婚約していたことを忘れていたので破棄するなんて私にとっても都合良いですわ

ジャン・幸田

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 闘技場の興奮は最高潮であった。今まで見たことのない決闘を想っての事だ。女性と男性が戦う、しかもハンデなしでやるとどうなるのかと。

 二人は貴賓室にいる国王陛下に臣下の礼を取った。その瞬間、観客も同様な行為をしたので静まり返ったが、二人が兜をかぶったとき、歓声がまた高まった。

 「それでは二人の決闘を執り行う。この決闘は仇討ではないので勝者は敗者に対し一つだけ望むことが出来る! なお、それは敗者が生きていた時に限る! また、規則は長槍による試合と同様とする。どちらかが戦意を喪失するか騎馬の下に落ちれば終了だ!」

 そう宣言したのは騎士団長であった。形の上では騎士団に決闘を申し込んできたので、ケネスサイドとして出ていた。一方のカリンの側にはローザが甲冑姿でいた。

 「いいのカリン? 本当に?」

 「いいよ、かならずケネス様のお嫁さんになるのよ! どんな結果になっても!」

 二人が位置についた時、国王陛下の前には大きな鐘が用意されていた。御前試合でもあるので決闘の開始は国王が決めるわけだ。その瞬間を全観客が待っていた。そして陛下が鐘を鳴らす装置に指を掛けた瞬間、二人は猛スピードで闘技場の中央に駆け出し、激しく槍が衝突した。その勢いは激しいモノであり、並みの騎士なら吹き飛ばされてもおかしくないものだった。しかし、二人にとって、それは準備運動であった。

 激しい金属音が連打によって生み出され、それをリズムとして観客の歓声も大きくなった。二人は互角と言ってもよかった。でも、ローザだけは不安になっていた。


 「カリンって、持久力に難があったはずじゃ・・・これでは勝てないわ!」
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