冤罪！ 全身拘束刑に処せられた女

三姉妹との邂逅

142・惨劇（１）

　人類にとって滅亡の淵にあった二つの未曽有の危機の前で最後に比較的平和だったのは2019年であるが、そのクリスマスイブに起きた惨劇は人類の命運を決めた事件であった。しかし、一般にはそのことは認識されることはなかったし、今後も隠されていくことかもしれない。二つの危機の前後に世界で猛威を振るった人類を機械に変えてしまうナノマシーンウイルスが最初に使われた事実を。

　愛莉が見た顔は大学の先輩の・・・誰かとうり二つだった！　一方淳司は一言こういった。「やはりな！」と。それは何を意味するか愛莉が考える間もなく惨劇が始まった。「令和の虐殺魔」の襲撃が。

　コンサート会場の正面コンコースに大型トラックが突入してきた。この日、会場を警備していたのは一般の警備会社のガードマンであったが、それに対処する能力などなかった。大音響とともに正面のガラス張りのホールの壁面が崩壊し、トラックの中から異様な姿の虐殺魔が出てきた。

　「あの、虐殺魔の顔は？」

　愛莉は違和感を感じた。その顔は・・・ナノマシーンに冒され銀色の光沢があった。

　「ああ、あいつは改造されていたのさ麗華の三姉妹によって」

　「麗華の三姉妹？」

　愛莉でもその言葉の意味は分かった。人類を粛清する血塗られた闇に落ちた存在だと。