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22 (カリン父目線)

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 決闘、その目的は敵討ちもあれば名誉を守るためなど様々なものがある。はたまた勝敗をなんらかの理由で決めないといけない場合もあるだろう。また決闘は生死にかかわることもあるので、気軽に出来るものではないはずだ。なのにカリンといったら・・・

 カリンの父であるツーゼ伯マイヤーは呆れていた。陛下からカリンに決闘の勅許を下賜したと伝えられたからだ。カリンが懇願した決闘は「愛の決着」という種類のものであった。それは男女で身分の格差が拭えないほど大きい場合などに行われるもので、決闘によって男女の関係すなわち夫婦になるか決めるというものであった。

 言い伝えによれば、一方的な婚約破棄を是としない女が、相手の男と決闘して討ち果たしたことから来たとされていた。婚約破棄の責めを男に負わすためであったが、男女とも生き残れば男は女と結婚しなければならない定めもあった。だから男は結婚が嫌なら勝たないというわけだ。そんな「愛の決着」をカリンが言い出すなんて・・・

 マイヤーは王城で与えられた執務室の椅子の上で天を仰いでいた。相手になるケネスにカリンが勝つのは容易ではなかったからだ。体格差があまりにも大きいのだ。それなのにカリンが提案した決闘方法は騎乗しての長槍戦であった。いくらケネスは腕の腱を痛めているとはいえ、手の長さの差があるのでカリンが父親譲りの腕をしていても苦戦しそうであった。

 「おい、フローレンス! お前の娘らしいな、同じことをするなんて!」

 その名前は亡きカリンの母でマイヤーの妻の名だった。彼女も子爵令嬢であったが、当時一介の騎士だったマイヤーへの求婚を「愛の決着」でしてきたのだ。その時の結果は・・・であるから、カリンがこの世に誕生したわけだ。

 「それにしても、あいつに心を奪われていたなんて・・・気が付かんかった! もし、先に気付いていたら・・・」

 そういったところでマイヤーは言葉を飲み込んだ。本音をいえばカリンがケネスと結婚するのは反対だった。年齢差もあるし身分の差も。それに旧敵国の騎士というのも問題になりそうだった。とにもかくにも反対する理由は数多くあった。だからカリンは国王陛下を利用したわけだ。勅許を得た求婚行為を止めるのは父であっても出来なかった。

 「ケネスはどう思っているんだろうか? カリンの事を。あいつが受け入れるのだろうか?」

 マイヤーはケネスに勝ってもらいたかった。でも、それでは娘が傷だらけになってしまうので不憫であった。すべては三日後の決闘で決まる事であった。
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