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迷宮魔道な場所へ
91・怒る愛莉!(3)
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そう発言した愛莉は自分の身体が鉛のように重くなってくる感覚に気付いた。そうやら仮想現実内の愛莉の設定が改変されているようであった。すると淳司は立ち上がって自分のデスクに座った。今いる仮想現実は丹下犯罪学研究所によく似た空間であったが、そのデスクは実際のものとは違っていた。
「そうだよ愛莉ちゃん。君は今感じている身体の感覚も思考パターンも全ては干渉可能なものさ。でも、それは現実世界でも一緒だと思わないか? 周囲からもたらされる情報がもし間違っていたり恣意的に虚偽なものであったら、どんな結果を招くのか分かるだろう。
それと同じように、真実だと思っていても間違っていたなんてよくある話さ。たとえば理工学部で君がしでかしたとされる国家機密漏洩事件なんか。あれなんか君は犯罪行為しているなんて思っていなかっただろう? 君は正しい事をしているのだといわれていたんだろ、あの研究所で」
淳司が指摘するように、あの時は国防省をハッキングしているのは分かったけど、全ては研究のためだ国防省のセキュリティー強化に役立つものだと信じていた。だから逮捕された時は嵌められたと思った。それで得られたといえば全身拘束刑によって機械化された身体であった・・・
「そうねえ、そうよ。マスコミで大騒ぎになっているわねと思っていたら捕まってね。自分はしていないと言ったけど証拠らしいものをつきだされてね。でも、あの時って何故か覚えていないのよ」
愛莉は逮捕から最後に判決を言い渡されるまで記憶が曖昧な事に気付いた。それが意味するものは?
「やっぱりな! 君の全身拘束刑執行の記録を確認すると、君自身どうやらいろんな措置を受けているようだ。それらの詳細は分からないが、どうも君の脳幹細胞などを摘出しているようだ。おそらくエキゾチック・ブレインに使用される人造神経などは君のコピーかもしれない。いわば君はエキゾチック・ブレインの人身御供かもしれない」
淳司はそういって、床に座り込んでいる愛莉に一枚の写真を見せた。その写真に見覚えがあった。ハッキングして高度な暗号プロテクトを解除して最初にみた画像データにあったものだ。
「それは?」
「これはな、あの世界同時サイバーテロに使われたエキゾチック・ブレインが製造されている時のものさ。その写真の中央にいる女の顔に見覚えないか? 愛莉ちゃん?」
エキゾチック・ブレインは人体組織由来の脳細胞を多数連結したニューロンコンピューターで、その中心には統括する三つの電脳が納められるユニットがあったが、そこに記念撮影している三人の研究者が映っていたが、その三人は親子のようにもみえた。
「これって、もしかしてタオ先輩?」
愛莉はそう言ったが、タオ先輩にするにはおかしなことがあった。年齢が合わないのだ。エキゾチック・ブレインが破壊されたのは八年前で製造開始されたのはそれよりも前の2020年代前半、いまから二十年ぐらいまえだ。しかし、その顔は今のタオ先輩に髪型以外は同じだった。
「そうだ! 帝央大学理工学部の研究員タオ・イムジュだ! 我が国の住民登録記録では23歳とあるが、俺が依頼した画像分析によれはほぼ同一人物のようだ。その女はオ・レンユウといってな、麗華科学アカデミー所属の科学者で、純粋水爆および生体量子コンピューターの基礎理論を生み出したやつさ!」
愛莉はそのオ・レンユウという個人名を不快に思った。あの世界同時サイバーテロの首謀者とされていたから。
「そうだよ愛莉ちゃん。君は今感じている身体の感覚も思考パターンも全ては干渉可能なものさ。でも、それは現実世界でも一緒だと思わないか? 周囲からもたらされる情報がもし間違っていたり恣意的に虚偽なものであったら、どんな結果を招くのか分かるだろう。
それと同じように、真実だと思っていても間違っていたなんてよくある話さ。たとえば理工学部で君がしでかしたとされる国家機密漏洩事件なんか。あれなんか君は犯罪行為しているなんて思っていなかっただろう? 君は正しい事をしているのだといわれていたんだろ、あの研究所で」
淳司が指摘するように、あの時は国防省をハッキングしているのは分かったけど、全ては研究のためだ国防省のセキュリティー強化に役立つものだと信じていた。だから逮捕された時は嵌められたと思った。それで得られたといえば全身拘束刑によって機械化された身体であった・・・
「そうねえ、そうよ。マスコミで大騒ぎになっているわねと思っていたら捕まってね。自分はしていないと言ったけど証拠らしいものをつきだされてね。でも、あの時って何故か覚えていないのよ」
愛莉は逮捕から最後に判決を言い渡されるまで記憶が曖昧な事に気付いた。それが意味するものは?
「やっぱりな! 君の全身拘束刑執行の記録を確認すると、君自身どうやらいろんな措置を受けているようだ。それらの詳細は分からないが、どうも君の脳幹細胞などを摘出しているようだ。おそらくエキゾチック・ブレインに使用される人造神経などは君のコピーかもしれない。いわば君はエキゾチック・ブレインの人身御供かもしれない」
淳司はそういって、床に座り込んでいる愛莉に一枚の写真を見せた。その写真に見覚えがあった。ハッキングして高度な暗号プロテクトを解除して最初にみた画像データにあったものだ。
「それは?」
「これはな、あの世界同時サイバーテロに使われたエキゾチック・ブレインが製造されている時のものさ。その写真の中央にいる女の顔に見覚えないか? 愛莉ちゃん?」
エキゾチック・ブレインは人体組織由来の脳細胞を多数連結したニューロンコンピューターで、その中心には統括する三つの電脳が納められるユニットがあったが、そこに記念撮影している三人の研究者が映っていたが、その三人は親子のようにもみえた。
「これって、もしかしてタオ先輩?」
愛莉はそう言ったが、タオ先輩にするにはおかしなことがあった。年齢が合わないのだ。エキゾチック・ブレインが破壊されたのは八年前で製造開始されたのはそれよりも前の2020年代前半、いまから二十年ぐらいまえだ。しかし、その顔は今のタオ先輩に髪型以外は同じだった。
「そうだ! 帝央大学理工学部の研究員タオ・イムジュだ! 我が国の住民登録記録では23歳とあるが、俺が依頼した画像分析によれはほぼ同一人物のようだ。その女はオ・レンユウといってな、麗華科学アカデミー所属の科学者で、純粋水爆および生体量子コンピューターの基礎理論を生み出したやつさ!」
愛莉はそのオ・レンユウという個人名を不快に思った。あの世界同時サイバーテロの首謀者とされていたから。
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