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(閑話)パンドラの鍵
亡霊
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杠とマオの車列の前には警備ロボが多数いた。その警備ロボはあんまり統制が取れておらず、勝手な動きをする者もいた。なぜなら勝手に動いている状態の機体もいたからだ。その原因は旧麗華の生体実験であった。麗華の生体実験によって人間の機械化が行われたが、二つの大戦を生き残った者たちであった。警備ロボは自我を失ってしまった犠牲者のなれの果てであった。
「杠先生。何度も繰り返した話ですが、もう正直に情報を公開しても構いませんよ。あいつらのためにしていることですから。それに首相といっても支持率低迷のままじゃお困りじゃないですか?」
愛莉が意図せず暗号を解読して漏洩させてしまった国家機密は、実は初期に製造された旧麗華製の人体改造マシーンを人間に戻す生体実験についてのものであった。しかし、ネット及びマスコミに伝わったのは改竄されたものであった、意図的に。
「それは何度も君にいっているけど連中の意図を図るために訂正しないのさ。それに次期日本国首相候補のなかに問題の人物が何人もいるからな」
杠の頭の中にはエキゾチック・ブレイン復活を企んでいる連中に繋がる者の名前がいくつも浮かんでいた。その中には松林官房長官の名前はなかった。
「そうですか、でも残念ですよ。外にいる警備ロボを完全とまではいかなくても理性を持った存在にする研究を支援してくれたというのに。残念ですよ、本当ならすぐにでも全面公開すべきですよ、本当に」
マオは唇をかんだ。長年、一緒に工作員として協力してきたのに、おそらく杠最後のミッションになるのが分かっているのに何も協力できない事が悔しかった。
「いいさ、杠はラッキーで首相になったが、ただ椅子だけを護っただけで去っていった。という歴史的評価で終わるのが目的なんだから。エキゾチック・ブレインも連中の存在も世界にいま知られるのはまずいのさ。知られた時は、この世界の・・・」
そこまで言ったところで杠一行に目がけて警備ロボの一体は殴り込みをかけるように突進してきた。それに対し麗華行政院直属の警備隊が即座に破壊した。その残骸から人間の脊髄のような部品が杠が乗る車の前に飛び込んできた。その様子を見た二人の首脳は表情を少し厳しくした。
「あの研究が進めば、元通りは無理でも多少は人間らしいようになるはずなんだが、今のままでは機械ゾンビのままだ・・・そのことを情報公開してもらいたい」
杠はそういっているとシオリが話し始めた。
「首相、神谷国土安全長官からメッセージです。あまり麗華や蔡国に妥協しないようにとのことです」
杠はそれを聞くとマオにこういった。神谷は国民的人気が高く次期首相候補の最有力で、連合与党共同議長を兼任しており、事実上内閣の方針を決定していた。そもそも首相にならなかったのは、連立の構成比が選挙をすれば大きく変わる可能性があるので、あえて就任しなかった。
「釘を刺すという事か。でも奴は知っているだろうな真相を。なんだってあいつが連中の子飼いなんだからな」
杠は吐き捨てるようにいった。首相であっても傀儡にすぎなかった。それが世間一般の認識だから、でも杠は戦っていた。
「しかたないですな。あいつの尻尾は出ていても掴み切れないから。連中と繋がっていても違法行為でないですし、それに関係が明らかになれば大混乱です。二つの大戦が連中の策謀だったと分かると、今の世界すら瓦解しかねませんし」
タオはそういうと、一行の目の前に共和国宮殿の廃墟が見えてきた。その姿は人類の衰退ぶりを誇示するかのようであった。
「そういうことだ。連中の究極の目的は現人類の放逐と新人類の創成だからな。流れは変えられないにしてももう少し穏やかなものにしなければな」
杠とマオを乗せた車は地下空間に向う下り坂へと進入していった。そこには巨大な鋼鉄の扉があった。
「杠先生。何度も繰り返した話ですが、もう正直に情報を公開しても構いませんよ。あいつらのためにしていることですから。それに首相といっても支持率低迷のままじゃお困りじゃないですか?」
愛莉が意図せず暗号を解読して漏洩させてしまった国家機密は、実は初期に製造された旧麗華製の人体改造マシーンを人間に戻す生体実験についてのものであった。しかし、ネット及びマスコミに伝わったのは改竄されたものであった、意図的に。
「それは何度も君にいっているけど連中の意図を図るために訂正しないのさ。それに次期日本国首相候補のなかに問題の人物が何人もいるからな」
杠の頭の中にはエキゾチック・ブレイン復活を企んでいる連中に繋がる者の名前がいくつも浮かんでいた。その中には松林官房長官の名前はなかった。
「そうですか、でも残念ですよ。外にいる警備ロボを完全とまではいかなくても理性を持った存在にする研究を支援してくれたというのに。残念ですよ、本当ならすぐにでも全面公開すべきですよ、本当に」
マオは唇をかんだ。長年、一緒に工作員として協力してきたのに、おそらく杠最後のミッションになるのが分かっているのに何も協力できない事が悔しかった。
「いいさ、杠はラッキーで首相になったが、ただ椅子だけを護っただけで去っていった。という歴史的評価で終わるのが目的なんだから。エキゾチック・ブレインも連中の存在も世界にいま知られるのはまずいのさ。知られた時は、この世界の・・・」
そこまで言ったところで杠一行に目がけて警備ロボの一体は殴り込みをかけるように突進してきた。それに対し麗華行政院直属の警備隊が即座に破壊した。その残骸から人間の脊髄のような部品が杠が乗る車の前に飛び込んできた。その様子を見た二人の首脳は表情を少し厳しくした。
「あの研究が進めば、元通りは無理でも多少は人間らしいようになるはずなんだが、今のままでは機械ゾンビのままだ・・・そのことを情報公開してもらいたい」
杠はそういっているとシオリが話し始めた。
「首相、神谷国土安全長官からメッセージです。あまり麗華や蔡国に妥協しないようにとのことです」
杠はそれを聞くとマオにこういった。神谷は国民的人気が高く次期首相候補の最有力で、連合与党共同議長を兼任しており、事実上内閣の方針を決定していた。そもそも首相にならなかったのは、連立の構成比が選挙をすれば大きく変わる可能性があるので、あえて就任しなかった。
「釘を刺すという事か。でも奴は知っているだろうな真相を。なんだってあいつが連中の子飼いなんだからな」
杠は吐き捨てるようにいった。首相であっても傀儡にすぎなかった。それが世間一般の認識だから、でも杠は戦っていた。
「しかたないですな。あいつの尻尾は出ていても掴み切れないから。連中と繋がっていても違法行為でないですし、それに関係が明らかになれば大混乱です。二つの大戦が連中の策謀だったと分かると、今の世界すら瓦解しかねませんし」
タオはそういうと、一行の目の前に共和国宮殿の廃墟が見えてきた。その姿は人類の衰退ぶりを誇示するかのようであった。
「そういうことだ。連中の究極の目的は現人類の放逐と新人類の創成だからな。流れは変えられないにしてももう少し穏やかなものにしなければな」
杠とマオを乗せた車は地下空間に向う下り坂へと進入していった。そこには巨大な鋼鉄の扉があった。
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