冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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迷宮魔道な場所へ

107・メンテナンスブースのエリー(4)

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 人の形をしているガイノイドもメンテナンスブースでは完全にモノにしかみえなかった。その時、エリーことアイリの胴体や頭部には様々なチューブが接続されていた。それによりメンテナンスブースと一体化しているようであった。これは二体のガイノイドの意識をアイリの電脳にシンクロさせるためであり、現在理工学部で稼働しているアイリの動きがこちらでも把握できた。

 「そういえば、ここの主。丹下教授といったよな。今日はこっちには来ないのか?」

 エルンストはバイザーをかけたまま淳司に聞いていた。彼は二つのアイリの接続プログラムをチェックしていた。少しでもズレがあれば理工学部にいる「連中」にバレるためだ。でも、それは時間の問題かもしれなかった。

 「大丈夫、丹下教授は北海道に講演しに行っているから、月曜日の午後まで戻ってこない予定だ。それに教授の興味は研究よりもセカンドライフに向っているから、此処はどうでもいいようだし。まあどっちにしてもガイノイド・エリーだけじゃ定年日までにここの整理は終わりっこないがね」

 淳司はそういいながらメンテナンスブースのエリーいやアイリのボディの中を覗き込んでいた。ボディのハッチからは内部構造が見えていた。その構造は人間の生体組織を素材にした部品で構成されていた。愛莉の肉体はもう存在しなかった。

 「そうか、それにしても全身拘束刑でも最悪の改造を受けてロボットになったんだろ彼女は? 資料を見たけどそれなりに可愛い女の子だったんだろ? その愛莉って娘は。そんな娘を改造できるなんて、任務とはいえ柴田っておばさんは変態だよな」

 エルンストはそういったが、淳司はそれもそうだな同感だと思った。柴田技師長は現代の死刑執行人だと思った。自らの意志に関係なく少女をガイノイドに出来る神経は異常といえた。でも・・・

 「変態か、それは俺らも同じだろ? 今までもこうやって電脳化されたやつのボディを操っているんだからな。それよりも、連中に動きはあるか?」

 淳司の関心は「連中」がいつアイリのボディに手を出すかであった。それは、もしかすると山村愛莉の精神も喪失するかもしれない危険な事になる可能性があった。
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