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三姉妹との邂逅

160・三重スパイ

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 丹下犯罪学研究所から急いで逃げ出した男がいた。淳司を殴って愛莉と一緒に仮想空間にぶち込んだクラウゼだ。淳司はクラウゼの正体をしっていたが、わざとか気を許したか定かでないが失態を演じてしまったことになる。情報の一部が偽装したガイノイド・アイリを通じて”連中”に流れたからだ。アイリとエリーの同調回路を再接続したからだ。結果として敵対する陣営に情報を漏洩したわけだ。丹下教授が隠していたものを。


 「クラウゼくん、なんてことをしてくれたのか?」

 機密通信メールが安養寺から送信されてきた。それをクラウゼは無視した。今回の行動は淳司でも”連中”でもない第三の勢力の意思によるものだった。その第三の勢力とはいったい? クラウゼは少し変装して、日本を出国するため極東連合共和国名義の電子パスポートを操作した。それによりクラウゼは別人に成り代わった。

 「淳司、すまないが悪く思わんでくれ! 俺は俺のやり方がある! お前の不利益にならないはずだから勘弁してくれ」


 そこからクラウゼはタクシーを手配して空港へ向かった。後で足取りが発覚するのを遅らせるため、自動運転装置のメモリーを改竄して降りた。そこで事態が順調に進んでいるのを確認するため、空港内のラウンジに半日ほど潜伏していた。

 丹下犯罪学研究所で愛莉と淳司が仮想空間から目覚めた時、クラウゼは空港の待合室にいた。状況を確認してから愛莉が三姉妹から受け取った膨大な情報を転送しはじめた。淳司のクライアントに妨害されないように、あらかじめ自動バックアップを取っていた南半球のサーバーから第三の勢力のホストコンピューターに送られているのを確認した。そのあとクラウゼは機上の人となった。

 暗闇の中を行く飛行機の中でクラウゼは思った。きっと淳司はエリーこと愛莉を連れて第三の勢力の影響下にある町に行くだろう。そこが、人類の未来を左右するかもしれない危機が起こるだろうと。それを乗り越えた時、なにかが変わるかもしれないし解決するだろうと。そこで、自分は待っているが、三つの勢力のうち誰が生き残るだろうか?




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 「三姉妹との邂逅」編を脱出するのに、気が付けば二年もかかってしまいました。構想ではここまでで折り返しか少し手前になります。二年もかかっているうちに現実世界の方が色々とやばくなっていますが、本当は起こりえない者であってほしかったです。

 この物語の背景設定では2020年に東京オリンピックが開催された直後に危機的な事が起きるとしていたので、書きずらくなったためです。それで二年も迷い迷いしてしまいました。本当はすっと行けたらよかったのですが。

 後半ではエリーこと愛莉と淳司が活躍するストーリーにするつもりです。それと、160話を上げたあと、山崎技師目線のショートストーリーを10話ほど予定しています。よろしくお願いします。

 2022年5月5日 ジャン・幸田 記
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