鋼の殻に閉じ込められたことで心が解放された少女

ジャン・幸田

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引きこもりの少女の運命は

変な男

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 その日、葬儀が行なわれていた祖母との思い出はほとんどなかった。最後に会ったのは随分前の話だったし、そのときは認知症などで寝たきりだったので、言葉も交わしたこともなかった。それに、家族葬だったので参列者も20人前後しかいなかった。その中に私と母もいたが、他にもがいるようであったが、なぜ私のように両親が離婚して家を離れてしまった者が参列したのか、違和感があった。でも、そのときは数年ぶりの外出で精神が動揺していたので完全に貝のようになっていた。


 祖母を荼毘に付されお骨上げの儀まで待合室で何もすることな窓からツバメを見たあと、視線を部屋の中に戻すと母が誰かと話をしていた。その男は確か父の姉の夫なので私とは全く血が繋がっていない親戚だった。その男は背が低く肥満体で頭が禿げていて太い縁のメガネをかけていた。これぞおっさんという風貌だった。そんな男と何を話しているのだろうか? しかも私の方をチラチラ見ているし。私は気が付かないふりをして壁際に視線を向けていた。
だいたい、数人しかいなくても大人数の前にいるのが苦痛なのに。

 それから、時間が過ぎて祖母のお骨上げが行なわれた。私は他の人たちがやるのを端から傍観していた。あまり印象がない祖母であるが、喪主のおじが骨壷を持ちながら涙をながしていた光景は少しはこころは動いていたけど、あとから思えば私はほとんど無表情だったと思う、血の通わない人形か機械のように。それにしても、人間が死んだた白い灰だけになるのはなんと表現すればいいのだろうか?

 それが終わると祖母のお骨は叔父に抱かれ、他の家族がお位牌や遺影を持って葬儀社のバスに乗って去っていった。その場に残ったのは、私と母と叔母夫婦・・・あの変な男も一緒だった。

 「ママ、どうやって帰るのうちに?」

 私は不安になっていた。その日は電車で来てタクシーにのって斎場にやってきたので、どう家に戻るか考えていなかった。今日やってきたところはどこなのかよくわかっていなかった。


 「それだけど・・・西岡おばさんたちと一緒に乗って帰るのよ。その前に立ち寄るところもあるし・・・」

 母の言い方はなんか不安であった。それにあの変な男と一緒なんて! 本当なら逃げ出したかったけど、知らない町にいるのにできるはずもなかった。でも、本当なら逃げ出した方がよかったが。

 「心配しなくてもいいよ、悪いようにならないから」

 叔母さんはそう言ってくれたが、たしかに立ち寄ることであった、それが年単位であったけど・・・
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