礼かなと思って言葉に甘えることにした。
「ドラゴンを倒した子って聞いて、てっきりもう少し肉付きのいい子かと思ってたけれど、ちゃんと食べなきゃダメよ?」
「あ、はい」
ブランのお母さんに言われ、曖昧に返す。
ちゃんと食べてはいるんだ。
野菜中心で、なんだかんだ動いているのと、あとはアレだストレスのせいで胃がやられてて食べる量が少ないってのを除けば、ちゃんと三食きっちりたべている。
……言葉に甘えたのはいいけど、ちゃんと残さず食えるかな?
それが心配だった。
ま、そんな心配は杞憂に終わったけれど。
意外とその場の勢いで食べれてしまった。
でも、こんなに食べたの久しぶりだ。
ファミレスを出て、駐車場へ向かう。
少し離れた場所の駐車場しか空いて無かったからだ。
これはまぁ仕方ないだろう。
なにせ、年末だ。
あちこちの駐車場に、観光目的らしい車が停まっている。
その途中、俺たちはその現場に遭遇した。
人が多い場所にはトラブルが付き物だ。
なんかやたら五月蝿いエンジン音が聞こえるな、と思っていたらすぐ近くの道路を、暴走族らしき集団が通り抜けて行った。
と、その中のニケツしていた一人がこちらを見た、ように感じた。
フルフェイスのヘルメット越しなので顔をこちらに向けただけかも知れないが。
ヘルメットをしていない者もいる。
それこそブランが学園でしている髪型、モヒカンなどの特徴的なそれと服装をした集団だ。アレで暴走族じゃないならただのコスプレライダー集団である。
「うそだろ」
すぐ隣から、そんな声が聞こえた。
声の主は、ブランだった。
ブランは、驚きと絶望の入り交じったような複雑そうな表情を浮かべていた。
もしかして、知り合いでもいたのだろうか?
今見たものが信じられない、とでも言いたげにブランは暴走族が去っていった方向を見つめ続けていた。
それとなく、ブランのご両親もみてみる。
こちらは普通に驚いている表情だった。
ふむ、ということは、やっぱりブランの知り合いがいたんだな。
で、滅茶苦茶にイメチェンしていた、といったところだろうか。
さて、目的の魔王城へ着いた。
ご両親は近くのカフェで待っているらしい、俺とブランで見学することになった。
ブランがガイドである。
なんでも、学校行事などで年一回遠足やらで来てたらしい。
さすが地元住民と言うべきか。
受付で学生証を見せる。
かなりの格安料金で見学できるようだ。
城、という言葉のイメージを崩さない建物の中に入る。
実際ここでは魔王や魔王軍関係者が働いているらしい。
見学用に解放されている場所には、さすがに観光客と見学ルート専門の従業員しないなかったけど。
あちこちに歴代の魔王の肖像画が飾られている。
展示物は色々あったが一番人気は、過去の魔王と勇者が身につけていた武器や防具のレプリカのコーナーだった。
かく言う俺も夢中になってしまい、ブランに呆れられてしまった。
それはそうと魔王肖像画と説明を見て意外だったのは、どうやら魔王は血筋ではなれないらしいということだった。
てっきり血筋かな、と思っていたがどうやら魔王はそれだけではなれないらしい。
肖像画の面差しはみんな違っていた。
名前、姓もみんな違っていた。
疑問に思って、ブランに訊ねると説明してくれた。
「魔王は魔族の中から見込みのあるやつを見繕って戦わせて決める。
魔王の任期は、だいたい十年から二十年。この任期の間に次の魔王候補が選ばれる。
今代の魔王様は八歳の時に魔王になった。
以来、十余年、この魔界に君臨して統治を続けている」
ちなみに、ブランが魔王候補になったのは中学時代のヤンチャが原因らしい。
何をしたんだか知らないが、ヤンキーは元からか。
先程の暴走族の話は、たとえ雑談でも出てこなかった。
気にはなるけど、無理に聞くほどの話ではないか。
それこそ冬休みが明けて、学校が始まって覚えてたら聞けばいいか。
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