【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田

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ちょっとアンドロイドの中身になって失恋したと知った

失恋したとしった

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 バレリーナロイドの一体となった私はダンスを披露した。バレリーナロイドも含むアンドロイドのようなロボットで一番高価なのは機体を動かす機構とそれを統括するAIだという。そのため、高価な部品を使わなくてすむ方法が人間が直接内臓になることだ。そう機ぐるみを着込めばいいわけだ。

 その機ぐるみには生体維持装置と人間の脳と脊髄神経伝達系を操縦するAIが組み込まれていて、わたしはそのAIに身体を委ねるだけでよかった。だから意識がなくても・・・居眠りしていても勝手に踊ってくれるわけだ。でも、自分がバレリーナをするロボットになったかのような感覚に興奮するので、そんな暇なんかなかったけど。

 いくつかのステージを終わったあと、わたしたちバレリーナロイドは観客とグリーティングしはじめた。このステージの周囲は巨大なレストランがあって、カジノ場まで併設された退廃的な雰囲気が漂っていた。このバイト先の店のコンセプトはサイバーパンクなので、機械化されたという設定の機械たちが接客していた。その機械たちも真正のアンドロイドのほか人間も何割かいるはずだという。

 いくつかに観客と触れ合っていると、ボックス席から呼ぶ声が聞こえた。わたしは飽き飽きしていたので、自分の身体は動くけど眠たくなっていたけど、その声にドッキ! とした。その声は・・・憧れの大学の先輩だった!


 「今日はお越しいただきありがとうございます」

 人工音声で答えるAIだが、わたしは唖然としていた。先輩の脇には彼女らしい存在を確認した!

 「そうかしこまらなくていいから。セクハラになるかもしれないけど、君のボディを鑑賞させて! 彼女のリクエストだから」

 上機嫌な先輩の声に動揺していたわたしはそこから逃げ出したかった。でも、それは不可能だった。わたしの身体はAIに主導権が渡されていたから。そしてわたしの心とは裏腹な行動をしはじめるのだ!

 「セクハラって概念はございませんわ、なぜならわたしたちは人類に奉仕するバレリーナロイドですから。破壊活動など法律に抵触しなければ大丈夫ですわ」

 そういって二人の前に対面する形でたった。隣の彼女はマジマジと見つめていた。

 「まるで人間みたいだね。本当は人間が入っているんじゃないのよ?」

 「そんなことないさ! サイバーパンクといえば人間の身体の一部を機械にするっていうけど、この機体は完全にロボットさ! 」

 「それもそうよね。言われてみれば生身の人間が入っていたら熱くてしかたないよね」

 「そうさ! 真夏に怪獣のキグルミ着ている奴がいないだろ。そうですよね、バレリーナさん?」

 「そうですわ。軍事用のパワードスーツって装甲が分厚いでしょ! だから人間が入っていることはないですわ」

 そう、AIはわたしという人間の存在を否定した。しかも眼の前でイチャイチャしている憧れの先輩・・・片思いであったけど、それが崩れ去って泣いていた、わたしは!

 でも、分厚い外骨格を構成するフェイスガードはそれを外部に見せることはなかった。そのあと数分間、わたしのボディを触れていた二人がいたが嫌悪感しかなかった! わたしは失恋したことを思い知らされた、機械のボディの中で! 人生でもおそらく最悪な時間を過ごした! 
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