3 / 27
2
しおりを挟む
伯爵令嬢待遇とはいえ普段のカリンには侍女はいなかった。騎士団長の娘といっても騎士団では一人の騎士でしかなかった。だから特別待遇もないし教官のケネスも数多くいる女性騎士と平等な対処をしていた。
しかし王室の式典では「ツーゼ伯爵令嬢カリン」として招かれている。だから他の貴族と同じように侍女がいなければならなかった。そこで同じ年頃の女性騎士ローザ・シューメーカーが侍女として同行することになった。
「ねえカリン、そうかしら私って侍女らしく見える?」
ローザは戸惑っていた。カリンよりも地味とはいえ侍女の衣装はそれなりに高級な生地で作られているので、普段とは大違いだ。ローザもまた騎士として汗や泥まみれになりながら日々を過ごしているのに、今日は髪も整ってもらい綺麗に化粧していた。貴族令嬢に仕えるにふさわしい侍女として。
「似合っているわよローザ。でもね、王城にいったらお嬢様といってね。私も嫌だけど侍女に呼び捨てにされる貴族の娘っていないからね」
カリンは馬車の中でそういっていた。二人は普段は同じ騎士でも今日は仕方ない事だった。
「はい、わかりましたお嬢様。それにしてもいいかしら聞いてみて」
「なにを?」
「今日、カリンの、いやお嬢様の婚約者が帰国するんでしょ三年ぶりに。本当に結婚することになるの?」
ローザの言葉にカリンは困った表情を浮かべていた。
「そうねえ、国王陛下の勅願だからね。まああんまり覚えていないけどね顔もなにもかもね」
「本当に覚えていないの? お嬢様ってあんなに対戦相手の研究をするというのに!」
「そうよ! あんまに気にしていなかったけど婚約者なのよね、相手は。でもシファードルフ伯爵家から殆ど音沙汰ないしね」
カリンは考えてみれば仕方ない事だった。婚約が決まってから三年後、15歳の時に貴族の子女が通う学校ではなく騎士を養成する学校に行くのを強く主張したため不興を買ったのだ。それは相手も同じでこの世界でも超大国のジーゼル帝国の学校に留学すると主張したので、それから二人が顔を真面に会わせたことはことはなかった。
カリンは事あるごとにシファードルフ伯爵家に婚約者として挨拶しにいくけど、相手はいつも不在。どうも留学先から一度も帰省したことはないようだ。それでは婚礼に向けての儀式は進行しないのは当然だ。
「そうなんだあ、じゃあまだ一緒に戦えるわね。来年は六年に一度の大きな世界競技選手権があるしね。それよりもお嬢様の本命は教官なのよね?」
それを言われたカリンの顔には「図星」という文字が浮かんでいる様であった。
しかし王室の式典では「ツーゼ伯爵令嬢カリン」として招かれている。だから他の貴族と同じように侍女がいなければならなかった。そこで同じ年頃の女性騎士ローザ・シューメーカーが侍女として同行することになった。
「ねえカリン、そうかしら私って侍女らしく見える?」
ローザは戸惑っていた。カリンよりも地味とはいえ侍女の衣装はそれなりに高級な生地で作られているので、普段とは大違いだ。ローザもまた騎士として汗や泥まみれになりながら日々を過ごしているのに、今日は髪も整ってもらい綺麗に化粧していた。貴族令嬢に仕えるにふさわしい侍女として。
「似合っているわよローザ。でもね、王城にいったらお嬢様といってね。私も嫌だけど侍女に呼び捨てにされる貴族の娘っていないからね」
カリンは馬車の中でそういっていた。二人は普段は同じ騎士でも今日は仕方ない事だった。
「はい、わかりましたお嬢様。それにしてもいいかしら聞いてみて」
「なにを?」
「今日、カリンの、いやお嬢様の婚約者が帰国するんでしょ三年ぶりに。本当に結婚することになるの?」
ローザの言葉にカリンは困った表情を浮かべていた。
「そうねえ、国王陛下の勅願だからね。まああんまり覚えていないけどね顔もなにもかもね」
「本当に覚えていないの? お嬢様ってあんなに対戦相手の研究をするというのに!」
「そうよ! あんまに気にしていなかったけど婚約者なのよね、相手は。でもシファードルフ伯爵家から殆ど音沙汰ないしね」
カリンは考えてみれば仕方ない事だった。婚約が決まってから三年後、15歳の時に貴族の子女が通う学校ではなく騎士を養成する学校に行くのを強く主張したため不興を買ったのだ。それは相手も同じでこの世界でも超大国のジーゼル帝国の学校に留学すると主張したので、それから二人が顔を真面に会わせたことはことはなかった。
カリンは事あるごとにシファードルフ伯爵家に婚約者として挨拶しにいくけど、相手はいつも不在。どうも留学先から一度も帰省したことはないようだ。それでは婚礼に向けての儀式は進行しないのは当然だ。
「そうなんだあ、じゃあまだ一緒に戦えるわね。来年は六年に一度の大きな世界競技選手権があるしね。それよりもお嬢様の本命は教官なのよね?」
それを言われたカリンの顔には「図星」という文字が浮かんでいる様であった。
11
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。
夢草 蝶
恋愛
公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。
そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。
あなたを忘れる魔法があれば
七瀬美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
いくら何でも、遅過ぎません?
碧水 遥
恋愛
「本当にキミと結婚してもいいのか、よく考えたいんだ」
ある日突然、婚約者はそう仰いました。
……え?あと3ヶ月で結婚式ですけど⁉︎もう諸々の手配も終わってるんですけど⁉︎
何故、今になってーっ!!
わたくしたち、6歳の頃から9年間、婚約してましたよね⁉︎
私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです
もぐすけ
恋愛
カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。
ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。
十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。
しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。
だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。
カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。
一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる