冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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迷宮魔道な場所へ

73・危険な質問

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 目の前にいる操という女を愛莉は嫌いなタイプだと思っていた。自分よりも下だと思ったら意地悪な事をする。目上で権力を持ち合わせていると判断すれば取り入ろうとする。そんな風に世間を渡っていく女。だからこそ今の地位を築けたのだといえた。実際、多額の予算がかかるプロジェクトを管轄する地位にあった。

 そんな「人間的な」感情とは別に問題だなと思ったのが、ダミーで潜入させている「アイリ」の存在だ。なぜか操の隣にいるのだ。いくら理工学部専属のガイノイドとはいえ、こんな形で鉢合わせになるのは避けたかった。「アイリ」も「エリー」も素体になった山村愛莉のボディラインを踏襲しているので似すぎなのだ。

 そのことに気付いた学生もいるようで、ある男子がちょっとした質問をした。

 「そこの二体のガイノイドですが、これって量産型ですか? でも役割が違うようですが?」

 あんまりここでそんな質問をしないでほしいと愛梨は思ったが止める事など出来なかった。その質問に操もどう答えるべきかを悩んでいるようであった。まさかアイリが全身拘束刑受刑者を改造したなんて説明は出来るはずなかった。

 「量産型? まあ、こうしたガイノイドは工作機械の一種ですからオプションなどオーダーメイドによって製造されるものですが、外観を構成する外骨格というか機体表面材は乗用車のボディのようなものですから、たまたま似たのだと思いますよ。どうも、今年度から導入された備品ですから、たぶん。それよりも別の質問してくれませんか? もしないようでしたら、ラボに向いましょう!」

 ここでの質問を切り上げると操は一行を引率し始めた。この時期、新入生同士のつながりはあまりないので無駄話など殆どなかった。しかし、先頭に操とアイリがいて、一番後ろに真由美とエリーがいるのはなんか違和感がある光景だった。

 最初の見学場所に到着した時、説明役の研究員がまだ来ていなかったので、一行はぐちゃぐちゃになってしまった。その時だった、真由美とエリーの元に操とアイリがやって来て真由美に話しかけてきた。

 「あなたねえ、安養寺さんところのお嬢さんは? お父様の会社の製品にはいろいろとお世話になっていますし、援助もいただいておりますわ。本当に感謝しております」

 そう挨拶され真由美は少し戸惑いの表情を浮かべたが、それよりも興味のあるものが目の前にいた。アイリだ! 前日、杠に愛莉は保護されていると聞いたが、なぜ愛莉と同じ名前のガイノイドがいるのか不思議に思っていたようだ。

 「それは、ご丁寧にありがとうございます。ところで、そこのガイノイドのお名前をなぜアイリとつけられたのですか? てっきり父の会社のガイノイドと言ったらアンリやエリスといった名称ばかりだと思ったものですが」

 愛莉はエリーの電脳の片隅で、それは少し危険な質問ではないかとやきもきしていた。
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