冤罪！ 全身拘束刑に処せられた女

三姉妹との邂逅

122・再起動（２）

　愛莉は前に起動した時と意識が違う事に気が付いた。インプットされているデータによれば、最高罰則相当の全身拘束刑受刑者の電脳は完全に「機械奴隷」といえる状態になるため、自我はあっても完全に個性などなく、従順になるように書き換えられており、システムをシャットアウトして再起動すれば初期設定に戻るので自分の事なんか考えないはずだった。でも愛莉はこの自我は自分だと認識していた。

　「エリー、いや山川愛莉さん。いまは俺以外に誰もいないから自由に会話しても大丈夫だからな。思いついたことを話しても大丈夫さ」

　愛莉はとっさにシステムチャックをすると、普段は電脳内で思った事をしゃべれないようにする、人工音声の検閲システムが無効になっていた。

　「はい、ありがとうございます。ところで長崎講師の姿がみえませんが、どうされました」

　ガイノイド・アイリとリンクするためシャットアウト直前までいたはずの淳司の姿がない事が気になっていた。

　「彼か？　誰かに用事があるって出て行ったのさ。おかげで俺は一人でやっていたのさ、二体のガイノイドの電脳を完全に同じにしたわけさ。いまごろ、向こうも自分がオリジナルと思っているだろうさ」

　その言葉に愛莉は嫌なものを感じた。さっきまで感じていた続きを向こうが見ているんだと。すると分身なの？

　「そうですか。ところでこれから私は何をすればいいのですか？」

　「そうだなあ、メンテナンスは終了だから通常モードに戻りなさい。そうそう気を付けてほしいが、君の意識は解放しているが、くれぐれも周囲にバレないようにな。特に安養寺真由美さんには気付かれないように」

　そういいながら、クラウゼはエリーのボディに接続していたコード類を外し始めた。