23 / 27
22 (カリン父目線)
しおりを挟む
決闘、その目的は敵討ちもあれば名誉を守るためなど様々なものがある。はたまた勝敗をなんらかの理由で決めないといけない場合もあるだろう。また決闘は生死にかかわることもあるので、気軽に出来るものではないはずだ。なのにカリンといったら・・・
カリンの父であるツーゼ伯マイヤーは呆れていた。陛下からカリンに決闘の勅許を下賜したと伝えられたからだ。カリンが懇願した決闘は「愛の決着」という種類のものであった。それは男女で身分の格差が拭えないほど大きい場合などに行われるもので、決闘によって男女の関係すなわち夫婦になるか決めるというものであった。
言い伝えによれば、一方的な婚約破棄を是としない女が、相手の男と決闘して討ち果たしたことから来たとされていた。婚約破棄の責めを男に負わすためであったが、男女とも生き残れば男は女と結婚しなければならない定めもあった。だから男は結婚が嫌なら勝たないというわけだ。そんな「愛の決着」をカリンが言い出すなんて・・・
マイヤーは王城で与えられた執務室の椅子の上で天を仰いでいた。相手になるケネスにカリンが勝つのは容易ではなかったからだ。体格差があまりにも大きいのだ。それなのにカリンが提案した決闘方法は騎乗しての長槍戦であった。いくらケネスは腕の腱を痛めているとはいえ、手の長さの差があるのでカリンが父親譲りの腕をしていても苦戦しそうであった。
「おい、フローレンス! お前の娘らしいな、同じことをするなんて!」
その名前は亡きカリンの母でマイヤーの妻の名だった。彼女も子爵令嬢であったが、当時一介の騎士だったマイヤーへの求婚を「愛の決着」でしてきたのだ。その時の結果は・・・であるから、カリンがこの世に誕生したわけだ。
「それにしても、あいつに心を奪われていたなんて・・・気が付かんかった! もし、先に気付いていたら・・・」
そういったところでマイヤーは言葉を飲み込んだ。本音をいえばカリンがケネスと結婚するのは反対だった。年齢差もあるし身分の差も。それに旧敵国の騎士というのも問題になりそうだった。とにもかくにも反対する理由は数多くあった。だからカリンは国王陛下を利用したわけだ。勅許を得た求婚行為を止めるのは父であっても出来なかった。
「ケネスはどう思っているんだろうか? カリンの事を。あいつが受け入れるのだろうか?」
マイヤーはケネスに勝ってもらいたかった。でも、それでは娘が傷だらけになってしまうので不憫であった。すべては三日後の決闘で決まる事であった。
カリンの父であるツーゼ伯マイヤーは呆れていた。陛下からカリンに決闘の勅許を下賜したと伝えられたからだ。カリンが懇願した決闘は「愛の決着」という種類のものであった。それは男女で身分の格差が拭えないほど大きい場合などに行われるもので、決闘によって男女の関係すなわち夫婦になるか決めるというものであった。
言い伝えによれば、一方的な婚約破棄を是としない女が、相手の男と決闘して討ち果たしたことから来たとされていた。婚約破棄の責めを男に負わすためであったが、男女とも生き残れば男は女と結婚しなければならない定めもあった。だから男は結婚が嫌なら勝たないというわけだ。そんな「愛の決着」をカリンが言い出すなんて・・・
マイヤーは王城で与えられた執務室の椅子の上で天を仰いでいた。相手になるケネスにカリンが勝つのは容易ではなかったからだ。体格差があまりにも大きいのだ。それなのにカリンが提案した決闘方法は騎乗しての長槍戦であった。いくらケネスは腕の腱を痛めているとはいえ、手の長さの差があるのでカリンが父親譲りの腕をしていても苦戦しそうであった。
「おい、フローレンス! お前の娘らしいな、同じことをするなんて!」
その名前は亡きカリンの母でマイヤーの妻の名だった。彼女も子爵令嬢であったが、当時一介の騎士だったマイヤーへの求婚を「愛の決着」でしてきたのだ。その時の結果は・・・であるから、カリンがこの世に誕生したわけだ。
「それにしても、あいつに心を奪われていたなんて・・・気が付かんかった! もし、先に気付いていたら・・・」
そういったところでマイヤーは言葉を飲み込んだ。本音をいえばカリンがケネスと結婚するのは反対だった。年齢差もあるし身分の差も。それに旧敵国の騎士というのも問題になりそうだった。とにもかくにも反対する理由は数多くあった。だからカリンは国王陛下を利用したわけだ。勅許を得た求婚行為を止めるのは父であっても出来なかった。
「ケネスはどう思っているんだろうか? カリンの事を。あいつが受け入れるのだろうか?」
マイヤーはケネスに勝ってもらいたかった。でも、それでは娘が傷だらけになってしまうので不憫であった。すべては三日後の決闘で決まる事であった。
2
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。
夢草 蝶
恋愛
公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。
そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。
私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです
もぐすけ
恋愛
カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。
ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。
十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。
しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。
だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。
カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。
一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
(完結)モブ令嬢の婚約破棄
あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう?
攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。
お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます!
緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。
完結してます。適当に投稿していきます。
うちの王族が詰んでると思うので、婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?
月白ヤトヒコ
恋愛
「婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?」
わたしは、婚約者にそう切り出した。
「どうして、と聞いても?」
「……うちの王族って、詰んでると思うのよねぇ」
わたしは、重い口を開いた。
愛だけでは、どうにもならない問題があるの。お願いだから、わかってちょうだい。
設定はふわっと。
【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた
東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」
その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。
「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」
リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。
宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。
「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」
まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。
その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。
まただ……。
リシェンヌは絶望の中で思う。
彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。
※全八話 一週間ほどで完結します。
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる