上 下
143 / 198
三姉妹との邂逅

126・心は自由でも身体は(3)

しおりを挟む
 ナノマシーン? 愛莉にとってそれは忌まわしいものであった。全身拘束刑を執行され、自分から生身の肉体を奪ったものだ。ナノマシーンは有機物質の組成を改変するもので、現在では安価な人造肉製造から脳細胞の電脳化まで使用されている。最初に発明したのは麗華の天才三姉妹だとされている。

 「どういうことなんですか?」

 愛莉はクラウゼを見やった。彼は大柄な男で彼自身が強化改造された兵士のように見えた。

 「簡単に言えば、人体改造用のナノマシーンの逆の行為をするものさ。もっとも、それも限界があるそうだが・・・そういえば、君が暴露したとされる秘密漏洩事件で明らかになっていないな。あれも、内閣の支持率が下がって防衛長官の辞任に発展したんだが、マスコミがセンセーションな所しか報道しなかったし、ネットも・・・」

 クラウゼが語る事件の顛末は愛莉にとって知らないところで起きたことだ。でも、首謀者として処罰された結果が今の姿だ。愛莉の肉体を改造して誕生したガイノイド・エリーと詐称しているガイノイド・アイリだ。

 「まあ、君が暗号を解読して取り出した防衛省のブラックボックスのデータには合同人体実験の研究データがあったわけだが、一般に流出したのはウイルス性ナノマシーンに感染した者に対する非人道的といわれても仕方がない措置だな。いくら、残虐な行為になれたこの国の市民であっても見るに堪えないだろうな。でもな、本当に重要だったのは、その逆改造ナノマシーンの情報なんだ」

 そういうと、クラウゼは手帳から取り出した一枚の紙を見せた。いまどき、電子手帳を使わないのは高齢者か機械嫌いぐらいなのに、彼のような技術者が使っているのは意外といえた。

 「これって?」

 金属と特殊樹脂に覆われた手で愛梨は受け取った。その紙にはドイツ語で説明文が書かれており、写真には大きなクレータが写されていた。

 「それはな、麗華の秘密研究所の現状さ。連中によって純粋水爆テロによって完全に破壊されたのさ、今年の一月に! 君が暗号解読したから連中に所在がバレたのさ。このとき、失われたのさ、人体再改造ナノマシーンの情報が!」

 クラウゼの言葉に愛莉はいったい自分がなにをしたのかわからなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘フェチ作品撮影!

ジャン・幸田
SF
 わたし、とあるプロダクションに所属するモデルだったの。一応十八禁作品出演OKとしていたけど、恥ずかしかったの。  そいで顔出ししないでもいいという撮影があったので行ってみると、そこでわたしはロボットのようになれということだったの。わたしはガイノイドスーツフェチ作品に出演することになった。

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。

ロボットウーマン改造刑を受けた少女

ジャン・幸田
SF
 AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。  そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。  機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

処理中です...