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9.(ツファードルフ伯爵夫妻目線)
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ハインツの両親であるツファードルフ伯爵はパーティーの前日に自分たちの六男ハインツがやろうとしていることを知るところとなっていた。三年間も真面に連絡がなく現在どのような状況に置かれているのかわからなかったが、”連絡がないのは無事な知らせ”と良いように都合よく解釈していた。実は夫婦の、ハインツの兄や姉たちの就職や結婚などを決めるため様々な事柄が忙しく、とりあえず婚約者が決まっているハインツは放置していた状態だった。それでも。一応は婚約者カリンについて何らかの行動をするようにと伝えてはいたが・・・
そんなハインツも18歳になり戻ってくるという知らせが来たのは三週間前の事だった。これでようやくカリンとの正式な婚約式や結婚式、それに婚礼披露宴などといった行事が出来ると喜んでいた矢先の事だった。ジーゼル帝国に駐在する王国政府大使館から、ハインツがファアマスティア貴族からの離脱と帝国女子と婚姻しようとしているとの報告を受けたわけだ。
それで真意を確かめようとハインツ本人と連絡を取ろうとしたものの、ハインツが帰路の旅路についてしまったため捕まえる事ができなかった。その後ハインツから途中で発信した三通の電報で何となく事実を掴むことができたが、それは夫婦からすれば衝撃的な事であった。
第一報(パーティー一週間前)
”ワレ キコクシ ハナシシタイ シヨウサイハ ソノトキハナス”
第二報(乗船前)
”テンコウワルシ フネ デズ トウチヤク オクレル コンヤクシヤ ドウコウス”
第三報 (前日)
”トウチヤク アシタノアサ ユルサレルコト キタイス”
あまりにも電報の文字情報が少ないので推測が入るが、ハインツは帝国から連れてくる女と結婚するのを承諾してもらいたいようであった。
「あいつは・・・思い切ったことをするもんだね・・・結婚相手を紹介するなんて」
ハインツの父は褒めてあげたい気分になっていたが、妻は即座に横やりを入れた。
「あなた! そうじゃないでしょ! ツーゼ家とあの子は婚約しているのよ! 婚約者がいるのにそんなこと出来ないでしょ!」
「ああ、カリンちゃんね。忘れていた! 彼女は競技場では派手な立ち回りするのにうちに来ると大人しいから」
「大人しい? あたりまえでしょ、婚約者がいないのに私たちの前で目立った行動なんかするわけないし」
「とりあえず・・・そうだな。なにすればいい?」
「とりあえずは・・・国王陛下に相談しますわ。それよりもツーゼ家に連絡します?」
「うーん、連絡は・・・直接会場に来てもらう事だけするしかないなあ。もしかするとハインツに婚約者なんていないかもしれないし」
二人ともカリンに情報を流すことに躊躇していた。もしかすると最悪な事態は起きないだろうと楽観視したかったのかもしれない。自分たちの息子が好きな人と結婚するから婚約を破棄したいと言う出すことを信じたくなかったわけだ。
「あのカリンさんて怒ったら恐ろしいかしら? あの子ったらこの前の試合で無慈悲に対戦相手を打ちのめしていたから」
二人の脳裏には、未来の義理の娘になるはずのカリンの女性騎士としての姿が目に浮かんでいた。敵にしたくない娘なのにと思っていた。
そんなハインツも18歳になり戻ってくるという知らせが来たのは三週間前の事だった。これでようやくカリンとの正式な婚約式や結婚式、それに婚礼披露宴などといった行事が出来ると喜んでいた矢先の事だった。ジーゼル帝国に駐在する王国政府大使館から、ハインツがファアマスティア貴族からの離脱と帝国女子と婚姻しようとしているとの報告を受けたわけだ。
それで真意を確かめようとハインツ本人と連絡を取ろうとしたものの、ハインツが帰路の旅路についてしまったため捕まえる事ができなかった。その後ハインツから途中で発信した三通の電報で何となく事実を掴むことができたが、それは夫婦からすれば衝撃的な事であった。
第一報(パーティー一週間前)
”ワレ キコクシ ハナシシタイ シヨウサイハ ソノトキハナス”
第二報(乗船前)
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第三報 (前日)
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あまりにも電報の文字情報が少ないので推測が入るが、ハインツは帝国から連れてくる女と結婚するのを承諾してもらいたいようであった。
「あいつは・・・思い切ったことをするもんだね・・・結婚相手を紹介するなんて」
ハインツの父は褒めてあげたい気分になっていたが、妻は即座に横やりを入れた。
「あなた! そうじゃないでしょ! ツーゼ家とあの子は婚約しているのよ! 婚約者がいるのにそんなこと出来ないでしょ!」
「ああ、カリンちゃんね。忘れていた! 彼女は競技場では派手な立ち回りするのにうちに来ると大人しいから」
「大人しい? あたりまえでしょ、婚約者がいないのに私たちの前で目立った行動なんかするわけないし」
「とりあえず・・・そうだな。なにすればいい?」
「とりあえずは・・・国王陛下に相談しますわ。それよりもツーゼ家に連絡します?」
「うーん、連絡は・・・直接会場に来てもらう事だけするしかないなあ。もしかするとハインツに婚約者なんていないかもしれないし」
二人ともカリンに情報を流すことに躊躇していた。もしかすると最悪な事態は起きないだろうと楽観視したかったのかもしれない。自分たちの息子が好きな人と結婚するから婚約を破棄したいと言う出すことを信じたくなかったわけだ。
「あのカリンさんて怒ったら恐ろしいかしら? あの子ったらこの前の試合で無慈悲に対戦相手を打ちのめしていたから」
二人の脳裏には、未来の義理の娘になるはずのカリンの女性騎士としての姿が目に浮かんでいた。敵にしたくない娘なのにと思っていた。
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