2 / 8
序章:仕事をさがしています!
002.夢の住民になれるなら
しおりを挟む
今日失業したばっかりであるが、次の給料日まであと三週間も先だったし、その給料ももらえるのか怪しかった。それに貯金も殆ど無かった。
いくら生活を切り詰めていても、元々もらえていた給料もキャリアも資格もないので安く、どんなに住む所を築五十年の昭和の雰囲気たっぷりのボロアパートにしていても、アパート代で消費する惨状だった。
そんな状態なので、派遣契約を早く入れてもらうか、失業保険を支給してもらえなければ、ホームレスになってしまいかねない現実を前にして沙羅は暗くなるしかなかった。
「あーあ。こんな事になるんだったら東京に出るんじゃなくって、松山ぐらいで我慢しとけばよかったわ。わたし、何をしたくて東京にでたんだろうか?」
そう考えてみると沙羅は思い出した。どこか華やかなところで働きたかったと。それは何も無い田舎よりも東京にならあるはずなんだと。そう思って東京の小さな会社に就職してみたんだと。
でも会社の人間関係についていけずに退職してしまったあとはローリングストーンさながらの転落というか流転の人生だった。そんな人生でも彼氏がいれば変わっていただろうけど、東京に来てから付き合ったことは無かった。
暗く沈んだ沙羅が、あのネヴァー・ドリームランドの広告を見るとふと心に突き刺さるものがあった。小さく描かれた可愛い着ぐるみたちだ。それはアニメ作品に出てくるような少女や擬人化された動物のものだった。
「そういえば、派遣会社に仕事を紹介してもらえなかった時に、ツナギで着ぐるみを着てイベントの手伝いをしたことがあったわよね、あの時は暑苦しくって仕方なかったけど、別の存在になったような爽快感があって楽しかったなあ。また、そんな仕事をしてみたいなあ」
そう思ったのも沙羅は着ぐるみでは重宝されていたからだ。沙羅は身長が低く145センチぐらいで、着ぐるみに入っても子供の目線に近かったからだ。
身長が低くって得をした仕事は着ぐるみのバイトぐらいだった。まあ他の仕事では支障ばかりだったけど、高いところにあるものは手が届かないし中学生に間違われるのもしばしばだったし・・・
「一層の事、この広告の遊園地の着ぐるみにでもなって夢の住民になりたいねえ。そうしたら今の惨めな状況が打破できるかもね。でも、有名な遊園地にこんなに背が低いのが入れないだろうね」
そう思ったのも、身長が高くなければ着ぐるみは勤まらないと考えていたのだ。それに、どうやって募集しているのかが想像も出来なかった。就職情報誌に募集が載っているのを見たこと無かったし、それに問い合わせをわざわざするまでのこともないし・・・
そんなこんなを考えていたら、余計落ち込んでしまうと思った沙羅は着ぐるみの少女の写真に何故か引かれるものを感じながら、そそくさと駅をあとにした。
いくら生活を切り詰めていても、元々もらえていた給料もキャリアも資格もないので安く、どんなに住む所を築五十年の昭和の雰囲気たっぷりのボロアパートにしていても、アパート代で消費する惨状だった。
そんな状態なので、派遣契約を早く入れてもらうか、失業保険を支給してもらえなければ、ホームレスになってしまいかねない現実を前にして沙羅は暗くなるしかなかった。
「あーあ。こんな事になるんだったら東京に出るんじゃなくって、松山ぐらいで我慢しとけばよかったわ。わたし、何をしたくて東京にでたんだろうか?」
そう考えてみると沙羅は思い出した。どこか華やかなところで働きたかったと。それは何も無い田舎よりも東京にならあるはずなんだと。そう思って東京の小さな会社に就職してみたんだと。
でも会社の人間関係についていけずに退職してしまったあとはローリングストーンさながらの転落というか流転の人生だった。そんな人生でも彼氏がいれば変わっていただろうけど、東京に来てから付き合ったことは無かった。
暗く沈んだ沙羅が、あのネヴァー・ドリームランドの広告を見るとふと心に突き刺さるものがあった。小さく描かれた可愛い着ぐるみたちだ。それはアニメ作品に出てくるような少女や擬人化された動物のものだった。
「そういえば、派遣会社に仕事を紹介してもらえなかった時に、ツナギで着ぐるみを着てイベントの手伝いをしたことがあったわよね、あの時は暑苦しくって仕方なかったけど、別の存在になったような爽快感があって楽しかったなあ。また、そんな仕事をしてみたいなあ」
そう思ったのも沙羅は着ぐるみでは重宝されていたからだ。沙羅は身長が低く145センチぐらいで、着ぐるみに入っても子供の目線に近かったからだ。
身長が低くって得をした仕事は着ぐるみのバイトぐらいだった。まあ他の仕事では支障ばかりだったけど、高いところにあるものは手が届かないし中学生に間違われるのもしばしばだったし・・・
「一層の事、この広告の遊園地の着ぐるみにでもなって夢の住民になりたいねえ。そうしたら今の惨めな状況が打破できるかもね。でも、有名な遊園地にこんなに背が低いのが入れないだろうね」
そう思ったのも、身長が高くなければ着ぐるみは勤まらないと考えていたのだ。それに、どうやって募集しているのかが想像も出来なかった。就職情報誌に募集が載っているのを見たこと無かったし、それに問い合わせをわざわざするまでのこともないし・・・
そんなこんなを考えていたら、余計落ち込んでしまうと思った沙羅は着ぐるみの少女の写真に何故か引かれるものを感じながら、そそくさと駅をあとにした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
転校先は着ぐるみ美少女学級? 楽しい全寮制高校生活ダイアリー
ジャン・幸田
キャラ文芸
いじめられ引きこもりになっていた高校生・安野徹治。誰かよくわからない教育カウンセラーの勧めで全寮制の高校に転校した。しかし、そこの生徒はみんなコスプレをしていた?
徹治は卒業まで一般生徒でいられるのか? それにしてもなんで普通のかっこうしないのだろう、みんな!
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
転校してきてクラスメイトになったのが着ぐるみ美少女だった件について
ジャン・幸田
恋愛
転校生は着ぐるみ美少女? 新しいクラスメイト・雛乃は着ぐるみ美少女のマスクを被り一切しゃべることがなかった!
そんな彼女に恋をした新荘剛の恋の行方は? そもそも彼女は男それとも人間なのか? 謎は深まるばかり!
*奇数章では剛の、偶数章では雛乃の心情を描写していきます。
*着ぐるみは苦手という方は閲覧を回避してください。予定では原稿用紙150枚程度の中編になります。
結婚したのに! 悪役令嬢ってこんな話なの? メイドにされた処女妻は健気にいくしかない!
ジャン・幸田
ファンタジー
貴族同士の結婚は政略結婚である! そう理解させられて結婚したのに、この扱いってなによ。
伯爵家に嫁いだ啓子は途方に暮れた。扱いが完全に悪役だったから!
いつも公式の場に自分のかわりに出席するのは人形? なんなのよこれ!
妻のはずだったのにメイドとして働かされる憂鬱だけど変な生活が始まった!
次は人形になれってなんて? どうなるのよ一体全体!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる