【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】

一樹

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【もう】おまいら、愚痴聞いてくれ【ヤダ(´;ω;`)】

裏話5

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 生徒達の魔法や武器が効かなかった理由は、物凄く単純なものだった。
 練度が低い上、誰も戦い方を知らないのだ。
 そりゃそうだ、と改めて思い直すしかなかった。
 そんな日に何度も作物や家畜を狙って現れるドラゴンを退治する、なんてことは普通の家庭だとやらないのだ。
 そもそも普通の家庭には愛玩動物ペットはいても、家畜はいない。
 プランターか、少し広めのレンタルできる土地での家庭菜園はあっても、農園のような広さで作物を育てる、なんてこともない。
 だから、害獣に襲われることもその対処も知らないのだろう。
 俺は走りつつ携帯端末を確認する。
 ギリ圏内だ。
 学園へ救援要請のメールを送る。
 俺の事を信じて来てくれることを祈るしかない。

 そもそも、である。
 山で熊と遭遇したら刺激させないようにして逃げる、これが鉄則であり常識だ。
 そして、これはドラゴンにも言える。
 俺がさっき、鉈で倒したドラゴン。
 あのドラゴンに遭遇した時に、刺激させず逃げるのが本来の正解だったのだ。
 だけど彼らは魔法や武器で応戦してしまった。
 きっと、教師達もそうなのだろう。
 まぁ、いいや。それはもう終わったことだ。
 さて、新しく現れたあのドラゴンは生徒達の怯えを理解しているようにも見えた。
 理解した上で楽しんでいるように見えた。
 猫が生け捕りにしたネズミや虫をジャレ殺す時のような、そんな感じである。
 それでいて、俺の存在にも気づいているだろうに、まるでこちらの反応を窺っているようだ。
 仲間を殺された怒りか、挑発しているのか。
 少なくとも、すぐ殺せるのに生徒達を殺さないのは人質としての価値を理解している可能性がある。
 人もドラゴンと同じく群れの仲間を助けに行く存在と理解しているのかもしれない。


 現場に到着する。
 生徒達があのドラゴンを倒そうと躍起になっていた。
 
 「おい! お前らあっちに走れ!!」

 俺は叫ぶ。
 近くにいた名前も知らない生徒達の肩を掴んで、声をかける。
 でも、

 「うるさい!! さわるな!!」

 「底辺が何しに来た?!」

 「役立たずは引っ込んでろ!!」

 「逃げるならお前だけで逃げろ!」

 と、取り付く島もない。
 誰も彼もが、恐怖を覚えつつもこのドラゴンを倒せば一躍英雄の仲間入りができる、とでも信じている顔をしていた。
 そうこうしているうちに、ドラゴンが少し距離を置いてタメの姿勢になる。

 まずい!!

 俺は、近くにいた生徒二人を片手で引っ掴んでその場を飛び退く。
 一瞬遅れて、今までいた場所。
 生徒達が集まってドラゴンへ攻撃魔法を仕掛けていた場所に、炎が吐かれる。
 ドラゴンの攻撃でも、最もポピュラーな吐息攻撃ブレスだ。
 あっという間に、生徒達が火達磨になりバタバタと倒れ動かなくなる。

 「うそ、うそ、いやぁ!!」

 俺が引っ掴んでいた生徒の一人、女子生徒がそんな声をあげる。
 もう一人は、今気づいたがあのモヒカンだった。
 二人は、目の前の光景が受け入れがたいようで、固まっている。
 俺は二人から手を離すと、言い聞かせる。

 「おい!出口まで走れ!!そっちが近い!
 早く!!」

 「でも、でも!!」

 「他の生徒達ヤツらに伝えろ!ヤバいって!!
 学園に連絡できるなら連絡とれ!
 助けに来てもらわないと全滅する!!」

 女子生徒は、それでもなんとか走り出した。
 続いてモヒカンが走り出そうとして、体の向きを変えた。
 見れば別の生徒が果敢にもドラゴンへ武器を手に突っ込んで行く姿があった。
 あの生徒を助けに行ったようだ。

 「どいつもこいつも!!」

 俺は、吐き捨ててその背を追う。
 モヒカンが、無謀な挑戦者に追いついた。
 止めに入る。
 言い争いが始まる。
 その向こうでは暴れているドラゴン。
 と、そのドラゴンの尻尾が二人へと襲いかかってきた。

 「くぉんの!!」

 俺は二人へ飛び蹴りをかます。
 二人は吹っ飛び、なんとかドラゴンの尻尾からは逃れられた。
 しかし、俺は逃げ遅れ尻尾の直撃を食らってしまう。

 そこそこの大木に体が打ち付けられる。
 くっそ痛てぇ!!
 やっべ、ガチで骨折れたかも。

 早めにケリつけるか。
 ここまでドラゴンが暴れたなら多少他の生徒が巻き添えくっても、もう知らん。
 よし、背骨と首は大丈夫だ。まだ体が動く。

 俺はなんとか手放さないでおいた鉈を強く握り、なんとか地面に立つ。
 そして、痛みを無視して走り出した。
 足は幸い折れていないようで助かった。
 思いっきり跳んで、ドラゴンの頭上を取る。
 そして、鉈を振るう。
 首が輪切りになって、ドラゴンの体が地に落ちた。

 「毒餌、無駄になったか」

 ま、仕方ない。
 俺も落ちた。
 しかし運良く木の枝に引っかかったので、二度目の全身打ち付けは回避出来た。

 「あー、くっそ痛てぇ」

 呟いた直後、下から声が届いた。

 「おい!! いるか?! 無事か!!??」

 見ると、あのモヒカンが叫んでいた。

 「なんとかー」

 俺は短く答えた。
 それだけなのに、体へ激痛が走った。
 そして、この直後学園から助けがやってきたのだった。

 どうでもいいけど内臓やられてなけりゃいいな。
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