上 下
188 / 198
奪われる頭脳よみがえる悪夢

167・夢から覚めてもそこは仮想空間

しおりを挟む
 真由美に恐ろしい事を告白された瞬間、愛莉の意識は別の空間にあった。さっきの夢は何なの? そう考えていた愛莉であったが、さっきよりも鮮やかな色彩の空間の中にいた。明るい太陽、青い空に海、熱帯性の樹木に花。それは南国のリゾートのようだった。愛莉は行った事はなかったが。

 「ここは・・・仮想空間? でも、なんでガイノイドのままなの?」

 愛莉は周囲を見渡したが、どうも電脳同士がコミュニケーションをとる仮想空間に間違いなかった。でも、誰の趣味なのよ、これって? そう思っていると淳司の姿が出現した。

 「すまない! クライアントの都合がつかなかったので、意識をシャットアウトさせてもらった。どう、気分は?」淳司は悪びれもせず、チャラいリゾートパッションを纏っていた。

 「よくありません! なんだか悪夢を見てました・・・でも、内容が思い出せないわ」愛莉は電脳も同じことが起きるんだと思った。電脳にされても人間の時と変わらないと。夢を覚えていないのは。


 「良い夢だったらよかったのにね」

 「そうです! それよりもクライアントはこの空間に来るのですか?」

 「来るよ。色々と忙しくてね。本当は明日の火曜日に直接会えるけど、込み入った話が出来ないからお願いした。向こうも望んでいただいたし」

 「そうなんだあ・・・でも、なんでガイノイドのままなのよ!」

 愛莉は不満だった。仮想空間はアバターモードに出来るので別の恰好をすることが出来るはずなのにと。もっとも、いつも何故か高校時代の制服姿なので、それも嫌だった。

 「ごめん、ごめん。どんなのが良いの?」

 「なんでもいいわよ、愛莉の姿なら。でも、制服姿はなしよ! なんで、制服姿なのよ、私は大学生なのに!」

 「不満だったんだ、制服姿って・・・制服姿は最近の愛莉ちゃんの情報がアクセス出来なくて再現できなかったんだ。じゃあ、この雰囲気に合わせて・・・水着じゃだめ?」

 「駄目よ! 絶対! 海水浴にも行った事ないのよ! クライアントって男でしょ! いやらしい!」

 「ごめんよ、じゃあこれでどう?」

 そういうと、愛莉はガイノイドからサマードレスを纏った姿になったけど、なぜか・・・

 「水着よりもましだけど、まるで中学生じゃないのよ! いくら若い方が良いといっても、おかしいじゃないのよ。もうすぐ20歳なのよ! センスないわね!」

 「そんなにプンプンするなよ。ちょっとまて・・・クライアントがログインするそうだ。この空間に来るそうだ」

 淳司がそう言うと、向こうの方からスーツを着た初老の男が歩いてきた。その顔には酷い傷があって眼光が鋭かったが、見たことがあった。

 「紹介するよ。こちらの方が俺のクライアントにして、闇の司法部長官である・・・」

 愛莉は驚くしかなかった。紹介されたのはニュースで見たことがあったから・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘フェチ作品撮影!

ジャン・幸田
SF
 わたし、とあるプロダクションに所属するモデルだったの。一応十八禁作品出演OKとしていたけど、恥ずかしかったの。  そいで顔出ししないでもいいという撮影があったので行ってみると、そこでわたしはロボットのようになれということだったの。わたしはガイノイドスーツフェチ作品に出演することになった。

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。

ロボットウーマン改造刑を受けた少女

ジャン・幸田
SF
 AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。  そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。  機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

処理中です...