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(閑話)パンドラの鍵
すり替えられた電脳
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公式には発表されていないが、杠も初歩的な電脳に部分的に改造されていた。それは、とある機関の工作員だったときに受けた措置である。そのため、電脳化された人間の挙動はある程度分かっていた。ちなみに愛莉のような全身拘束刑を受けた場合、脳も身体も機械化されるので、部品として取り外す事が可能である。
「なんだ死んでいなかったんかい! そんなの知られたら誰もが分解処分にするだろう!」
マオはおもわずシオリのボディに唾をかけようとしていた。それはリャンに投げつけようとした悪意の表明だった。その場にいた麗華側のマオのスタッフも同じような眼差しをかけていた。リャンを悪女と認識するのは世界共通といえた。多くの人類の命を奪い、そして困難を与えた罪人というものだ。
「とりあえず、今後の措置は後で決める事にしよう。それよりもリャン女史、どうしてこんなことになったのですか? あなたが全てを指揮していたのではありませんか? 覚えているでしょ、あなたが共和国宮殿に東西麗華の首脳陣を集めて合同閣議を招集したのですから」
杠は「悲劇の13日」最初の日の事を尋ねていた。それは203X年6月22日のことだった。その直前、世界各国で勃発していたAI搭載の自動兵器の暴走事故の原因は蔡国国防部サイバーフォースが拡散したウイルスソフトによるものと指摘され、非人道的なエキゾチック・ブレインを生み出した麗華とともに、国際社会から糾弾されていた。のちに、それらは「連中」によるものと判明するのだが、その時は両国が主犯だとされていた。
両国首脳が集まった麗華共和国宮殿大会議場の模様は全世界に配信されていたが、それは虐殺の生中継となった。会議が中盤に差し掛かった時だった。蔡国の国民議会議長が収拾案を提起していたところ、突如議場が霧状のモノで覆われた。そして、議場にいた者たちは絶命しはじめたが、彼らの身体が変化しはじめた。ナノマシーンによる人体の樹脂化などによる機械化作用により、異形のモノへと変化していった。そして、議場の中心にいたリャンはこう言ったのだ。
「これより、人類の人工進化を始める!」
そののち、麗華の旧首都が謎の崩壊を遂げるまで、世界中で阿鼻叫喚の地獄が出現し、その後数年間は世界各国は自己防衛の為に事実上の鎖国を実行するほかなかった。しかも通信網も寸断され、インターネットは使えなくなり、まるで二十世紀中葉のような状況へと陥っていた。
「合同閣議? そんなの招集していないわ。私はただエキゾチック・ブレインの製造を認可したけど、そんなに非人道的な製造方法をしているなんて知らなかったわ。それを主張していたというのに、どこの国も信用してもらえなかったわ。まあ、一族が人民を欺き、人類を敵に回してきたから当然かもしれないけど。私が頭を殴られたのは、日本の安藤首相としテレビ会談しようとしたときだわ」
「安藤首相と会談? そんなことないだろう! お前はキャンセルしただろ!」
マオが興奮しながら言った。それは「悲劇の13日」直前の6月19日の事だった。会談はキャンセルされ、最後通牒とも受け取れる談話が発表され、当時日本政府に多大な影響力を発揮していた極右政治勢力からの圧力に安藤首相は屈し、有志連合による麗華に対する先制武力行使を決めてしまったのだ。6月22日早朝に実行されたが公海上で攻撃機が空対空純粋水爆によって葬られた。そして自衛隊の統括システムがハッキングされ、日本国内上空を飛行していた民間機20機が地対空ミサイルで撃墜するなど反撃された。その時、犠牲になった者のなかに愛莉の両親もいた。
「キャンセルといったて知らないわ。気が付いたのは今だから・・・」
そう云いかけた時に杠は技術者にこんな指示をした。
「リャンの個性再現を中断して、電脳内に他に何があるのかサーチしてくれないか? もしかするとエキゾチック・ブレインに接続されていたときの情報が分かるかもしれないから!」
それを聞いて技術者は作業を始めた。すると、接続された立体モニターに膨大なデータが映し出された。すると杠はヘッドギアを被った。それはリャンの電脳とシンクロする装置するシステムに直結していた。
「杠先生! おやめくださ! 引き込まれてしまいます!」
周囲の誰もが焦りの表情を浮かべていたが、杠は涼しい顔をしてこう言った。
「やはり三姉妹の電脳とひとつとすり替えられたようだな、リャンの脳味噌は! エキゾチック・ブレインの起動プログラムが上書きされている! そして・・・」
そういったところで、杠はその場に崩れ落ちた。
「なんだ死んでいなかったんかい! そんなの知られたら誰もが分解処分にするだろう!」
マオはおもわずシオリのボディに唾をかけようとしていた。それはリャンに投げつけようとした悪意の表明だった。その場にいた麗華側のマオのスタッフも同じような眼差しをかけていた。リャンを悪女と認識するのは世界共通といえた。多くの人類の命を奪い、そして困難を与えた罪人というものだ。
「とりあえず、今後の措置は後で決める事にしよう。それよりもリャン女史、どうしてこんなことになったのですか? あなたが全てを指揮していたのではありませんか? 覚えているでしょ、あなたが共和国宮殿に東西麗華の首脳陣を集めて合同閣議を招集したのですから」
杠は「悲劇の13日」最初の日の事を尋ねていた。それは203X年6月22日のことだった。その直前、世界各国で勃発していたAI搭載の自動兵器の暴走事故の原因は蔡国国防部サイバーフォースが拡散したウイルスソフトによるものと指摘され、非人道的なエキゾチック・ブレインを生み出した麗華とともに、国際社会から糾弾されていた。のちに、それらは「連中」によるものと判明するのだが、その時は両国が主犯だとされていた。
両国首脳が集まった麗華共和国宮殿大会議場の模様は全世界に配信されていたが、それは虐殺の生中継となった。会議が中盤に差し掛かった時だった。蔡国の国民議会議長が収拾案を提起していたところ、突如議場が霧状のモノで覆われた。そして、議場にいた者たちは絶命しはじめたが、彼らの身体が変化しはじめた。ナノマシーンによる人体の樹脂化などによる機械化作用により、異形のモノへと変化していった。そして、議場の中心にいたリャンはこう言ったのだ。
「これより、人類の人工進化を始める!」
そののち、麗華の旧首都が謎の崩壊を遂げるまで、世界中で阿鼻叫喚の地獄が出現し、その後数年間は世界各国は自己防衛の為に事実上の鎖国を実行するほかなかった。しかも通信網も寸断され、インターネットは使えなくなり、まるで二十世紀中葉のような状況へと陥っていた。
「合同閣議? そんなの招集していないわ。私はただエキゾチック・ブレインの製造を認可したけど、そんなに非人道的な製造方法をしているなんて知らなかったわ。それを主張していたというのに、どこの国も信用してもらえなかったわ。まあ、一族が人民を欺き、人類を敵に回してきたから当然かもしれないけど。私が頭を殴られたのは、日本の安藤首相としテレビ会談しようとしたときだわ」
「安藤首相と会談? そんなことないだろう! お前はキャンセルしただろ!」
マオが興奮しながら言った。それは「悲劇の13日」直前の6月19日の事だった。会談はキャンセルされ、最後通牒とも受け取れる談話が発表され、当時日本政府に多大な影響力を発揮していた極右政治勢力からの圧力に安藤首相は屈し、有志連合による麗華に対する先制武力行使を決めてしまったのだ。6月22日早朝に実行されたが公海上で攻撃機が空対空純粋水爆によって葬られた。そして自衛隊の統括システムがハッキングされ、日本国内上空を飛行していた民間機20機が地対空ミサイルで撃墜するなど反撃された。その時、犠牲になった者のなかに愛莉の両親もいた。
「キャンセルといったて知らないわ。気が付いたのは今だから・・・」
そう云いかけた時に杠は技術者にこんな指示をした。
「リャンの個性再現を中断して、電脳内に他に何があるのかサーチしてくれないか? もしかするとエキゾチック・ブレインに接続されていたときの情報が分かるかもしれないから!」
それを聞いて技術者は作業を始めた。すると、接続された立体モニターに膨大なデータが映し出された。すると杠はヘッドギアを被った。それはリャンの電脳とシンクロする装置するシステムに直結していた。
「杠先生! おやめくださ! 引き込まれてしまいます!」
周囲の誰もが焦りの表情を浮かべていたが、杠は涼しい顔をしてこう言った。
「やはり三姉妹の電脳とひとつとすり替えられたようだな、リャンの脳味噌は! エキゾチック・ブレインの起動プログラムが上書きされている! そして・・・」
そういったところで、杠はその場に崩れ落ちた。
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