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婚約者ハインツはファマスティア王国国王陛下ルドルフ4世の孫である。だからカリンは未来の義理の孫娘になるはずだった。だからといってパーティー前にいきなり国王陛下に呼び出しを受けるのは異常なことであった。国王陛下のスケジュールは事細かに決まっているし、パーティー直前にすることではなかった。
カリンは招かれたのは、通常の謁見の間ではなく執務室だった。伯爵令嬢が国王陛下と単独で謁見するだなんてありえないことであった。
「おはようございます国王陛下。お招きいただきありがたき幸せと存じます」
カリンは貴族令嬢に相応しい礼儀作法をした。するとルドルフ4世は手招きをした。
「忙しいところすまんな。まあ堅苦しい挨拶はそこそこでいいぞ。こちらに来てくれないか。手短に聞きたいことがあるんじゃ」
「かしこまりました」
カリンは言われるままに執務机の前にすすんだ。すると小さい声で話し出した。
「カリン・ツーゼ。いつも我が国のために騎士道に精進嬉しく思うぞ。それはともかく余が知りたかったことがある。我が孫ハインツの事だ」
「はい」
カリンはこれから何を聞かれるのか緊張していた。そんな緊張は試合でもしないものであった。
「そちはハインツがジーゼル帝国に留学してから何か便りを貰ったことがあるか?」
「いいえ、ハインツ様から挨拶状の一枚もいただいておりません。私もハイツ様が留学生活をお過ごしなのか。様子を伺いしれません。ハイツ様のご両親に近況をお伺いしたこともありますが、特にこれといったことは言われません」
カリンの心にあるハインツは三年前のままだった。それとて親愛の情をいだくものではなかったが。すると国王は頭をかきだした。
「そうかあ、じゃあハインツから何か特別な手紙とかは受け取っていないのだな」
「はい、ございません」
カリンは何故このような事を聞かれるのか分からなかった。でも、相手は国王。迂闊な詮索は危険だと思えた。だから躊躇していた。
「いや、実はなハインツの動向がいまいちわからないんじゃよ。いろいろとジーゼル帝国にいる我が国の駐留武官にも調べさせたのだが・・・とりあえず今日のパーティーはそちにも絶対に出席してもらい。詳しい話はパーティーの後にする。ご苦労であった」
結局、国王からカリンに説明らしいものはなかった。ただ、想像できたのはハインツが何かを企んでいるような予感だけだった。
カリンは招かれたのは、通常の謁見の間ではなく執務室だった。伯爵令嬢が国王陛下と単独で謁見するだなんてありえないことであった。
「おはようございます国王陛下。お招きいただきありがたき幸せと存じます」
カリンは貴族令嬢に相応しい礼儀作法をした。するとルドルフ4世は手招きをした。
「忙しいところすまんな。まあ堅苦しい挨拶はそこそこでいいぞ。こちらに来てくれないか。手短に聞きたいことがあるんじゃ」
「かしこまりました」
カリンは言われるままに執務机の前にすすんだ。すると小さい声で話し出した。
「カリン・ツーゼ。いつも我が国のために騎士道に精進嬉しく思うぞ。それはともかく余が知りたかったことがある。我が孫ハインツの事だ」
「はい」
カリンはこれから何を聞かれるのか緊張していた。そんな緊張は試合でもしないものであった。
「そちはハインツがジーゼル帝国に留学してから何か便りを貰ったことがあるか?」
「いいえ、ハインツ様から挨拶状の一枚もいただいておりません。私もハイツ様が留学生活をお過ごしなのか。様子を伺いしれません。ハイツ様のご両親に近況をお伺いしたこともありますが、特にこれといったことは言われません」
カリンの心にあるハインツは三年前のままだった。それとて親愛の情をいだくものではなかったが。すると国王は頭をかきだした。
「そうかあ、じゃあハインツから何か特別な手紙とかは受け取っていないのだな」
「はい、ございません」
カリンは何故このような事を聞かれるのか分からなかった。でも、相手は国王。迂闊な詮索は危険だと思えた。だから躊躇していた。
「いや、実はなハインツの動向がいまいちわからないんじゃよ。いろいろとジーゼル帝国にいる我が国の駐留武官にも調べさせたのだが・・・とりあえず今日のパーティーはそちにも絶対に出席してもらい。詳しい話はパーティーの後にする。ご苦労であった」
結局、国王からカリンに説明らしいものはなかった。ただ、想像できたのはハインツが何かを企んでいるような予感だけだった。
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