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突然帰ってきたあの人

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 七年も白い結婚の嫁なのに嫁ぎ先を追い出されない理由はあった。お姑さんにとって私は一家の大黒柱だったから。戦争中は軍人であるあの人の給料と裕福だったので蓄えもあったので、経済的に問題はなかったので、息子が帰ってきてから後の事を決めるつもりだったようだ。

 しかし国が破れると状況は一転した。敗戦直前の敵による空襲で屋敷を失い、財産の大半を国が特別富裕税の名の元に没収されたわけだ。なんでも国家予算の40年分を戦争につぎ込んでいたので、その穴埋めの為だった。おかげで、この国から金持ちがいなくなってしまった。

 そんな困窮した時、私が発案した婦人服が爆発的に売れ、今では工場や販売店を幾つも持つまでになった。お姑さんも私を認めなければならなくなったわけだ。でも、問題はあった。私に子供がいない事だ。そのため、夫の妹を養子にするか、妹が婿を貰ってこの家を継がせるかの選択に迫られていた。

 前者だと私はお姑さんの家にずっと縛られてしまうし、後者だと私は出ていくしかないし、お姑さんと妹が困ることになる。この家は代々高位の軍人を輩出した武門の誉れ高い家で、出来れば断絶を免れたいというわけだ。もっとも仕えてきた帝国軍は解散させられ、今は国家防衛隊に格下げされてしまったが。

 私は元の屋敷があったところに事務所を構えていた。そこで多くの従業員を抱え忙しくとも充実した日々を過ごしていた。お姑さんから私の好きにしてもいいといわれていたので、迷っていた。生死不明で帰ってくる可能性がない息子を待つのは辞めてもいいというのだ。とりあえず私は夫の妹に大学卒業まで経済援助をすることを約束した。あとは妹の意思次第というわけだ。

 そんなある日、突然あの人が戻て来た。しかも見知らぬ美しい人と一緒に。でも、その美しい人は人間ではないとの指摘を従業員たちがし始めた。少年にも少女にも見えると、まるで精霊か妖精ではないかと。私が目にした時も同じことを想っていたが、とりあえず口を開くのを待っていた。もしかすると妻もしくは愛人などというかもしれないと。七年も戦場を駆けずり回ったので本当に妻にした女の事など忘れていたのかもしれないと。でも意外な言葉が返ってきた。

 要約すると次のようなことだった。自分は残虐行為と聖域を犯したため、かの地の精霊王の逆鱗に触れ罰を受けてしまった。横にいるのは審判をするために派遣された者で、いかなる罰を受けるのか決めるという。一体それって? 意味がわからなかった。
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