鋼の殻に閉じ込められたことで心が解放された少女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
2 / 4
引きこもりの少女の運命は

外のツバメ

しおりを挟む
 激しい雨が上がり夏の猛烈な日差しが雲を蹴散らすかのように窓に広がってきた。その青空には巣立ちして間もない幼いツバメたちが危なっかしく飛んでいた。どうも敷地内にある何処か巣があるようだ。それは若い生命力をめいいっぱい発露しているかのようだ。

 それを見つめる私は・・・憂鬱だった。無理やりここに連れてこられたから。外出するのはいつからしていないのか忘れてしまった。私は友梨、普通の少女ではなかった。ずっと引きこもりしていた・・・


 その日は父方の祖母の葬儀だった。父、といっても両親は別れているので本当は他人みたいなものだけど、父が遠い国に行ってしまっているので、代わりってことかもしれないと思っていた。

 葬儀、といっても家族葬なので参列者は多くなかったが、荼毘について来たのは10人もいなかった。なぜ、私が連れてこられたのか分からなかった。

 元々、私が引きこもりになったのは小学校の6年の時にひどいイジメにあってしまい、人と接するのが恐ろしくなったのが原因だ。それで中学校は全部欠席したのだけど、何故か卒業したことにされた。全く登校もしないしリモートで授業にも参加していないのに。

 それはともかく、私が喪服の代わりに着ていたのは真っ黒いセーラー服だった。一度も登校しなかった中学校のだ。母に二度買ってもらったけど今日が初めて着た。本当は買いに行けばいいけど、祖母が亡くなったのは急だったし、洋服を買いに行くのは恐ろしいし。

 祖母の遺体が荼毘に付されている間、私達がいたのは火葬場の待合室だった。この部屋にいるのはすべて親戚のはずだったが、顔と名前が一致しなかった。従姉妹もいるはずだけど、話をすることもなかった。私のほうが拒否反応を示していたし・・・

 事前に、親戚には母が引きこもりなので配慮してほしいと言ってくれたようで、話しかける事もなかった。でも、私は恐怖心から部屋の隅っこの方でか弱いウサギのように窓の外に視線を向けていた。その時見たのがツバメたちだった。

 私も引きも持っていたら駄目だと思っていた。もうすぐ17歳なのに学校にも行かず部屋に閉じこもって何もしなかった。勉強するのもゲームすることもなく、ただ無為の時間を過ごしていた。後で振り返ってみても、何も思い出すことが何もなかった。あまりにも無感動な人生だったので祖母の葬儀の記憶もカゲロウのようであった。そんな私はツバメの姿を見て、どこかに行かないといけないと思った。でも、どこに行けばいいの?


 そう思った直後に新たな展開が起きようとしていたとは思ってもいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!

ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった! もしかすると 悪役にしか見えない? 私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」 そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!

スレイブZ!

ジャン・幸田
ホラー
 「今日からお前らの姿だ!」  ある日、地球上に出現した異世界人は地球人たちの姿を奪った!   「スレイブスーツ」と呼ばれる全身タイツのようなのを着せ洗脳するのであった。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

転校先は着ぐるみ美少女学級? 楽しい全寮制高校生活ダイアリー

ジャン・幸田
キャラ文芸
 いじめられ引きこもりになっていた高校生・安野徹治。誰かよくわからない教育カウンセラーの勧めで全寮制の高校に転校した。しかし、そこの生徒はみんなコスプレをしていた?  徹治は卒業まで一般生徒でいられるのか? それにしてもなんで普通のかっこうしないのだろう、みんな!

人形娘沙羅・いま遊園地勤務してます!

ジャン・幸田
ファンタジー
 派遣社員をしていた沙羅は契約打ち切りに合い失業してしまった。次の仕事までのつなぎのつもりで、友人の紹介でとある派遣会社にいったら、いきなり人形の”中の人”にされたしまった!  遊園地で働く事になったが、中の人なのでまったく自分の思うどおりに出来なくなった沙羅の驚異に満ちた遊園地勤務が始る!  その人形は生身の人間をコントロールして稼動する機能があり文字通り”中の人”として強制的に働かされてしまうことになった。 *小説家になろうで『代わりに着ぐるみバイトに行ったら人形娘の姿に閉じ込められた』として投降している作品のリテイクです。思いつきで書いていたので遊園地のエピソードを丁寧にやっていくつもりです。

処理中です...