上 下
166 / 198
三姉妹との邂逅

149・研究所の朝(4)

しおりを挟む
 「悲劇の13日間」の前年に起きた米中露三か国による戦争は僅か半日で終結したが、それは軍事的バランスを破壊するものであった。2020年代に入り政治体制の違いに関係なく進行していた自国第一主義が決定的な対決に移行した。当初はサイバー空間でのバーチャルなサイバーテロの応酬であったが、遂に戦端が開かれてしまった。

 だが不可解な事に三か国がほぼ同時にそれぞれの敵対国に超中性子弾搭載の超音速巡航ミサイルを発射したとされる。結果、核保有抑止力が瓦解してしまった。なぜなら、超中性子弾の爆発によって発生した猛烈な中性子により保有する核兵器の大部分が核分裂反応を起こし使用不能になった。具体的に言えば誘爆したわけである、核保有庫周辺の住民を巻き込んだうえで。その被害は明確になっていないが健康被害も含めると数千万人単位とされていた。

 その超中性子弾を開発製造したのが麗華であるのが判明したのが「危機の13週間」の原因であった。また、同時に世界各国で蔓延しはじめた人体が有機機械に置き換えてしまうナノマシーンの原因も麗華であった。そのため、麗華は全世界から人類の敵とみなされていた。

 「知っていると思うけど、このあと麗華の支配階層はほぼ全員行方不明になって、エキゾチックブレインが暴走するわけだ。人類は滅亡の淵に追いやられたわけだ」

 淳司の説明は愛莉も知っていた。それは現代を生きる人々すべてが知っている事であるから。この後起きる事は社会科学系科目が弱点の愛莉も認識していた。自分の両親が犠牲になったから。ラジオは刻々と変化する情勢を伝えていたが、深刻さを増していた。

 「ただいま速報として入ってきました。自衛隊のネットワークがハッキングされ・・・迎撃ミサイルが複数発射されたとのことです。くりかえしますが、迎撃ミサイルが発射され・・・どうやら」

 その瞬間、愛莉の両親が乗っていた旅客機が撃墜され命を失った。その時、日本領空を飛行していた十数機の旅客機が撃墜され数千人の命が奪われた。麗華いやエキゾチックブレインにより。思わず愛莉は顔を膝にうずめてしまった。そして声を出さないように泣き出した。そのあとも、混乱したアナウンサーが次から次へと錯綜する情報をながしたが、この時世界は知る由もなかった。エキゾチックブレインが人類殲滅モードに移行していることに。

 「愛莉ちゃん、泣かないで! これから知らないといけないことが起きるんだから」

 淳司はなぐさめたが、ラジオの声はさらに怒気をあげていた。麗華に向けて出撃した自衛隊部隊が純粋水爆弾によって蒸発したと。エキゾチックブレインが人類に宣戦布告したのを知るまで、あと少しであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘フェチ作品撮影!

ジャン・幸田
SF
 わたし、とあるプロダクションに所属するモデルだったの。一応十八禁作品出演OKとしていたけど、恥ずかしかったの。  そいで顔出ししないでもいいという撮影があったので行ってみると、そこでわたしはロボットのようになれということだったの。わたしはガイノイドスーツフェチ作品に出演することになった。

ロボットウーマン改造刑を受けた少女

ジャン・幸田
SF
 AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。  そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。  機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

彼氏に身体を捧げると言ったけど騙されて人形にされた!

ジャン・幸田
SF
 あたし姶良夏海。コスプレが趣味の役者志望のフリーターで、あるとき付き合っていた彼氏の八郎丸匡に頼まれたのよ。十日間連続してコスプレしてくれって。    それで応じたのは良いけど、彼ったらこともあろうにあたしを改造したのよ生きたラブドールに! そりゃムツミゴトの最中にあなたに身体を捧げるなんていったこともあるけど、実行する意味が違うってば! こんな状態で本当に元に戻るのか教えてよ! 匡! *いわゆる人形化(人体改造)作品です。空想の科学技術による作品ですが、そのような作品は倫理的に問題のある描写と思われる方は閲覧をパスしてください。

処理中です...