婚約していたことを忘れていたので破棄するなんて私にとっても都合良いですわ

ジャン・幸田

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18(女性騎士)ローザ目線

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 ローザにとってカリンは常にトップを争っている女騎士のライバルであった。でも一方で良き友人でもあり、また主従関係にあった。騎士団では対等でも貴族の社交界ではローザの方がいつも侍女として振舞っていた。それに不満がないわけでもないが、カリンの父であるツーゼ伯は孤児だったローザを騎士団で保護してくれた恩人だった。

 そんなことで騎士では特別な事でもなければ入れない王宮に侍女として一緒に行ったローゼはそのまま王宮内に宿泊していた。結局のところ婚約破棄に関する裁判が深夜となったため、火急の要件がなければ王宮の外に出られなくなったため、特別に泊まることになった。

 あてがわれた部屋は男だったら衛兵部屋であるが、女だというので女官部屋の空き室だった。普段は使われていないとはいえ、それでも騎士団の宿舎よりも綺麗だった。そこで二人とも堅苦しい宮中用のドレスを脱ぎ捨て、普段着ている女騎士の夜の衣装に着替えていた。それは、火急な要件の時に出兵できるように準備しているものであったが、今のところそんな状況でもなかった。ただ、こんな時には役に立った。着替えはそれしか持っていなかったから。

 「ねえカリン大丈夫なの?」

 ローザはいつもの調子に戻っていた。騎士団のメンバー同士では騎士階級が優先し身分階級は関係しないというツーゼ伯の方針で、同期の二人はタメ口で構わないわけだ。

 「まあ、衝撃ショックを受けなかったといえばウソになるけど、結果としてよかったわ。これでケネス先生にお願いできるわ。本当に都合よかったわ、陛下のお墨付きをいただけたしね」

 カリンの表情は疲れていたが嬉しそうだった。彼女の想い人はケネスだから。

 「でも、騎士団長は許してくれるかな? それにケネス先生も・・・先生の方が問題よ! なんだって女の気配もないし、男が好きだという噂もあるし」

 「そうね、でも騎士って本当に強い相手を結婚相手パートナーに選ぶでしょ! だから相手の事など何もわからなかった元婚約者よりも絶対いいわよ」

 二人は騎士の夜の衣装に着替えた。それはそのまま甲冑を羽織ってもいいように比較的軽装だった。そして女性の場合は体形ボディラインがはっきりしてしまう。二人とも騎士として鍛えられているので筋肉質な体つきだった。

 「そうよね! やっぱり男は強くなければね。それにしても大丈夫なの? ケネス先生って鈍感だと思うよ」

 ローザがそう言うとカリンはクスクス笑いだした。
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