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七年も

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 私がこの家に嫁いできて七年が経っていた。その大半をお姑さんと一緒だったけど、主人となったあの人と過ごしたのは結婚式の前後数時間しかなかった。

 軍人というもの任務があれば、何か月何年も留守にするのは当たり前なのかもしれないけど、私の場合は極端だった。式の当日には出て行ってしまったから。結局、満足に顔を見る事も叶わなかった。そのため、結婚生活はお姑さんに嫁として厳しく指導される日々だった。

 私の場合、恋といえるものは一度しかなかった。女学校に通っていた時に担任の教師に対してだ。でも、その恋は実らなかった。なぜなら初恋が実って結ばれても幸福になどならないと聞かされていたから最初から諦めていた。だから、親が決めた相手の殿方と添い遂げるしかないと信じて疑わなかった。なのに!・・・七年も放置ですか?

 七年前に戦争が始まったけど、当時の指導者は一か月もすれば完全勝利に終わるだろうと楽観的な事を主張していた。現在は愚かな考えだと罵倒出来るけど当時は批判などすれば非国民として犯罪者扱いされる状況だった。だから、夫になったあの人はすぐに戻ってくれるし、甘い新婚生活というのを少しは経験できるかもと幻想を抱いていた。なのに・・・



 戦争が終わったのは二年前だけど、私が住んでいる国は無条件全面降伏、負けてしまった。国は占領され武装解除のうえ新たに政府が樹立されたけど、それでもなおあの人は帰ってこなかった。所属していた部隊は全滅したわけではないけど行方不明だという。生死不明の状態なので私は中途半端な立場だった。ようやくお姑さんに嫁として一人前だと認めてくれたというのに。

 
 嫁として、家事は出来るし家計のやりくりも出来るし、生活を支えるための商売も軌道にのってきた。また夫の幼い妹の世話までしている。私が家を支えているといってもよかった。それでも尚不完全な事があった。私が処女のままだから・・・七年も妻をやっているのに生娘のままだった、もう25なのにね。

 フツーなら結婚して三年たっても子を成さない場合は離縁されても仕方ないところだけど、私の場合はずっと主人が不在だった。休暇を貰っても帰宅できないぐらい遠いところに派遣されていたから。こんなことになるなら、初夜ぐらいは真面にしてもらいたかった。白い結婚だなんて恥ずかしくて人に言えないじゃなののよ、七年もたつというのに!
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