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三姉妹との邂逅
152 不穏な空気の中で(3)
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麗華が作り出した悪魔のエキゾチックブレインは、粛清された人間の脳漿を電脳化して集積化したものだ。麗華の支配層がそんなオーバーテクノロジーを手にした理由には諸説あるが、半ば都市伝説のような説があった。超絶技術を生み出した麗華の三姉妹の父親が超古代文明の遺跡で手に入れた何らかの方法を使ったのではないかというものだ。
三姉妹の父親は二十一世紀初頭、当時存在した中央アジア某国に麗華から水力発電所の技術者として派遣されていた。そのときに手に入れた技術で自分の娘たちを異能の頭脳を持つように”改良”したというのだ。
その具体的な方法については分かっていないが、もしかすると建設現場で超古代文明の遺跡で手に入れたという。その遺跡は相当古い時代に終末を迎え滅亡した異星のものであり、そこに残っていた知識を手に入れたといわれている。ただ、残念な事に遺跡が、2020年代に大陸で暴れまわった露国のイワン・クチンスキー政権による核攻撃で破壊されたため実証できないという。
モニターでは乱闘騒ぎが映し出されていた。日本の麗華に対する自衛隊の先制攻撃隊が消滅したことに対する今後の事を討論していた、そこに出演していた”識者”ぶった連中によるものだった。やれ核武装すればよかっただの、していても意味ないなど、今はそこが問題じゃない事でだ。そもそも、すぐに実効性のないような事ばかり論争して時間を無駄にしたというのが、悲劇の13日間後の評価であった。それには丹下教授も呆れていた。
「露国も中華もほぼすべての核兵器を超中性子弾で破壊されていたの忘れたのか、こいつら! それに米国と核兵器を共有使用する提案をして放置されていたことも。大体連中が超中性子弾を世界に拡散していたから、この国に核兵器なんかあったら危険だったたろ! それよりも、すぐ到来する危機から目を背けている!」
拡散された超中性子弾は核兵器の一種である。破壊力は大したものではないが、その分強烈な放射線を周囲に照射してしまう。そのため周囲の生物を一瞬で死滅させる兵器であった。しかも、核分裂型核兵器に使われている各物質も一瞬で臨界状態にし、誘爆を招いてしまう。そのため、核兵器による抑止力が意味がなくなってしまっていた。それもこれも、超中性子弾が世界中に拡散していたが、全て麗華によってだ。それらが世界各地で使用され夥しい核被害が起きていた。
「いいんではないですか? もう見放されているんでしょ! どっちにしても議論すれば何かできるようにならないから。既に危機は次のフェーズに移行しているし」
グエンはそう言いながら持ってきた電脳に接続端子を取り付けていた。その電脳には陽子回路増設パックがあり、おそらく数千万テラバイト以上の情報が記憶されているようだった。
「もう少しで再会できますよ、三姉妹に。まあ、オリジナルではないですが、何をしようとしているぐらいは分かりますから」
「急いでくれ! 止める方法があるはずだ。たしか、エキゾチックブレインの自爆コードもしくはそれに近いプログラムがあるはずだ」
丹下教授は落ち着きが無くなっていた。その間も容赦なく世界は闇に落ちていた。そうしている間に正午になろうとしていた。
三姉妹の父親は二十一世紀初頭、当時存在した中央アジア某国に麗華から水力発電所の技術者として派遣されていた。そのときに手に入れた技術で自分の娘たちを異能の頭脳を持つように”改良”したというのだ。
その具体的な方法については分かっていないが、もしかすると建設現場で超古代文明の遺跡で手に入れたという。その遺跡は相当古い時代に終末を迎え滅亡した異星のものであり、そこに残っていた知識を手に入れたといわれている。ただ、残念な事に遺跡が、2020年代に大陸で暴れまわった露国のイワン・クチンスキー政権による核攻撃で破壊されたため実証できないという。
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「急いでくれ! 止める方法があるはずだ。たしか、エキゾチックブレインの自爆コードもしくはそれに近いプログラムがあるはずだ」
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