冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
84 / 198
迷宮魔道な場所へ

75・二体のガイノイド

しおりを挟む
 一行は最初の見学ポイントへと向かった。途中のフロアに未公開エリアや立ち入り禁止エリアもあるらしく、一行の移動は複雑そものであり、洞窟の探検でもしているようなジグザグな動きをしていた。その一行の先導をしていたのはアイリだった。そして一番後ろはエリーだった。一行の前後にガイノイドがついていた。

 その状態に愛莉はエリーの中から複雑な想いになっていた。このとき、アイリはどんな指示を受けているのだろうか? もしかしてダミーだというのがバレないのかと。

 アイリは廃棄処分になった生体由来のバイオロボの部品や、試験的に作られた人体由来の電脳(淳司は詳しく言わなかったが、おそらく死体を加工したみたい)を組み合わせて、山村愛莉を全身拘束刑にして完成した元のアイリとほぼ同じものを制作したダミーだった。

 全身拘束刑受刑者で製造されたロボットは通常第三者は知らないはずであった。でも操など理工学部の面々いやエキゾチック・ブレインの関係者は知っているようだ。全て連中がしたことだから。いままでのところアイリがダミーということは気づいていないかもしれない。そう思いたいが不安もあった。実は知っていて放置しているのではないかと。

 それに、確実にバレるタイミングがあった。アイリの電脳を摘出した時、製造刻印を確認すれば模造品だと分かってしまうはずだ。そうなれば何が起きるのだろうか? 探すに違いなかった!

 「失礼ですが、今日なにか不審なものを持ち込んでおられませんよね?」

 エレベーターの中で急にアイリがエリーに話しかけてきた。セキュリティープログラムによるものらしく、「聞いてみた」というようだ。今のアイリの状態は本当のロボットそのもので、万が一自我が再現されたら、恐らくはバグによって早々に本物でないとバレるかもしれない機体だった。それにしても数日で作ったというのだから、バレない方が難しいかもしれなかった。

 「それは問題ございません。安養寺真由美さまの付き添うだけが目的です。それ以外の指示は受けておりません。当然ですわ」

 エリーはそう応答したが、自分の分身ともいえる二体のガイノイドの絡みというのは、愛莉は変な気分になった。このガイノイド二体の存在が消える時、山村愛莉が復活するのだろうか、それともエキゾチック・ブレインが復活するのだろうか? そんな疑問があった。もし、後者の場合は悪魔が復活するのだろうか、それとも神が降臨するのか? そのとき、自分という存在は消えてしまうだろう。それだけは避けないといけないので訳も分からず協力しているが、本当にそれが正しいのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

処理中です...